【通販生活の疑問】高市首相は、なぜ、こんなに支持された?

通販生活では長年「憲法改正国民投票におけるテレビCM」は、資金力によって不公平が生じない規制が必要ではないかと問題提起をしてきました。ネット全盛時代の現在も、この不公平は変わらず存在し続けています。
● 憲法九条の〝非戦の誓い〟を受け継いでいく。
● 地震大国の日本で原発の稼働には反対する。
2月に突如行なわれた衆議院選挙は、私たちが大切にしてきたこの2つの考えに賛同する方々にとって、疑問が残る結果だったと思います。
憲法改正国民投票が一歩も二歩も近づいてきたいま、「なぜ、この結果になったのか」を理解し、これから何が必要なのかを考えていきます。

私はこう考える。

画像:安野修右さん

安野修右さん

画像:西村カリンさん

西村カリンさん

画像:奥村信幸さん

奥村信幸さん

画像:安野修右さん

安野修右さん

日本大学法学部准教授

高市旋風は現代の金権選挙。
カネの力で民主主義が左右されないよう、
政党の選挙資金にも規制が必要です。

──今回の衆院選では〝高市旋風〟が吹き荒れ、自民党が圧勝しました。どのように評価していますか。

選挙直前、公明党が自民党との連立を解消しました。これが今回の選挙の最も重要なファクターだったと思います。「中道的」な政策を志向する公明党が離れたことで、自民党は公明党的な路線を顧みる必要がなくなり、思い切って「右」へシフトできました。外国人や中国への強硬姿勢、国旗損壊罪の創設、スパイ防止法の推進などはその典型です。そのため、自民党以上に右派的だった参政党や日本維新の会は、〝ニュー自民党〟に支持者を奪われたのではないでしょうか。

一方、野党側は立憲民主党と公明党が「中道改革連合(中道)」で一本化し、私が住んでいる東京都内の選挙区でも当初、中道候補の勝利が期待されました。しかし、新党・中道とはつまるところ、〝立憲民主党の右シフト〟です。今回の選挙は主要政党の右傾化競争でもあったわけですが、社会全体が右傾化する中、右傾化したニュー自民党が立憲民主党の右シフトを吹き飛ばしました。

選挙のアメリカ化と政治の
個人化で選挙が変わった。

──選挙期間は戦後最短の16日間。各党、各候補が政策を訴える時間はとても少なく、まともな政策論争が展開されたとは思えません。

選挙そのものが大きく変わりました。ひと言で表現すれば「選挙のアメリカ化」です。アメリカの大統領選のように、政党の中枢に専門のコンサルティング業者が陣取り、選挙運動を主導する形です。

その戦略からすれば、党首は自分に批判的なマスメディアに登場しなくてもいい。メディアはいまや新聞やテレビだけではありません。マスメディアに出演して論争で後手を踏む危険を冒すくらいなら、自己アピールに努めた方がいいのです。幸い、ネットには「アベマニュース」や「リハック」など細分化されたチャンネルが多数あります。時々の情勢に合わせて党首や幹部をどのチャンネルに出演させるか、どう見せるかを戦略的に決めていくのです。

最も大事なのは「見え方」。高市首相はこの部分で他党の党首を圧倒していました。選挙における投票の判断が、こうやって党首1人に寄りかかっていく現象を「政治の個人化」と呼んでいます。

──選挙期間中、高市首相の広告動画がSNSを席巻しました。

「選挙のアメリカ化」や「政治の個人化」には、潤沢な資金が必要です。しかし、日本の公職選挙法は、選挙運動で使える資金に厳格な上限を定めています。同時に、ポスターやビラ、選挙カーの燃料代などは公費で負担されています。これらは、資金力の差によって不公平が生じないようにという考え方に基づいています。

他方、これは制度的な欠陥ですが、選挙期間中であっても政党(政治団体)の政治活動は禁止されておらず、政党はいくらでも〝政治活動という名の選挙運動〟に広告費を投入できます。億単位といわれている自民党のネット動画の広告費の元手が政党本部からの拠出だったとすれば、そこには政党助成金も含まれます。自民党で約153億円に達する政党助成金の原資は、税金です。

