古着や糸くずから生まれた、奥行きのある色合いと柔らかな風合いが魅力のヘリンボーンのコート。
リサイクルという言葉がわが国に広まるずっと前から、毛織物の名産地、愛知県の尾州地域では、ウールの糸くずや古着を針で梳いてわたに戻し、最後まで使い切る「反毛」の技術が培われてきました。
この先人の技を高め、繊細な色合いの毛織物をつくり上げているのが、昭和6年創業の中伝毛織です。ごらんのヘリンボーン柄を織りなす糸は、すべて反毛わたの再生ウール糸。さまざまな色の糸くずや古着を30色にも仕分けして反毛し、そのわたを絵具のように調合することで理想の色の糸をつくり上げるそうです。
「例えば『サックス』の薄グレーの糸には4色、水色の糸には10色の反毛わたを混ぜています。シックなヘリンボーン柄にやさしげな表情が加わっているのは、数色のわたの調合で微妙な色のにじみが生まれるから。協働する大和紡績さんの調合ひと筋50年の職人さんたちの腕のおかげです」(中伝毛織・山川貴弘さん)
リサイクルウールわたに強度を足すポリエステルわたを入れ込んで糸化。尾州で「毛七」と呼ばれる伝統の混率です。反毛すると繊維が短くなって硬い風合いになりやすいところ、糸の張りや織り速度を調整する中伝毛織の技で柔らかく織り上げてあります。