人生決算書の作り方

介護の決算

自分や家族だけで解決しようとせず、
保険やサービスを積極的に利用しましょう。

教えてくれる人

介護・暮らしジャーナリスト

太田差惠子さん

長年、親子間の介護を取材。老後のお金や高齢者住宅にも詳しい。今年3月『子どもに迷惑をかけない・かけられない! 60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)を上梓。

Q2

介護費用は、どのくらいかかりますか?国民年金のみの加入でしたが、息子家族に負担をかけたくありません。(78歳・元自営業)

A

国民年金のみなら、介護保険のサービスを利用する際の自己負担は1割です。高額介護サービス費などもあるので、心配しすぎないでください。

 介護費用の平均額は在宅で月5万円、施設なら月11万7000円という調査結果があります(※公益社団法人生命保険文化センター「平成27年度 生命保険に関する実態調査」より)。しかしこの数字は参考程度に考えておいてください。実際には介護される人の体の状態や、家庭の経済状況によってさまざまです。
 介護費用は「いくらかかるか」ではなく「いくらかけられるか」を考えましょう。月々の年金のほか、自身の蓄えや不動産などの資産状況も確認してください。
 介護保険を利用すれば、原則として自己負担1割(所得によっては2割または3割)で訪問介護やデイサービス、住宅改修などの在宅サービスを受けられます。ただし、1ヵ月に利用できるサービスの量には上限(支給限度額)があり、要介護度区分によって異なります(下表参照)。
 仮に要介護3なら、月27万480円が支給限度額となります。通常、その範囲でケアマネジャーにどのサービスをどれだけ利用するかという「ケアプラン」を作成してもらいます。限度額を超えて利用した分は全額自己負担です。

要介護度区分と身体の状態[目安]
『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社・太田差惠子著)より引用

自己負担を減らす制度を活用する

 介護保険には、自己負担額が一定額を超えると利用料が戻る「高額介護サービス費」という制度があります。一般的な所得の場合、自己負担の上限は月4万4000円です。しかし、ご質問のように国民年金のみで、世帯全員が住民税非課税の場合は上限が変わります。月1万5000円です。
 また、住民税を払っていても、必要な申請をすることでさまざまな控除を受けられるケースがあります。夫と死別して再婚しておらず、年収が500万円以下なら「寡婦控除」の対象になります。
 要介護度が重いと「障害者控除対象者認定書」が交付されるケースも。自治体で基準は異なりますが、障害者手帳を持っていなくても障害者控除を受けることができます。