政党などの「政治活動」は
選挙期間中でも資金の制限がない。

高市首相が登場する約30秒の動画は、1月26日に自民党のYouTubeチャンネルに投稿され、広告としてSNSにも出稿。2月8日の投票日までにおよそ1億6千万回と異例の再生数だった。自民党が投じた広告費は約2〜3億円と推測される。

画像:自民党のYouTubeチャンネル

──税金が回り回って、自民党の膨大な広告費に化けている、と。

公金を原資とする政党助成金を多くもらった政党が巨額の広告費を投じて自らの党への認知を拡大し、さらに多くの票を獲得してまた政党助成金の配分が増える。この雪だるま式の、構造的な問題が今回の選挙で顕在化したと考えています。

選挙とカネの問題に早くから気づいたイギリスは、日本が明治時代だった1883年に候補者の選挙運動資金に上限を設けました。そして2000年には、政党の選挙関連支出についても上限をかけたのです。

選挙期間中の〝政党の支出〟を青天井としている日本も、早く規制を設けるべきだと思います。そうしないと、カネの力で民主主義が左右されてしまう、現代の金権選挙とでも言うべき状況は改善されません。首相の解散権に制約がない点とともに、早急に解決すべき課題です。

真偽不明な情報をスマホから
浴びる選挙戦は尋常ではない。

──今後、高市政権とは、どう向き合えばいいのでしょうか。

自民党内でも高市首相の権力は圧倒的なものになりました。党というよりも高市首相個人にますます権力が集中していくでしょう。リーダーの個人的な人気を背景に行政権が強化される現象を「政治の大統領制化」と呼びます。戦後の日本には出現したことのない政治状況であり、大げさに言えば、16〜18世紀の欧州に存在した「絶対王政の国王」に匹敵するパワーかもしれません。

こうなってくると、三権分立による抑制機能が正常に働くかどうかが大きなポイントになります。高市政権という強大な行政権に対抗するには、とくに立法府の役割が大きい。「中道」は野党第1党としては戦後最少の49議席しか持っていませんが、どんなにきつくても政府の言動をしっかりチェックしなければなりません。三権の一翼、司法も同じ。そしてマスメディアもです。こうした各分野が適切な監視機能をどこまで発揮できるかにかかっていると言えるでしょう。

そして有権者としては、可能であれば選挙情報の〝SNS断ち〟がベストです。真偽不明な情報をスマホでシャワーのように浴びる選挙戦は尋常ではありませんから。

画像:西村カリンさん

西村カリンさん

ジャーナリスト

疲弊した日本人は
あいまいな言葉に熱狂した。
高市首相は国民ではなく、
国家を重視しています。

──フランス人ジャーナリストの目から、〝高市自民〟の大勝の理由はどう見えましたか?

選挙期間中に15ヵ所以上の街頭演説を取材しました。際立っていたのは、高市首相のアイドル的な人気です。街頭には数千から1万人以上の聴衆が集まり、高市首相のあいまいな言葉に熱狂していました。

彼女は演説で具体的な政策をほとんど語らないので、政策を細かく理解しているという支持者は少なかったと思います。会場でインタビューすると、特に女性の支持者は政策を詳しく知らないまま「同じ女性で頑張っているから」と手放しで評価する向きが目立ちました。これは惨敗した中道改革連合と対照的です。聴衆は中道代表だった野田佳彦元代表を見に来たのではなく政策を聴きに来ており、演説の内容で支持するかどうかを判断していました。

結局、失われた30年で疲弊した日本人の耳には「日本列島を、強く豊かに」というあいまいだけれど、ポジティブなスローガンが心地よく響いたのです。どんなに根拠が薄くとも夢を語る高市首相が選ばれ、厳しい現実や複雑な政策論争、自民党批判を語る左派は選ばれなかった。

左派が壊滅状態になった
日本は特異な状況に見える。

──母国フランスや欧州諸国でも右派勢力が台頭しています。右派の台頭は世界的な趨勢なのでしょうか。

来年、2027年のフランス大統領選挙では過去2回と同様、決選投票に極右政党「国民連合」の候補が出ることがほぼ確実です。背景にあるのは、中道のマクロン政権に対する失望です。移民や経済の問題が解決されない中、有権者はある種の諦めから「ひょっとしたら極右なら何とかするのでは」と考えるようになっています。しかしひと口に極右といっても、日本とフランスはかなり違います。国民連合は反移民ですが、同性婚は容認しています。さまざまな社会政策において、いまの自民党は欧州の極右政党よりも「さらに右」に位置しているのです。

