プロ8人に教えていただいた薬食同源食の夏バテ対策 ~私のとっておきレレシピ~ プロ8人に教えていただいた薬食同源食の夏バテ対策 ~私のとっておきレレシピ~

薬膳の世界には「薬食同源」、
つまり健康に良い食事の大切さを説く言葉があります。
体が喜ぶ食事にくわしい8人の方に、
おいしく食べて夏を元気に乗り切る、
とっておきのレシピを教えていただきました。


牛肉でエネルギーを補給する
写真:茹で牛肉のポテトサラダ添え
近影:玉村豊男

エッセイスト玉村豊男さんの

茹で牛肉のポテトサラダ添え

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玉村豊男さん

たまむら・とよお●2004年からヴィラデストワイナリーのオーナー。著書に『玉村豊男のフランス式一汁三菜』(天夢人:現イカロス出版、税込1,870円)ほか、多数。

元気を出すには肉です。若いころと違って、茹でて脂を落としてさっぱりさせることが多い。

おすすめは牛肉のスネ肉。弱火で1、2時間茹でればとてもやわらかくなりますし、すばらしい旨みのスープがとれます。いうまでもなく、肉はたんぱく質の宝庫。私は朝早くから畑に出、暑さがきつい昼下がりは昼寝をしてやり過ごす。少し日射しが弱まるとまた外に出て、暗くなるまで野良仕事。疲れ切った体にはたんぱく質が必要ですから、肉がメインになるのは自然の成り行きです。

付け合せのサラダは、牛肉と相性のいいジャガイモです。皮のまま茹でてドレッシングをかけます。

材料

牛肉(スネ肉またはランプ肉の塊、1人当り100〜120g)

ソース(オリーブオイル、しょうゆ、ハラペーニョなど)…適量

塩、黒コショウ…適量

作り方
1
牛肉の塊を深鍋に入れて流水で洗い、水が澄んだらそのまま鍋を火にかけて沸騰するまで強火で加熱する。沸騰したらアクを取り、弱火にして1〜2時間加熱する。冷めたら取り出して、1枚100g見当の大きさに切り分ける。茹でた汁の中に入れて保存しておく。
2
煮汁から取り出した冷めた茹で肉を厚さ1cmにカットして皿に置き、塩を振る。奥にたっぷりのポテトサラダを盛り、肉には醤油とオリーブオイルを混ぜたソースをかける。今回はハラペーニョとパプリカをみじん切りにしてソースに加えたが、好みでマスタードや柚子コショウなどを添えてもよい。最後に粗挽きの黒コショウを上から振りかける。
冬瓜で水分の代謝を整える
写真:スペアリブと冬瓜のカムジャタン風
近影:阪口珠未

薬膳料理家阪口珠未さんの

スペアリブと冬瓜のカムジャタン風

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阪口珠未さん

さかぐち・すみ●楽しくおいしい薬膳の普及活動を行う。著書に『からだのトラブル解決ごはん 薬膳ひとり鍋』(自由国民社、税込1,760円)ほか。

「夏の薬膳スープ」の主役は冬瓜です。体の熱をとり、暑さで奪われる水分を穏やかに補いながらも、カリウムを比較的多く含むため、余分な水分を排出します。豚肉はビタミンB1を多く含むので、暑さでバテ気味な体を元気にしてくれます。このスープには青じそも忘れずに。消化を助けてくれるだけでなく、減退した食欲を刺激する効果もあるので、私はいつもたっぷりいただいています。

材料(1人前)

豚スペアリブ…2本(200〜250g)

冬瓜(ワタを除き、薄く皮をむき、ひと口大に切る)…ワタと皮つきで250g

長ねぎ(斜め切り)…1/2本

油…小さじ2

合せ調味料 (混ぜ合わせる)

  • みそ…大さじ1+1/2
  • コチュジャン…小さじ2
  • 刻みにんにく…小さじ2
  • おろししょうが…小さじ1
  • みりん…大さじ2
  • 水…1カップ

