「財産なんてわが家にはない」―― その油断が
あなたが亡くなったあと、家族が揉める原因になるかも…。
教えてくれる人
司法書士法人はやみず総合事務所代表
速水陶冶さん
主に成年後見や家族信託の分野で、高齢者の財産管理に携わっている。著書に『親が認知症になる前に読むお金の本』(サンエイ新書)。
子どもたちに遺せるのは自宅と預貯金だけです。長男と次男に半分ずつ相続させることはできますか?(74歳・主婦)
不動産の相続の仕方は4種類あります。家族の状況に合った方法で相続させましょう。
家やマンションなどの不動産は物理的に分けることができません。それゆえに相続分に不公平感が生まれ、揉める原因になりがちです。
不動産を相続させるには、次の4つの方法があります。
- 現物分割…「自宅は長男に、預貯金は次男に」と、財産それぞれを各相続人に指定して分ける方法です。自宅を現金に換算して考えた時に預貯金と差が出てしまうことがあるため、あとから揉めないためにもあらかじめ相続人全員の同意を得ておきましょう。
- 換価分割…家や土地を売ってお金に換えてから分ける方法。公平性を持たせたい時に有効です。売却して得た利益には所得税がかかる可能性がある点に注意しましょう。
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代償分割…相続人の1人が家や土地を相続する代わりに、ほかの相続人にお金を支払って調整する方法です。
例えば、相続財産が3000万円の価値の自宅と1000万円の預貯金だったとします。長男と次男に2000万円ずつ分けたいと思っても、自宅を長男に相続させると平等ではなくなります。
そこで自宅を相続する長男が、1000万円の現金を次男に渡すようにするのです。そうすれば、ちょうど半分になります。現金は分割でも構いません。 - 共有分割…自宅や土地を複数の相続人で共有する方法です。将来的に売却などの処分を考えた時に、相続人全員の了承を得ないといけないので、あまりおすすめはしません。
土地の価値は大まかに把握しておく
土地や家といった財産の価値、つまり相続税評価額の計算は少々面倒です。土地は「路線価方式」、もしくは「倍率方式」という方法で計算します。しかし、元気なうちは評価額を大まかに把握して家族と共有しておけば十分です。
大まかな評価額は、下図の通り、固定資産税の課税明細書に載っている「土地の固定資産税評価額」から知ることができます。
なお、家屋は固定資産税評価額がそのまま評価額となります。
土地と家屋の価値をチェック