そしてフランスでは、極左に近い左派も強くなっています。フランスで最も移民が多いパリでは左派が強く、極右はいつも苦戦しています。スペインやノルウェーでも右派から左派への揺り戻しが起こりました。それと比べると、左派が存在しないほどの壊滅状態に追い込まれた日本は、特異な状況に見えます。

──なぜ日本の左派は壊滅状態になったのだと思いますか。

「日本は特別な国だ」と考える日本人が多いことが背景にあると思います。そんな日本人は、日本を重視し「もっと強く特別な国にする」と訴える政治家を支持します。そういう政治家は基本的に右派で、左派にはほとんど見当たりません。

しかし「自国を強くする」という主張は、左派にとってタブーでも何でもありません。軍事的に強くなるのかどうか、外交や経済はどうか。国として強くなるための政策が右と左で違うだけなのです。

さらに言えば、いま起きているのは「右派対左派」の戦いではなく、「国家を語る政治対人間を語る政治」の対立です。私は高市首相の著書をすべて読みましたが、人間についてほとんど語られていない。彼女が重視しているのは国家であり、次に強い企業や技術です。一人ひとりの国民ではありません。これはトランプ米大統領も同じ。「米国を再び偉大に」とは言っても、「一人ひとりの米国人を再び偉大に」とは言わない。国家という抽象的なものを主語にする方が、多様な個人を主語にするよりもSNSの短文表現では伝わりやすい点も見逃せません。

米国に追随するだけでは
世界で存在感を放てない。

──高市政権は親米であり、脱米国を模索する欧州右派と異なります。

非常に危険だと思います。今回の選挙戦終盤、トランプ大統領がSNSで高市首相への応援メッセージを出しました。明らかな内政干渉であり、日本の首相が感謝の意を示すのは不適切です。これまでトランプ大統領が支持したのは、ハンガリーのオルバン首相やアルゼンチンのミレイ大統領など独裁的な政治家ばかり。この「独裁クラブ」に仲間入りしたとみなされてもよいのでしょうか。

実のところ、高市政権にとってトランプ政権こそが最大のリスクです。関税と巨額の対米投資で、日本は「米国にとって都合のいい財布」にされています。

欧州は「トランプ大統領は危険な政治家だ」と強く意識しています。最も近いと目されるイタリアのメローニ首相ですら、グリーンランド問題ではトランプ大統領を公に批判しています。こうした中で高市政権が米国に追従し、トランプ大統領をまったく批判しないようでは国際社会で強い役割を担えません。

いま米国以外の国からの声は、日本の政権に届きにくくなっています。外務省は理解しているでしょうが、官邸一強状態のため、耳の痛い直言は政権中枢に届きません。また首相会見などの重要な記者会見において海外メディアが事実上排除されていることも一因です。

政権与党が海外メディアを排除する国は、民主主義体制の先進国では日本だけです。ロシアのプーチン大統領の会見でさえ、海外メディアは厳しい質問を許されているのに。これでは高市首相が言うような、世界の中心で存在感を放つ日本の外交など無理でしょう。

画像:奥村信幸さん

奥村信幸さん

武蔵大学社会学部メディア社会学科教授

わかりにくさを見つめ直し、
「自民党はちょっと心配」と思っている
人たちとの連携を根本的に考えてほしい。

──世論調査などに基づく報道機関の予想通り、自民党の圧勝でした。

確かに自民党は、多くの議席を得ました。しかし、比例代表の得票は、2021年、岸田内閣の時の総選挙と比べると、得票数も得票率も微増に過ぎません。小選挙区制の特徴が顕著に出てしまいました。候補を乱立させた野党側の失敗だと思います。

ただし、野党陣営は「失敗」で片付けず、「自民党はちょっと心配」と思っている人たちを、共通の言葉によってどこまで説得できるかを根本的に考えてほしい。政治に関心が低く、これまで投票にも行かなかった人たちを引き込むには、リベラルはわかりにくかったからです。

リベラルの主張や理念を
整理し説明する言葉が必要。

──「リベラルのわかりにくさ」とは、どんなことですか?

