「財産なんてわが家にはない」―― その油断が
あなたが亡くなったあと、家族が揉める原因になるかも…。
教えてくれる人
司法書士法人はやみず総合事務所代表
速水陶冶さん
主に成年後見や家族信託の分野で、高齢者の財産管理に携わっている。著書に『親が認知症になる前に読むお金の本』(サンエイ新書)。
遺言書の書き方がわかりません。手書きでもいいですか?(78歳・主婦)
自分で書く「自筆証書遺言」と、公証人に書いてもらう「公正証書遺言」があります。内容をよく理解して判断を。
親の死後、子どもが箪笥から封筒を見つけると、中には手書きの遺言書が……というドラマの一場面を見たことがありますよね?あれが「自筆証書遺言」です。
その名の通り、便せんなどに遺言を自分で手書きするのですが、手書きゆえに間違いが多く、無効になるケースが頻発していました。しかし、19年1月の法改正で、手書きによる負担が大きい「財産目録(財産の一覧)」はパソコンでの作成が可能になりました。さらに、文書形式でなくてもよくなり、預貯金であれば通帳の表紙のコピーでも認められます。
また、自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、家族による破棄や改ざんなどの恐れがありました。ですが、これも法改正で法務局に預けることが可能になったのです。
さらに自筆証書遺言は、遺言者の死後、相続人が家庭裁判所に持って行き「検認」という手続きをしなければならず、手間と時間がかかっていました。しかし、法務局に預ける場合は、検認も必要ありません。
書き間違いや形式の不備が心配な人は「公正証書遺言」を検討しましょう。
公正証書遺言は、公証役場で遺言者が相続人や財産の情報を公証人という専門家に伝え、遺言書を書いてもらうものです。その際、書面にした遺言の確認のために、2人の証人が必要となります。
ただし、作成には手数料がかかります。相続財産が500万円~1000万円だと1万7千円というように、財産の額によって変動します。
自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、書いておいた方がいいのが「遺言執行者の指定」です。遺言執行者がいないと、預貯金を相続する際、受け取る相続人全員の署名捺印が必要となります。もし相続人の中に認知症の人がいた場合、署名できないことも考えられます。
しかし、遺言執行者が指定されていると、その人が単独で銀行の手続きをすることができるのです。病気になるリスクを考えて、遺言執行者はできれば配偶者ではなく子どもの中から決めましょう。
遺言書、どちらでつくる?
自筆証書遺言の書き方