青じそ(せん切り)…5枚

作り方
1
スペアリブはざるにのせて熱湯をかける。キッチンペーパーで水けをふきとり、鍋に油を入れて弱火にかけ、スペアリブの両面を焼く。
2
合せ調味料を分量の水で溶き混ぜて①に加えて中火にかける。
3
煮立ったら弱火にしてふたをして25分ほど煮る。
4
冬瓜、長ねぎを加えてふたをしてさらに15分ほど煮る。
5
火を消し、青じそをのせる。
※炒めOKの土鍋を使うこと。
※シメはごはんがおすすめ。黒酢をかけるとさらにおいしい。
辛みなすで体にこもった熱を排出
写真:麻婆なす
近影:ウー・ウェン

料理家ウー・ウェンさんの

麻婆なす

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ウー・ウェンさん

うー・うぇん●中国の家庭に伝わる医食同源の知恵にあふれた料理を紹介。レシピ出典『体と向き合う家ごはん』(扶桑社、税込1,760円)。

自然の恵みに感謝し、楽しみながら自分や家族の体調に合せて食事をいただく。それが一番の医食同源だと私は思っています。

湿気が多く蒸し暑い夏は、積極的にスパイスを取り入れて体にこもった熱を排出し、体温調節することを心がけています。そのレシピのひとつが、夏野菜のなすを使ったこの麻婆なすです。

四川料理でおなじみの麻婆味の特長は、花椒のぴりっとした辛さの「麻」と唐辛子の辛さの「辣」。辛みが気と血を巡らせ、発汗効果と夏冷え対策にぴったりです。
水分不足で乾燥した体を潤すので、夏風邪の予防にも効果的なんですよ。

材料(2人分)

なす…3本

牛薄切り肉…80g

わけぎの小口切り…1本分

合せ調味料

  • 豆板醤…大さじ1/2
  • 味噌…大さじ1
  • 酒…大さじ1
  • 水…80㎖

片栗粉…小さじ1(水大さじ1で溶く)

太白ごま油…大さじ1

花椒粉…小さじ1/3

作り方
1
なすはひと口大に切る。牛肉はざく切りにする。
2
合せ調味料を分量の水で溶き混ぜて①に加えて中火にかける。
3
フライパンに太白ごま油を入れて熱し、①の牛肉を入れて炒め、火が通ったらなすを入れて炒め合せ、合せ調味料を注ぐ。煮立ったら弱火にしてふたをして7〜8分煮て、水溶き片栗粉でとろみをつけ、わけぎと花椒粉を振る。
イカで肝臓機能をサポート
写真:イカとトマトのさっと炒め
近影:瀬尾幸子

料理研究家瀬尾幸子さんの

イカとトマトのさっと炒め

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瀬尾幸子さん

せお・ゆきこ●ちゃちゃっと作ってホッとできるラクうまごはんを提唱。著書に『ほんとに旨い。ぜったい失敗しない。ラクうまごはんのコツ』(新星出版社、税込1,485円)。

一年中手に入るトマトですが、気温の上昇につれて甘みや旨味が増していきます。そんなトマトを夏から秋にかけて旬のイカと合せて、疲労回復に効果のある炒め物です。

イカには代謝を高めるタウリンが豊富で、夏バテや食欲不振によって疲れた肝臓機能の回復が期待できます。簡単でおいしいので夏になるとつくりたくなります。

イカはかたくならないように、さっと火を通すのがポイント。色が白く変ったらできあがりです。

材料(2人分)

生イカ…1杯

トマト…1/2個

玉ねぎ薄切り…1/4個分

ニンニクみじん切り…1片分

赤唐辛子輪切り…少々

バジル…1枝

オリーブオイル …大さじ2

塩…小さじ1/3

コショウ…少々

作り方
1
イカは下処理をする。腹の中に指を入れて胴と足を離し、足を引き抜く。胴の中の軟骨を外し冷水で洗う。足の吸盤は親指でしごいてとる。下処理をしたイカの胴を輪切り、足はぶつ切りにする。トマトは2㎝角に切る。
2
フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、玉ねぎ、ニンニク、赤唐辛子を入れて、玉ねぎがしんなりするまで焦がさないように炒める。
3
イカ、トマトを入れ、塩・コショウを振って炒め合せる。
4
トマトが少し崩れた感じになったらバジルをちぎって(包丁で切ると黒ずんでしまうので手で)散らし、ひと混ぜしてできあがり。
高たんぱくなマグロで疲労回復
写真:マグロの地位を上げた究極のヅケ丼
近影:車 浮代