私も「リベラル」の一人だと思っていますが、選挙前にバタバタと結成された中道の言う「リベラル」とは何なのか、よくわかりませんでした。選挙中に自民党のユーチューブ動画が1億回以上再生されました。「強く豊かな国」「がんばる人が報われる国」など、歯切れ良く、一見シンプルです。しかし、「強いと安全とは違うかもしれない」「頑張れない人は報われなくていいのか」という優しさやバランスこそが、リベラルだとも思います。

そういう意味で、リベラルはそもそもわかりにくいのです。でも、何となく「リベラルがいいかも」と思っている人に向け、主張や理念を整理し、説明する言葉を編み出す努力をどれだけ重ねてきたのでしょうか。労働組合とのしがらみや政党の歴史などを口実にして、努力を怠っていた部分があると思うのです。

たとえば原発政策について、中道改革連合の内部で折り合いがつかず、あいまいなまま選挙を戦いました。このような「わかりにくさ」は大きな弱点でした。そこを有権者に見透かされた部分があると思います。

俗っぽいレベルでは、「見え方」の問題もありました。自民党は初の女性首相で、小泉進次郎さんらの若手も頑張っているように見える。高市早苗さんも自身の見せ方について、ファッションや一部に評判の悪い笑顔も含め、「タカ派」色を薄めるためにかなり研究をしたことが伺えます。

対して野党の核となるべき中道は、見飽きたお爺さん2人が無理してはしゃいでいる感じでした。60代以上の男性ばかりが中枢を固める“年寄りの党”というイメージを最後まで払拭できませんでした。

──「わかりにくさ」の克服には、何が必要ですか。

特効薬はありません。粘り強く議論し、共鳴できる人を増やしていくしかないと思います。

若い有権者をいかに引きつけるかという議論が盛んに交わされますが、「投票に行かなくてもいいや」と思っている人は、上の世代にも広がっているはずです。リベラルのあいまいさを抱えたままで、それでも同じ方を向いている人を見極め、連携できる人を「育て直していく」プロセスが必要だと思います。

少しでも目が開けてくると、沖縄の米軍基地も、東京電力福島第一原発の事故で生活が崩壊した人の救済も、近所の外国人との付き合い方も、高いお米も、みんな根底でつながっていることがわかってきます。

新聞やテレビも政治ニュースを
変えなくてはならない。

──リベラルの声を届けるには、どのような方法があるのでしょう。

やはりSNS、それもユーチューブやインスタグラム、TikTokなどでの「ショート動画」(約1分以内の動画)を上手に使えなければなりません。若い人たちは通勤通学で電車に乗っている数十分の間に、スマホで動画を渡り歩くような感覚です。40代以上でも、このような動画を通して政治と接触している人が増えているという印象です。

ショート動画はイメージ勝負の世界です。歯切れの良いキャッチフレーズなどが多用され、「実はいい人」感を植え付けようとユーザーに働きかけます。そういうNSの世界で細かい政策や特定の問題を説明するにはかなりのスキルが必要ですが、リベラル側はほとんどが対応できていなかったと思います。

野党やニュースメディアに期待されている大きな機能の一つは、何かあったら「そこは怒って当然だよ!」という明確なサインを国民に提示することです。まっとうな民主主義に引き戻すため、心ある声を結集させるきっかけとなるからです。だから、リベラルにはSNSを、イメージ戦略の競争の場ではなく「議論のフォーラム」として機能させてほしい。それがいつか社会を救うかもしれないのですから。

新聞やテレビというマスメディアも政治ニュースを変えなくてはなりません。「公平・中立」という建前の下で、本当は私たちに身近な政治現象を伝え損ねているからです。

『The Elements of Journalism(ジャーナリズムの原則)』(ビル・コヴァッチほか著)という、ジャーナリズム界では有名な書物があります。著者の1人であるコヴァッチ氏が、「ツイッター(現・X)は140文字しかないから、記事の中味なんて伝えられない」と嘆く記者に向かって、私もいた場で次のように言い返しました。「では私たちは若いユーザーに対して、記事を140字ずつに分けて効果的に伝える工夫をどこまで尽くしたのか」。

これは大きなヒントにも激励にもなる言葉だと思います。

SNSを重視した人たちは
比例区でどの党に投票した?

政治に関するSNSや動画サイトの情報を「重視している」と答えた人の投票先が、25年の参院選と今回の衆院選で大きく変化している。

画像:25年の参院選と26年の参院選の党別のグラフ

最近1週間の人気ランキング