これだけは知っておきたいカルシウムの知識

「骨は生きている限り再生しますから、カルシウムは毎日摂りましょう」
鈴木敦詞先生

すずき・あつし/藤田医科大学医学部教授、医学博士、日本骨粗鬆症学会理事。

 骨は「破骨細胞」が壊し、「骨芽細胞」が再生するという新陳代謝をつねに繰り返して、生まれ変わっています。しかし、加齢で再生が破壊のスピードに追いつかなくなると、骨はもろくなり、骨粗しょう症になります。

画像提供:浜松医科大学・井上哲郎名誉教授

 日本の骨粗しょう症の患者数は1280万人、そのうち76%の980万人が女性です。女性が発症しやすい原因は閉経による女性ホルモンの減少です。女性ホルモンのエストロゲンは破骨細胞の働きを抑制しているので、エストロゲンが減ると破骨細胞が骨芽細胞の働きを上回り、骨量が急激に減っていくのです(下グラフ参照)。いまや60代女性の3人に1人が骨粗しょう症であり、寝たきりの一因になる「大腿骨の骨折数」も女性が圧倒的に多くなっています。

閉経による女性ホルモンの減少で50歳をすぎると
骨量は急激に減る。

資料/骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル第2版(ライフサイエンス出版 2014年)

 骨粗しょう症の予防・治療で特に重要なのは食事です。代表的な栄養素はカルシウムで、厚生労働省は60代女性の1日最低必要量は550mgだとしていますが、実際はその最低必要量に約50mg不足していることがわかっています(「国民健康・栄養調査(平成28年)」)。意識的にカルシウムを摂らなければ、十分量は摂取できません。
 体内のカルシウムの99%は骨や歯の成分になりますが、残りの1%は血液や筋肉に存在し、心臓の収縮や脳細胞の情報伝達など、身体機能を維持する働きをしています。血液や筋肉内のカルシウム濃度は通常、一定に保たれていますが、摂取量が不足すると、骨に蓄積されているカルシウムで補おうとするため、骨がやせ細り、骨粗しょう症のリスクが高まってしまいます。
 カルシウムは体内での吸収率が低く、体にためることができないので毎日摂る必要があります。

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