
年齢を重ねるごとに増えゆく白髪、どう対処していますか?グレイヘアを選択した近藤サトさんと、派手髪を選択した石川三千花さん。真逆のお二人に、昨年50歳を迎え自身の白髪問題に直面しているにしおかすみこさんがお話を聞きました。
石川三千花さん
いしかわみちか・71歳。イラストレーター。映画やファッションに明るく突っ込みを入れるイラストとエッセイが人気。『石川三千花の勝手にオスカー』(集英社)など著書多数。
にしおかすみこさん
にしおかすみこ・50歳。2007年にピン芸人としてブレイク。家族の現状をリアルに綴った著書『ポンコツ一家』(講談社)が話題に。昨年『ポンコツ一家2年目』(講談社)を刊行。
近藤サトさん
こんどうさと・56歳。フジテレビアナウンサーを経て1998年に退社しフリーランスに。ナレーションを中心に活躍。『グレイヘアと生きる』(SBクリエイティブ)を刊行。
目次
お二人がヘアスタイルを選択したきっかけとは?
- にしおか
- 石川さんの髪、明るいオレンジがとてもお似合いです。
- 石川
- でしょ?(笑)。4年前コロナ禍で人に会う機会が減った時に、思い切ってショートカットにして色も変えたの。サンディ・パウエルっていうアカデミー賞を3回もとった衣装デザイナーがいるのだけれど、彼女のトレードマークがオレンジの髪で。格好いいなってずっと憧れていたんです。私も歳をとったらオレンジにしようって決めていたから、今だって思って染めちゃった。

- 近藤
- 突然の変化にみなさんびっくりされたんじゃないですか?
- 石川
- 最初はね。イメージしたことを実行するのは楽しいし、何より自分が気に入っているからいいの。
- 近藤
- さすがの思い切り。グレイヘアはある日突然にはできないから、そこはちょっと違うところですね。
- にしおか
- 確かに。グレイヘアは切り替えるまでの移行期間が大変そうだなっていうイメージがあります。
- 近藤
- きれいなグレイヘアになるまでに3年はかかりました。移行期間はかなり情けない姿ですよ。富士山の初冠雪みたいになってますから(笑)。テレビに出る時には、洗い流せるスプレーで染めたりしていました。

- にしおか
- それは大変そうですね。移行期間を乗り越えた後、似合っていなかったらがっかりですし。私はまだそこまで白髪は多くないですが、今は茶色に染めています。でもこれからもっと白髪が増えてきたときにどうしようかなと悩んでいて……。
- 石川
- グレイヘアはさ、サトさんはすごく似合っているけれど、みんながみんなこうなれる訳じゃないからね。グレイヘアっていう言葉に騙されちゃだめよ。白髪は白髪!
- にしおか
- 近藤さんみたいにお顔立ちがはっきりしていないと似合わないイメージはありますよね。私がやったら、きっとただのだらしない人です。
- 近藤
- そんなことないですよ(笑)。とはいえ確かにメイクやファッションは、染めていた時よりも気をつけないといけないかもしれません。一歩間違えるとおばあさんですからね。少なくとも、年齢より若く見られるっていうことはなくなります。

- にしおか
- 私は初めてグレイヘアの近藤さんをテレビで拝見した時、すごく新鮮で素敵だなって思いました。それまでお若いのにグレイヘアでテレビのお仕事される方ってあんまりいませんでしたよね。そもそも、どうしてグレイヘアにしようと思ったんですか?
- 近藤
- きっかけは東日本大震災でした。防災用品を見直した時、避難所で過ごすことになったら美容院に行けないから、白髪は自分で染めないとと思ったんです。今思えばその発想もおかしいのですけど、薬局で白髪染めを買ってきて、乾パンと並べてリュックに詰め込もうとしたときに、あれ? って。その時初めて、私はなんでここまでして白髪を染めることにこだわっているんだろうって疑問を持ちました。
- 石川
- 染めている自分に違和感があるなら、グレイヘアは選択肢のひとつよね。

- 近藤
- 私は白髪が出るのが早くて、局アナ時代はずっと白髪染めしていたんです。白髪がバレたら老けて見られて、自分の商品価値がなくなるって不安で。でも本音でいえば、そういう価値観から抜け出したかった。

