
福光屋とは
1625年(寛永2年)創業の金沢きっての老舗酒蔵メーカー。純米酒、純米吟醸、純米大吟醸だけを造る純米蔵であり、長年培ってきた米発酵技術を生かし、化粧品開発にも取り組んでいる。2025年で創業400年を迎える。
目次
『ゆきあかり』の〝発酵力〟を探る。

発酵食レシピの開発をライフワークとされている料理家の井澤由美子さん。
愛用の『ゆきあかり』のメーカー、金沢の老舗酒蔵「福光屋」の発酵研究所を訪れました。
井澤由美子さん
料理家・国産中医師・国際中医薬膳師。レモン塩や乳酸キャベツ、薬膳ブームなどの火付け役と知られ、発酵食や中医学に造詣が深い。きょうの料理、あさイチ(NHK)などの料理番組の他、企業CM、書籍、商品開発等でも活躍。国際中医薬膳師試験認定校「東京食薬Labo」主宰。
上松昇さん
『ゆきあかり』のコメ発酵液をつくるのに欠かせない秘伝酵母「FT15」の発見者。95年の入社以来、発酵のメカニズムを研究し続けるベテラン研究員。唎酒師。フードコーディネーター。
- 井澤
- 『ゆきあかり』が肌にぐんぐん入っていく感じは、発酵の力が働いているからに違いないと思うのですが。
- 上松
- 井澤さんご名答。『ゆきあかり』の浸透力と保湿力は、配合しているコメ発酵液のおかげです。
- 井澤
- ほらやっぱり(笑)。毎日使ってますからね。ところでコメ発酵液とは具体的にどういうものですか?
- 上松
- 秘伝の酵母FT15で米を発酵させて、肌にいい成分を抽出したものです。
- 井澤
- 秘伝の酵母と聞くと、発酵オタクとしては興味がわきますね。
- 上松
- 実はFT15は10年間研究所で眠っていたんです。新たな酵母を探していたときに発見したのですが、アルコールをつくる能力がないため役立たずの酵母と呼んでいました。気になって研究所で保管していたんです。
- 井澤
- たまたま見つけた酵母というわけですね。でも酵母ってものすごくたくさん種類があって、なかなか同じ酵母には出会えないですよね。
- 上松
- そうです。だからこのとき廃棄していたら、『ゆきあかり』は誕生していませんでした。そう考えると奇跡的ですね。
- 井澤
- このコメ発酵液は、どうして特別肌にいいのですか。
- 上松
- FT15は肌を刺激するアルコールをつくらない。そのかわり肌の保湿に欠かせないアミノ酸をつくる能力が、従来の日本酒酵母に比べて2倍もあるんです。
- 井澤
- アミノ酸たっぷりというのわけですね。でも、ぐんぐんしみこむ感じがするのはなぜですか?
- 上松
- 酵母の分解力のなせる業です。コメ発酵液は発酵によって細かなアミノ酸分子にまで分解されているから、肌への浸透が抜群にいいんです。

酵途中のコメ発酵液。水の分量が違うと、同じ温度で発酵させてもアミノ酸の量や香りが異なる。「日本酒とは違った、まだ若い香りがします」(井澤さん)
- 上松
- 今の製法にたどり着くまで、とても苦労しました。酵母と米、水の量や発酵の温度の組み合わせを300回は試作して、完成までに3年もかかりました。
- 井澤
- それだけ手をかけたら、もう我が子同然ですよね。私は自分で発酵させた食材や調味料がかわいくて仕方がないです。
- 上松
- 分かります(笑)。酵母によってつくりだす成分は違って、可能性は無限大。いくら研究しても飽きないのも魅力ですね。
- 井澤
- 『ゆきあかり』はまだまだ進化の途中というわけですね。これからが楽しみです。
『ゆきあかり』は原料も一級品。
原料① 契約栽培米

酒米の最高峰、「山田錦」を贅沢に使っています。
大吟醸にも使われる山田錦は、粒が大きくデンプン質を多く含みます。
純粋なデンプン質だけを使うため、この山田錦の中心60%を残して磨き上げて使用。40%は削ってしまうという贅沢さです。『ゆきあかり』に使うのは、兵庫県多可郡多可町中区坂本で育てられた契約栽培米だけ。福光屋では農家と共に60年以上、土づくりから研究をつづけています。
原料② 恵みの百年水

白山山系の、澄み切った天然水で仕込みます。
日本三名山のひとつ、霊峰白山に降り注いだ雨が地中深くにしみこみ、100年もの歳月をかけてミネラルを蓄えた貴重な水です。福光屋では仕込みにはもちろん、洗米や道具の洗浄にまでこの水を使います。
角のないまろやかな味わいは、飲料水としても人気。容器持参でここまで水を汲みに来る常連さんもあとをたちません。