江戸料理文化研究家車 浮代さんの

マグロの地位を上げた究極のヅケ丼

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車 浮代さん

くるま・うきよ●時代小説家、江戸風キッチンスタジオ「うきよの台所」オーナーでもある。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書、税込990円)ほか20冊以上。

江戸時代の料理や文化を研究し、時代小説を書いていると、江戸の食の知恵に驚かされることばかりです。

いまの時代、刺し身と言えばマグロですが、江戸時代は下魚でした。そんなマグロの人気が高まった理由のひとつが、江戸の寿司屋が、マグロの切り身を醤油に漬けた「ヅケ」を考案したことでした。

このレシピはまさに、マグロの地位を上げた究極のヅケ丼です。マグロの赤身は低カロリー・高たんぱく、オメガ3系脂肪酸のDHAやEPAも含んでいるので、夏でも積極的に摂りたい食材です。このヅケ丼はマグロにさらに卵黄を絡めて栄養価をアップ。初めてつくったときは、弾力を増したマグロの身、ねっとりなめらかな舌触りに感激。いまや私にとって、暑さに負けないための食養生レシピとなりました。

材料(1人分)

マグロの刺身…6枚程度

酒・しょうゆ・みりん…各大さじ1

卵黄…1個

温かいごはん…1杯分

のり・長ねぎ・ごま…各適量

おろしわさび…適量

作り方
1
酒とみりんは耐熱容器に入れて電子レンジで20秒加熱し、冷まして醤油を加える。
2
①に卵黄を加えてよく混ぜる。さらにマグロを絡めて5分程度置く。
3
茶碗にごはんを盛り、ちぎったのりを敷いて②をのせ、刻みねぎとごまをまぶし、おろしわさびをのせる。
発酵食品で免疫力を高める
写真:夏野菜と豆腐のしょうゆ糀あえ
近影:横山タカ子

料理研究家横山タカ子さんの

夏野菜と豆腐のしょうゆ糀あえ

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横山タカ子さん

よこやま・たかこ●信州の郷土料理や行事食を研究。レシピ出典『わたしが元気なのはこれを食べているから 76歳、横山タカ子の食の知恵』(家の光協会、税込1,760円)。

私の健康の秘訣といえば、毎日の食事以外には考えられません。まず意識しているのが、筋肉量を落とさないために毎日たんぱく質をしっかり摂ること。次に腸内環境を整えることです。そんな私が夏に作る料理のひとつが、このレシピです。

暑い夏もわが家の食事には、腸内の善玉菌を増やし、免疫力を高めてくれる発酵食品は欠かせません。糀を発酵させたしょうゆ糀は、甘み、塩気、旨みがそろっているので、調味料として大活躍。なすやいんげんといった夏野菜にも豆腐にも、ぴったり合います。

植物性たんぱく質の多い豆腐なら、食欲が落ちがちな夏でも食べやすいですよ。なすは90%以上が水分ですが、腸内環境を整える食物繊維が含まれています。
モロッコいんげんはアスパラギン酸が豊富なので、疲労回復が期待できます。

材料(2人分)

なす…1個

モロッコいんげん…2本

木綿豆腐…1/3丁(100g)

しょうゆ糀(※)…大さじ2

※米糀に同量のしょうゆを加えて3日~1週間室温で発酵させたもの。1日1~2回混ぜて発酵を促す。

作り方
1
なすは縦半分に切って皮に細かい格子状の切り目を入れる。モロッコいんげんとともにせいろ(蒸し器)に並べ入れて強火にかけ、蒸気が上がったら中火にして10分蒸す。それぞれ2㎝幅の斜め切りにする。
2
豆腐はさいの目に切る。
3
ボウルに①と②を入れ、しょうゆ糀を加えさっくりあえる。
ゴーヤで胃腸の調子を整える
写真:ゴーヤごはん
近影:野本弥生

