脳梗塞やがん、糖尿病、動脈硬化などのリスクは、細胞の老化が一因で高まります。野菜や果物の皮、種に含まれるポリフェノールには細胞の老化速度を抑える働きがあるそうです。
教える人今野裕之先生(ブレインケアクリニック医院長)
今野裕之先生
こんの・ひろゆき●ブレインケアクリニック医院長・医学博士。日本発のアルツハイマー認知症治療「リコード法」認定医。著書に『ボケない人の最強食事術』(青春出版社)。
ポリフェノールは体の老化対策だけでなく、認知症対策にも役立ちます。
人間は呼吸によって酸素を取り込み、体内の糖類や脂質などの栄養素をエネルギーに変換して生きています。酸素と栄養素が化学反応を起こす際、副産物として生み出されるのが「活性酸素」です(下図)。
ポリフェノールが細胞の
酸化(老化)を防ぐ。
活性酸素には強力な酸化力があります。酸化は例えるなら「サビつき」です。鉄がサビるともろくなるように、体の中が酸化すると細胞の働きが低下し、老化が始まります。活性酸素が過剰に増加すれば、 体内で酸化が進み、がん、糖尿病、動脈硬化、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす原因になります。
活性酸素の過剰な増加を防ぐために、私たちの体はつねに新しい「酵素」をつくり出し、活性酸素 を分解しています。つまり「抗酸化」しているのです。
しかし、加齢とともに酵素をつくる働きは低下し、抗酸化力も衰えます。60代になると、30代の半分以下の働きになるという研究報告もあります(※)。
体内で衰えていく抗酸化力を補うためには、抗酸化物質を食事から摂ることが大切です。抗酸化物質にはさまざまな種類がありますが、特に注目されているのが 「ポリフェノール」です。
ポリフェノールは、植物が過酷な環境で生き延びるためにつくり出した色素や苦味成分です。主に野菜や果物の皮、種に含まれていて、その数は4000種類を超えます。細胞の老化の速度を抑えたり、免疫力を上げたりと、働きはさまざまですが、近年の研究で認知症対策に役立つポリフェノールがあることがわかってきました。緑茶のカテキンや 、ウコンのクルクミン、米ぬかのフェルラ酸などです。
アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」「タウ」という異常なたんぱく質が脳に蓄積して、脳細胞に障害を起こし、記憶を司る海馬が縮むことで発症します(下写真)。
食物繊維はこんな食品に豊富に含まれています。
カテキン、クルクミン、フェルラ酸は、アミロイドβの蓄積を抑制し 、さらにカテキンにはタウの蓄積も防ぐ働きが報告されています。
ポリフェノールのほとんどは水溶性で体内にとどまることができません。毎日何回かに分けて摂ることをおすすめします。
※Y Niwa , K Ishimoto , T Kanoh. Blood (1990) 76 (4): 835–841.