- にしおか
- なるほど。ありのままの自分でいるために、染めるのをやめたんですね。格好いいです。
- 石川
- 派手に染めるのも勇気がいるけれど、ありのままでいることの方がよっぽど勇気が必要だと思うな。でも私も、人の目なんて気にせずに好きなことしようって決めたからこの色にしたのよね。
- にしおか
- 私から見たらどちらも同じくらい自由に見えます。私は目立ちたがりやのくせに、茶色に染めておけばみんなから浮かないでなじめるっていう、気持ちに矛盾があるんです。でももう50歳。私も自由に生きたい! 憧れますけど覚悟がいりますね。
グレイヘアと派手髪。
それぞれのいいところは?
- 近藤
- グレイヘアにすると年齢と見た目のギャップがなくなるのはいいところかもしれない。若くは見られなくなるけど、別のキャラクターや人格が生まれた感じ。グレイヘアがきっかけでつながる人もいて、世界が広がりました。
- 石川
- 思い切って変えちゃったら楽かもしれないね。逆に考えたらいまのイメージでこの先もいけるわけだから、いつか年齢とイメージが逆転して若く見られるときがくるだろうし。
- にしおか
- 飾らない自分でいる方が、気持ち的にもラクになりそうですね。派手髪はどうですか?

- 石川
- とりあえず目立つよね。なにより楽しいじゃない。67歳でオレンジにしたとき、この歳でもこんな風に変われるんだってウキウキしたもん。あとは、髪が派手だと適当な服を着ていてもコジャレて見える! ただの黒いジャージだって、この髪だとサングラスでもかければもうキマリよ。
- にしおか
- 分かります! 髪の色がアクセントになってお洒落。それを聞くと派手髪にしたいです。
- 近藤
- 待って待って! グレイヘアだって、意外となんにでも合うんです。白はどんな色とも親和性があるでしょう? 黒はもちろん、緑や赤とか、派手な色だって似合っちゃう。
- にしおか
- えー! そうなんですね。意外です。ますます迷ってしまう……。ちなみにデメリットはありますか?

- 石川
- お葬式で浮くことだね(笑)。あと目立つからどんな店でも1回いけば覚えられちゃう。仕事が落ち着くと信州の山荘で過ごすのだけど、山道を歩いているだけで二度見されること確実。悪いことはできないね。
- 近藤
- グレイヘアは目立ちはしませんからね。でも確実に老けて見られるから、人によってはイヤだと思う。電車で席を譲られたり、ロケの時頻繁に休憩を勧められたり……80過ぎのおじいさんにナンパされたときにはさすがにびっくりしましたね(笑)。
- 石川
- いいじゃない! モテて!
- 近藤
- 私と三千花さんで電車に乗ったら、私の方が席を譲られますよ。そういうのを面白がれる私みたいなタイプならいいけれど、それがイヤでグレイヘアにしたもののまた染めるっていう方もいらっしゃるみたいですね。

ありのままか、派手を楽しむか。
にしおかさんの結論は…?
- にしおか
- どちらにしてもやっぱり覚悟が必要ですね。私は今、実家に戻って暮しているんですけど、母が認知症、姉がダウン症、父が酔っぱらい、私が一発屋で全員ポンコツなんですよ。なかなか大変な毎日の中で急に派手髪にしたら、あれ? しんどすぎて、ついにおかしくなった? って思われません?(笑)
- 石川
- いいじゃない。大変な時ほど思い切ったことをすると、自分が楽になるっていうのはあるよ。今までの自分とガラッと変わることで気分転換ができて、活力が湧いてくるの。私も仕事が忙しくて休む暇もなかった時に、思い切ってゴクラクチョウみたいな青色に髪を染めたことがあって。こんなに真面目に仕事をしているんだから、髪ぐらい不真面目でもいいじゃんって思ったら気持ちのバランスがとれたんだよね。

- 近藤
- 確かにものすごい気分転換にはなりそうですね。私も全部白髪になったら、派手髪に挑戦してみようかな(笑)。
- にしおか
- グレイヘアと派手髪なら、私はどっちが似合いますか?
- 近藤
- 顔立ちがキュートでかわいらしいから、正直な気持ちをいうとグレイヘアはまだもったいないと思う。
- 石川
- 何でも似合うと思うよ。赤とかどう? 金髪も似合いそうだけどね。
- にしおか
- もうその言葉だけでドキドキです!
- 石川
- じゃあ、間をとってメッシュにしてみたら? なんでもやっちゃえばいいじゃない!
- 近藤
- そうそう。びっくりされるのは最初だけ。人の持つイメージなんて、コロッと変わるんだから。私だって白髪を染めていた時期の方が長いのに、もうグレイヘアの印象でしょう。
- 石川
- どう見られるかなんて気にしなくていい。自分の人生なんだから、好きなように生きればいいのよ。
- 近藤
- 人に言われてやるんじゃなく、自分の中から湧き出てくる言葉に耳を傾けたらいいってこと!
- にしおか
- はい! ……決めました。
にしおかさんの結論
どっちもやってみたい!
グレイヘアを楽しんでから、派手髪にする。
でも両方似合わなかったら茶色に戻します(笑)。
その時、その時の自分を好きでいたいです。
