名医が伝授する
元気になる腸活法!
腸を健康な状態に保つのは、
長寿の秘訣のひとつだといわれています。
腸活が大切な理由と
普段の食事に手軽に取り入れられる腸活スープのレシピを
『結局、腸が9割』著者で、消化器専門医の川本徹先生にお伺いしました。
教えてくれる人
川本徹先生
かわもと・とおる●みなと芝クリニック名誉院長。消化器専門医。患者の症状に対し全体と細部の両方からアプローチする「森を見て木を見る」診療がモットー。著書に『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム)がある。
健康の9割は腸から
体の健康の9割が腸に関係しているのはご存じですか?
「腸の状態が全身の健康をほとんど担っている」といっても、過言ではありません。
腸の中は、およそ100兆個の菌がすみ、菌全体を「腸内細菌」と呼びます。腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌の3種類の菌に分けられます。
- ・善玉菌………
- 消化吸収を助ける。免疫機能を正常にする。ぜんどう運動を促進する働きがある。代表的な菌はビフィズス菌、乳酸菌。全身の健康の9割を担う。
- ・悪玉菌………
- 毒素や発がん物質をつくる。健康を阻害する体に悪い菌。
- ・日和見菌……
- 菌によって働きはさまざま。健康な時はなにもしないが、体が弱ったときに悪い働きをする菌もいる。
善玉菌は増やしたほうが体によいといったイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。
実際そのとおりで、善玉菌が腸の中で増えると、腸のぜんどう運動が活発になり、便通がよくなります。ぜんどう運動とは、入ってきた食べ物を分解、消化吸収し、さらに便をつくっていらないものを排出するために欠かせない動きです。
便通がよくなると、増えてきた悪玉菌は排泄され、腸内環境がよくなります。
善玉菌を増やすことで、体全体に次のような良い効果が生まれます。
善玉菌が増えることで得られる体への6つの効果
- ①腸のぜんどう運動が活発になり、便秘解消。
- ②腸から9割のセロトニンが出る。うつ症状の予防。
- ③がんや生活習慣病の予防。
- ④アレルギー症状、アトピーの改善。
- ⑤細菌やウィルスの侵入をブロックする(感染症等の予防)。
- ⑥代謝がよくなり、太りにくくなる。
近年の研究で、セロトニンは8~9割が腸でつくられることがわかっています。
セロトニンとは、ポジティブで前向きな気持ちにさせてくれるホルモンで、“幸せホルモン”と呼ばれます。うつ症状の人の腸内は、セロトニンが少ないため、怒りやすい、イライラするなど精神が不安定な状態になると考えられています。うつ症状の人は、便秘の人が多いなど、腸内環境のよくない人が多いのです。
腸は全身の健康やメンタルの状態に深くかかわっています。腸活をして腸内環境をととのえることは、さまざまな病気から体を守ることになるのです。
ところが、ひと昔前と比べて、現代の日本人は大腸劣化が起きていると言われます。
戦後期の日本人は、いまの2倍うんちをしていた!?
食の欧米化や不規則な食生活、ストレス過多、睡眠不足、……。
腸内環境が悪くなる要因はさまざまですが、なかでも、腸内環境にもっとも影響するのは食生活です。
戦後、食べ物が少ない時代に、日本人は食物繊維をいまの2倍以上食べていました。食物繊維は、ぜんどう運動を促し、腸の動きを活発にします。当然、戦後の日本人の便の量はいまよりも多くなります。現代日本人の平均は100グラム程度ですが、戦後は200グラム。もっと貧しい戦時中の時期は400グラムぐらいあったと言われます。それぐらいひと昔前の日本人は食物繊維をとっていたと考えられるのです。戦時中から、質素でありながらも野菜やお米を使う和食から日本人は多くの食物繊維をとっていたのです。
食物繊維をあまりとらなくなったために、現代の日本人は、60歳以降になると、腸内にある善玉菌がガクンと減ってしまいます。成人年齢である20歳~50歳までを100とすると、60歳には30ぐらいまで減ります。そのため、60 歳以降になると、便秘になる人が増えるのです。
便秘を自覚している人(人口千人対)
厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況より作図
ヨーグルトよりも水溶性食物繊維が良い理由
ヨーグルトは一般的に腸によいといわれていますが、実は腸まで届くヨーグルトの菌は数パーセント。その多くは胃酸で死滅してしまいます。まったく役目がないわけではありませんが、思うほどの効果は得られません。
食物繊維であれば、腸内環境によい善玉菌を増やせます。
食物繊維は、野菜の中でも主に根菜類や海藻に含まれます。水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維があり、どちらも一つの食材の中に含まれています。
とり込まれた食物繊維はぜんどう運動、排便を促しますが、腸によりよいのは水溶性食物繊維の方。善玉菌が好んで食べてくれるからです。
水溶性食物繊維が含まれる代表的な食材は、オクラや山芋、長いも、なめこ、わかめや昆布、めかぶ、もずくといったネバネバ系の食材です。また、にんじんやごぼう、切干大根といった根菜類も水溶性食物繊維が豊富です。
「腸のクリーニングスープ」のつくり方
水溶性食物繊維を効率的にとることができるスープを紹介します。私が栄養士さんと共同開発、考案した「腸のクリーニングスープ」です。野菜がたっぷり入っています。切って茹でるだけの簡単なスープです。
便通を良くしたいときは、朝に食べるといいでしょう。ぜんどう運動を促します。
また、体重や高血糖が気になる方は、朝、昼、晩時間帯を問わずに食べておくといいでしょう。とくに次の食事でカロリーの高いものを食べるときは、あらかじめ食物繊維をとっておくと、食べた油や糖を吸収されにくくしてくれます。
食欲を抑えてくれる上に腹持ちもよいので、ダイエット食として夜食べるのもおすすめです。
味噌を入れてお味噌汁にしても良いです。他の野菜やつくねを追加したり、冷製にしたり、様々なアレンジも可能です。
腸をクリーニングし、すっきり気持ちよく過ごすために、試してみてください。
「腸のクリーニングスープ」の
つくり方
材料(2人分)
ごま油…小さじ1
しょうゆ…小さじ2
塩…少々
Ⓐ
にんじん…1/3本(50g)
ごぼう…1/3本(50g)
しいたけ…2個
こんにゃく…50g
Ⓑ
オクラ…4本
出汁…300ml(粉末だし+水300mlでもOK)
作り方
①ごぼうの皮をこそげ落とし、しいたけの軸をとる。オクラはガクをとる。
②野菜、こんにゃくをすべて食べやすい大きさに切る。こんにゃくはアクをとる。
③鍋にごま油を引き、Ⓐ を加えて弱火で焦げないように5分ほど炒める。
④Ⓑを加えて沸騰したら、弱火にして3分ほど煮る。
⑤しょうゆと塩を加えて味をととのえる。