食物繊維は、糖質や脂質の吸収を抑えて血糖値を上げにくくします。さらには、腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を整える働きもあります。しかし昨今、食生活の変化で食物繊維の摂取量は減少。さまざまな生活習慣病が増加しているそうです。
教える人青江誠一郎先生(大妻女子大学教授)
青江誠一郎先生
あおえ・せいいちろう●大妻女子大学家政学部食物学科教授。農学博士。日本食物繊維学会理事長。著書に「最強!毒出しごはん」(河出書房新社)。
食物繊維は腸内細菌を元気にし、生活習慣病を防いでくれます。
まずは下のグラフをごらんください。食物繊維の摂取量は、穀物の摂取不足に伴い、年々減少傾向にあります。その一方、厚生労働省は1995年以降、食物繊維を「積極的な摂取が生活習慣病の予防に重要」として、摂取基準を定めるほど評価するようになりました 。
日本人の食物繊維摂取量の推移。
日本食物繊維研究所会誌,1:3-12(1997)と「平成27年国民健康・栄養調査」および
「日本人の食事摂取基準(18〜64歳)」を元に編集部で作成。
その理由をご説明しましょう 。
食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。
水溶性食物繊維は、糖質や脂質の吸収を抑えて、血糖値を上げにくくします。さらには、腸内の善玉菌のエサになって腸内環境を整える働きもあります。雑穀に入っている大麦(押し麦やもち麦)や果物、海藻類などに豊富です。
不溶性食物繊維は、腸内の水分を吸収して便のかさを増やし、排便を促します。また、腸を刺激してぜん動運動を助け、便通を改善する役割もあります。雑穀全般やきのこ類、甲殻類などに豊富です 。
厚生労働省は、食物繊維の1日当りの目標摂取量を男性21g、女性18gに定めていますが(※1)、実際の1日の平均摂取量は男性14.9g、女性14.2gと、だいぶ不足しています。私 はこの不足分を、食物繊維が豊富な雑穀を白米に混ぜた、雑穀米で補給することをおすすめします 。
食物繊維はこんな食品に豊富に含まれています。
現在の日本人が食物繊維を最も多く摂っているのは「白米」です(※2)。ところが、白米に含まれる食物繊維は野菜や豆類ほど多くありません。それにもかかわらず、白米からの食物繊維の摂取量がいちばん多い理由は、私たちが主食として毎日食べているからです。雑穀を白米に混ぜて雑穀米として食べれば、いま以上に食物繊維が摂れ、不足分を補えるのです。
ただし、いくら食物繊維がたくさん摂れるからといっても、おいしくなければ毎日続けられません。最近は 味や食感を楽しむ雑穀も増えています。もちきびは甘くてコクのあることで知られ、もちあわはとろみが強くもっちりした食感があります。ご自分に合った雑穀を選んで、ぜひ主食として毎日食べてください 。
※1 「日本人の食事摂取基準」2020年版 18~64歳の目標摂取量。65歳以上は1g減。
※2 平成25年国民健康・栄養調査