染め糸の1割が色ムラで捨てられる宿命…シルク糸屋さんの誇りが生んだ8色残糸の”つなぐニット”。
長谷川商店
シルクの残糸ニットプルオーバー
色 | ピンク、ベージュ |
---|---|
サイズ | M〜Lのみ |
重さ | 約210g |
素材 | シルク100% |
洗濯方法 | 手洗い |
製造国 | 日本 |
サイズ | バスト(適応バスト) | 着丈 | 肩幅 | 袖丈 |
---|---|---|---|---|
M〜L | 96(79〜94)cm | 61cm | 37cm | 52cm |
( )は体のサイズ。
環境情報
ホルムアルテヒド測定値 | 家庭洗濯可能 | 梱包材 |
---|---|---|
20ppm以下 | 〇手洗い | ポリ袋(PP)、紙 |
袖口にポイント色を配した2色使いのニットのようですが、じつはこの1着には8色もシルク糸が編み込まれています。しかも微細な染色ムラのために、これまで捨てられてきた「残糸」なのです。
まるで糸の魔法のよう……この奥深く美しい光沢の1着を生み出したのは、わが国屈指の繊維の町、愛知県一宮市の長谷川商店(1965年創業)です。世界でもめずらしいシルク原糸の加工から服づくりまで一貫して担える小さな一流メーカーで、欧州のメゾンにシルク糸を納めていることでも知られます。
いまも自らを「糸屋」と名乗る長谷川商店さんのシルク糸に対する思いはひとしお。ところが近年まで選りすぐりのシルク原糸を磨いて美しい糸に仕上げたのち、その1割以上を泣く泣く捨てていたというのです。「シルクの宿命である染めムラです。チーズ染色といって、筒状の穴開き芯に巻いた糸玉を染色液が噴き出るシャフトに立てて芯から染めるため、内側は濃く、外側は薄く染まってしまう。糸玉1個につき内側と外側を50グラムずつ、幅4〜5ミリずつは取り除かないと、編み上げで微妙な色差が出てしまうのです」(ニッティングチーフ・八橋徹さん)
長谷川商店で扱うシルク糸の色は110色。染色ムラを取り除いた何色もの糸が少量ずつたまり、倉庫に入りきらなくなったそう。
「つやも肌触りも一等品の糸をトラックに積んで産業廃棄物として捨てに行きましたが、あれは切なかった。せめてサンプル服に使おうと残糸をつないで編んだとき、この技で糸の命がつながるぞ、とひらめいたんです」
何色もの色糸を絵具のように撚り混ぜた奥深く美しい光沢。
残糸をつなぐために八橋さんが活用したのは、糸の節を取り除いてつなぐ際に使われる技でした。まず残糸の端の撚りをゆるめて、2本の細糸の状態に戻します。次につなぎたい残糸の端と端の先を絡ませて、再び糸をねじって撚ります。この撚り結びによって残糸どうしの継ぎ目がほぼ平らで、丈夫なつなぎ糸になるのです。
「何色もの残糸をつなぎ合せたカラフルなボーダーニットの次に挑戦したのがこの無地です。同じ色の残糸をつなぐだけでは糸量が確保できないので、4色の残糸のつなぎ糸を4本撚って絵具のように混ぜ、杢調の無地に編みました。
たとえばピンクの身生地はベージュ系、ピンク系、グレー系、白系の4色の残糸を撚って生まれた色です。袖口も4色の残糸を撚っていますから、1着に8色。撚った糸の色差で点描画のような奥行のある光沢が生まれたのも残糸の功名です」
このつなぎ残糸を長谷川商店の秘技、糸起毛で仕上げてあるので、すべすべなうえに軽くてふわふわ。膨らんだ糸が暖気をため込んでくれます。
縫い代がなくて着心地のよいホールガーメントニットの天竺編み。襟と裾、袖口だけは糸量の多いガーター編みにしてシルクのつやの陰影を一段深めることで、首元やお腹周り、手首をすっきり見せています。