青魚を食べて
脳の老化速度を遅らせる!?
神経機能が低下し、認知機能が衰えていくことは、
歳をとれば誰にも起こりうることです。
青魚に多く含まれる「DHA、EPA」は、脳細胞をしなやかにする知的栄養成分です。
青魚を食べる日を増やし、食生活を改善しましよう。
教えてくれる人
渡辺志朗先生
わたなべ・しろう●富山大学和漢医薬学総合研究所准教授。日本脂質栄養学評議員。
DHA、EPAを摂ることで脳細胞は柔らかくなり、シナプスの働きが活性化します。
脂質を構成する「多価不飽和脂肪酸」は、人の体の中ではつくることができないので「必須脂肪酸」と呼ばれています。DHA、EPAは必須脂肪酸の中の「オメガ3脂肪酸」に分類され、主にマグロやいわし、サバなどの青魚に多く含まれています(下図)。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は体内でつくれない必須脂肪酸。
DHAは脳の「血液脳関門」という関所を通過できる成分です。ここを通過したDHAは、脳細胞にまで届き、細胞膜を柔らかくします。その結果、情報を伝える神経伝達物質の受け渡し場所であるシナプスの働きが活性化します(下図)。
DHAは血液脳関門を通過して、脳細胞に届く。
Nguyenらネイチャー誌509(2014)等をもとに編集部で作成。
つまり、情報を伝える神経伝達物質が「声」だとすれば、DHAはこの声が大きく聞こえるように「耳」の感度を上げるということです。加齢とともに神経の機能は低下すると考えられていますが、DHAを摂ることによって脳細胞が活発に働けば、脳の老化のスピードを鈍化させることができるのです。
一方、EPAは血管をしなやかにし、血流をスムーズにする働きがあります。血栓をできにくくし、認知症の原因の2割と言われている脳血管性認知症の対策としても期待できます。
必須脂肪酸には、オメガ3脂肪酸の他に「オメガ6脂肪酸」があります。オメガ6脂肪酸は、揚げ物に使われるサラダ油や牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類の脂など、今日の日本人の食生活の中心となるものに含まれています。肉類は「飽和脂肪酸」に分類されますが、実はその脂には、オメガ脂肪酸も入っているのです。
最近、このオメガ6脂肪酸の過剰摂取が問題となってきました。オメガ6脂肪酸が過剰に摂取され、オメガ3脂肪酸が少なくなると、動脈硬化のリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすくするとわかったからです。
現在、日本人のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取バランスは1対4ほどですが、日本脂質栄養学会では1対2になることを推奨しています。そのためには、もっと魚(オメガ3脂肪酸)を食べる日を増やし、揚げ物や肉(オメガ6脂肪酸)を減らすなど、食生活の改善が必要です。