菜食料理研究家野本弥生さんの

ゴーヤごはん

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野本弥生さん

のもと・やよい●菜食料理教室の開催や出張料理人として全国を奔走している。著書に『ご自愛レシピ』(WAVE出版、税込1,815円)ほか。

日本各地を飛び回っても心や体調はスキップできるくらい健やか。その秘訣はやっぱり「普段ごはん」です。このレシピは、夏の旬野菜ゴーヤ独特の苦みに松の実の香ばしさが食欲をそそり、夏バテ防止に大活躍。手軽さとおいしさの両面で自信を持ってご紹介できる私のひと皿です。

ゴーヤは苦み成分に胃腸の状態を整え、食欲を促す効果があります。さらにゴーヤ1本に含まれているビタミンCはレモン約2個分。紫外線によるダメージを受けやすい夏だから積極的につくりたくなります。松の実は良質な植物性脂肪とたんぱく質、鉄分や亜鉛といったミネラル分が含まれ、夏の冷えの改善にも期待できます。

材料(2人分)

温かいごはん…2人分

ゴーヤ…1/3本

松の実…大さじ2

塩…小さじ1/2

砂糖(甜菜糖等)…小さじ2/3

作り方
1
ゴーヤは縦半分に切ってワタと種を除き、3㎜幅に切る。松の実は香ばしく乾煎りする。ワタや種取りにはスプーンを使うとラク。ワタは苦みの原因ではないので、少しくらい残っても大丈夫。
2
①のゴーヤを塩と砂糖でもみ、3分ほどすると水気が出てくるので手で絞る。塩に加えて甘みを足すとアクや苦みを適度に除け、旨みが増す。苦みをさらに取り除きたい場合は熱湯でさっと茹でて。
3
ごはんに②のゴーヤと、①の松の実を混ぜ合わせる。
【ポイント】ゴーヤは1本を使って下味まで同様に。余ったものにニンニクすりおろしと深炒りごま油を少々混ぜ、ナムルに。
長いもと梅干ししめじで免疫力アップ
写真:きのこ梅とろろ汁
近影:奥薗壽子

家庭料理研究家奥薗壽子さんの

きのこ梅とろろ汁

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奥薗壽子さん

おくぞの・としこ 簡単でおいしく健康にかなった料理を提唱。著書に『まいにち腸活スープ』(●PHP エディターズ・グループ、税込1,463 円)ほか。

夏の暑さで体が疲れているときは、料理をする作業は少ないほうがいいですよね。スープなら調理が簡単ですし、気軽に食べられ、汁に溶け込んだ栄養が無駄なく摂れて、消化吸収もいい。温かいスープは、体を温めることで免疫力を上げる効果も期待できます。

このレシピは体や心が疲れたなと思うときに食べたくなります。しめじのつるんとした食感と梅干しの酸味、長芋のふわとろ感がなんともおいしい。食物繊維がたっぷりの長芋は腸内環境を整えてくれますし、梅干しのクエン酸の力が疲労回復を助けてくれます。

材料(2人分)

  • 水…300㎖
  • 昆布…(あれば)1×5㎝のもの1枚
  • 梅干し…1個
  • しめじ(小房に分ける)…1パック

長芋…100g

味噌…大さじ1

かつお節…1パック(4g)

わさび…適量

作り方
1
Aを鍋に入れ、ふたをして火にかける(昆布はキッチンバサミで細く切る)。
2
長芋は皮をむき、ポリ袋に入れて麺棒で叩いて砕き、口を縛る。
3
①のしめじに火が通ったら梅干しをつぶし、かつお節を入れ、味噌で味を調える。
4
②の袋の角を切り、絞り出して③に入れる。
5
梅干しの種を取り除いて器に盛り、わさびを添える。