“カルシウム・パラドックス”を防ぐ
賢いカルシウムの摂り方
イラスト/日野優子
カルシウム、十分に摂れていますか?
カルシウム不足は骨をもろくしますし、
慢性的なカルシウム不足は
危険な“カルシウム・パラドックス”を引き起こします。
これまで300人以上の骨密度の相談を受けてきた
管理栄養士で骨密度改善サポーターの内田祐子さんに
賢いカルシウムの摂り方を聞きました。

教えてくれる人
内田祐子先生
うちだ・ゆうこ●日本栄養大学卒業後、クリニック、保健センターで管理栄養士として勤務。その後骨密度検診業務に従事。7年でのべ2200人あまりの骨密度測定を経験。これまでに、福祉施設などで20代から80代、300人以上の女性の骨密度の悩み相談を受ける。現在は骨トレ体験講座、オンラインセミナーも実施している。
足りないのに増える? “カルシウム・パラドックス”とは。
体内のカルシウムの約99%は骨や歯にあります。残りの約1%は血液・体液・細胞などにあり、生命の維持に欠かせない重要な働きをしています。
カルシウムが不足すると、体は生命を維持するために、骨の中のカルシウムを血液に送り出す働きをする副甲状腺ホルモンを分泌して、骨からカルシウムを補給します。ところがカルシウム不足が慢性化すると、副甲状腺ホルモンが分泌され続けてしまいます。必要以上にカルシウムが骨から血液に送り出されると、脳や血管など、本来あってはいけないところにまでカルシウムが蓄積されてしまいます。
カルシウム不足が、逆に体内のカルシウムを増やしてしまうこの現象を“カルシウム・パラドックス”と呼びます。たとえば、カルシウムがすい臓に溜まるとインスリンの分泌が悪くなって糖尿病を、血管に溜まると血管の壁が硬くなって動脈硬化を招く原因になりますから要注意です。
カルシウムの賢い摂り方。
とくにカルシウム不足に気をつけていただきたいのは、50代以上の女性です。
「カルシウムの貯蔵庫」とも言える骨に含まれるカルシウムの量は、20歳頃に最大値となり、ほぼ30年間変わりません。ところが、50歳以降は加齢によって骨のカルシウムが減りますし、とくに女性の場合、閉経後は骨をつくるよう指令していた女性ホルモンが急速に減ってしまうために、骨のカルシウムが激減してしまうのです。
カルシウム不足を防ぐ一番の方法は、こまめにカルシウム豊富な食べ物を摂ること。カルシウムは体に吸収されづらい栄養素で、一度にたくさん摂ってもほとんどが体外に排出されてしまうからです。さらにマグネシウムやビタミンDと一緒に摂ると、効率よくカルシウムを吸収することができます。
おすすめの食材は、いわしとさばです。カルシウム(いわし1尾100gでカルシウム量は74㎎)だけでなく、マグネシウムとビタミンDが豊富に含まれています。
と言っても、魚料理は調理や後片付けに手間がかかりますので、ハードルが高く感じる人も少なくないと思います。そこで、手間も洗い物も少なく、簡単につくることができるいわしのパッククッキング(湯せん調理)のレシピをご紹介します。
ポリ袋で簡単調理できる
「いわしの酢煮」
材料
- いわし(大きめ/処理済み)…5尾
- 醤油…小さじ2
- みりん…小さじ2
- 酢…小さじ2
- 砂糖…小さじ1
- 片栗粉…小さじ1
- すりおろし生姜(チューブで可)…適量
- 耐熱性のポリ袋(熱に溶けるビニール袋やジップロックは不可)…2枚

作り方
- ①いわしを水で洗い、キッチンペーパーなどで水気をよくふき取る。
- ②ポリ袋を二重にし、片栗粉以外の調味料を入れて揉み混ぜた後、片栗粉を入れて混ぜる。
- ③ポリ袋にいわしを入れて空気を抜き、上部を結ぶ。いわしが袋を突き破らないようそっと入れること。
- ④鍋でお湯を沸かして沸騰直前の状態になったら弱火にし、③を入れて弱火のまま20分加熱する。

骨密度検査も有効です。
定期的に骨密度検査を受けて自分の状態を知ることも、カルシウム不足を防ぐことにつながります。骨密度が変化しやすい閉経の前後は、ぜひ測っておきたタイミングです。50歳以降は3年に1度の検査をおすすめします。
ライター/小久保よしの