免疫細胞は、ウイルスや細菌、がん細胞を攻撃して私たちの体を守ってくれる心強い味方。しかし、なにもしなければ歳とともに減っていき、40歳にはピーク時の半分になってしまうそうです。免疫細胞を増やすためには、どうしたらいいのでしょうか?
教える人田中芳明先生(朝倉医師会病院 院長特別補佐、久留米大学名誉教授)
田中芳明先生
たなか・よしあき●朝倉医師会病院 院長特別補佐、久留米大学名誉教授。医学博士。専門は栄養摂取による創傷治癒や免疫に関する臨床的研究。
免疫細胞はウイルスを撃退します。
「疫(病)から免れる」と書くように、免疫細胞は体内に侵入してきたウイルスや細菌といった外敵から、私たちの体を守る防衛隊の役割をしています。
下のイラストをごらんください。免疫細胞は2つのチームで構成されていて、二段構えでウイルスを迎え撃ちます。
免疫細胞は二段構えでウイルスを撃退する。
1つは「自然免疫チーム」。マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、好中球で構成され、外敵が体内に侵入するやいなや攻撃を仕掛ける、いわば「先兵隊」です。
2つめが、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞で構成される「獲得免疫チーム」。獲得免疫チームは過去に出会ったウイルスを記憶していて、ウイルス撃退に効果的な「抗体」という武器をつくり出し立ち向かいます。未知のウイルスには対抗できませんが、2度目の襲来では確実にウイルスを弱体化して、仕留めてくれるのです。この仕組みを利用して「予防ワクチン」が開発されました。
アミノ酸は免疫細胞の原料になります。
免疫細胞をつくり出す力は、加齢とともに低下していきます。下のグラフを見ていただけると分かるように、免疫細胞の数は20歳でピークを迎えると、40歳で半減し、70歳では10分の1まで減ってしまいます。体内の免疫細胞の数が少ない、ということは免疫力が弱いということです。手ごわいウイルスに立ち向かうために、高齢者は少なくなってしまった免疫細胞たちを増やし、鍛える必要があります。
そのためには、どうすればいいのか。
70歳の免疫細胞の数は20歳の10分の1まで低下する。
東京化学同人『現代化学』多田富雄・奥村康より
「アミノ酸」を摂ることです。免疫細胞はたんぱく質で構成されており、そのたんぱく質はアミノ酸からつくられます。つまり、アミノ酸は免疫細胞の原料です。アミノ酸を積極的に摂ることで、免疫力を高めることができるのです。さらに、アミノ酸には「自然免疫チーム」のマクロファージや、「獲得免疫チーム」全員のエネルギー源となり、それらを活性化させる働きもあります。免疫細胞をつくる力が弱まってきた高齢者にとって、アミノ酸は必要不可欠な栄養成分と言えるのです。