通販生活×あすのば 入学準備金カンパ

新入学で必要なランドセルや制服が買えずに不安を抱えている子どもたちに、一口2000円のカンパをお願できませんか?
2016年冬号から公益財団法人「あすのば」さんとタッグを組んではじめたこの企画は、今年で4年めを迎えました。

カンパのお申し込み

通販生活×あすのば 2020年度入学準備金カンパ

ランドセルがないから、明日の入学式に行けない――。
2009年に初めてわが国の子どもの貧困率が発表されてから、子どもたちの困っている現実が少しずつ伝わるようになりました。
政府も策を講じていますが、いまだわが国の子どもの貧困率は13.9%。
およそ7人に1人の子どもがお金のことでつらさを抱えています。
本年も、新入学に必要なランドセルや制服が買えず不安を抱えている子どもたちへ、「入学おめでとう」のエールを込めたカンパをお願いいたします。


入学準備金カンパを受け取った子どもとお母さんたちに会いに行きました。
「ランドセルありがとう。学校、たのしいです」

「ありがとうなんて言わなくていいよ。元気に過ごしてね」
毎年カンパを送ってくださる読者の多くが、そう思ってくださっていると思います。
一方で、カンパを受け取った子どもとお母さんたちからは、
毎年たくさんのお礼の手紙が届きます。
この夏、皆さんのカンパが力になったという3組の子どもたちと保護者を訪ねて、
入学準備金を申込んだいきさつをうかがいました。※文中は仮名です。


「このお金はただのお金じゃなくて、誰かとつながっているお金。だから元気になれるんです」岸本春香さん(九州・沖縄地方在住)

 待ち合せの原っぱにやってきたのは、岸本優斗くん(9歳)と文斗くん(7歳)の兄弟です。そろってスポーツが得意で運動会ではリレーの選手。お兄ちゃんの優斗くんはバッタ捕りが得意な虫博士です。

 ビニールカバーが掛けられた青いランドセルは、2つともまだピカピカしていました。
「文斗は今年の春、お兄ちゃんは2年前にあすのばさんの入学準備金をいただいて、このランドセルを買いました。2人ともいつも走り回っていますけど、ランドセルはだいじに使っています」

 駆けっこをはじめた2人を見守るお母さんの春香さんは37歳。この夏から接客業のパートに就き、いまは試用期間中。3ヵ月後の正社員採用を目指しています。
「離婚前から体調を崩して通院していたので、なかなか定職に就けませんでした。臨時の仕事をしながら体調を少しずつ整えて、やっとここまで来られた感じです」

 岸本さんが離婚したのは、優斗くんが2歳、文斗くんが生後2ヵ月のとき。仕事を掛け持ちしてでも子どもたちを養うと決意していたそうですが、保育園の壁が岸本さんを阻みます。それまで専業主婦だったため入園の優先順位が低く(※1)、文斗くんの月齢で入れる認可保育園も少なく、職探しすらできない。元夫からの養育費もなくて、心も生活も追い込まれていったそうです。

「いちばん苦しかったときは役所の緊急食料支援を受けてしのぎました。お金の不安も大きかったけど、もっとつらかったのは寄り添ってくれる人がいなかったことです。人とのつながりが絶たれていたので、食料を届けてくださる方とちょっとお話できるだけでうれしかった」

 離婚して困っているお母さんによく投げつけられるのは、「だったら、別れないで我慢すればよかったじゃない」の言葉です。まじめで責任感が強いお母さんほど世間の言葉を先回りするように自分を責め、助けてほしいと言い出せないまま孤立していくことが多いのです。
 離婚の理由をうかがうと、「子どもたちのお父さんをわるく言いたくないから」と口をつぐむ岸本さんも、おそらくご自身で解決しようとされたのでしょう。

「母とおばが子育てを手伝うよと声を掛けてくれて、近くに引っ越してから少しずつ前を向けるようになりました。力になったのはおばがつくってくれたお弁当です。
手の込んだひじきや野菜の煮物を食べるたびに元気になれた。あすのばさんからいただいた入学準備金もお弁当と同じです。カンパしてくださった方たちの手とつながっている“温かいお金”のようで元気になれました。

 それと、私のようにこの入学準備金を受け取った人が5000人近くいるとうかがって、いまは仲間ができたような気がしています。顔は見えないけれど同じ気持ちで頑張っている人たちがいて、その頑張りを支えてくれる人もいるんだと知ることができた。子どもたちを育てていく力になっています」

(※1)シングルマザーなら保育園に入れる?

認可保育園の入園条件は市区町村によって異なるが、申請時にフルタイムの仕事に就いている人ほど必要度が高いとみなされ、当落の目安となるポイント数が高い傾向にある。岸本さんのように離婚するまで専業主婦(無職)だった場合、ポイントが低いため保育園にすぐ入れず、就職活動がままならないまま手近なパート職について、不安定な収入がつづくシングルマザーも多い。

「いまは乳がんの治療を受けながら働いています。この子が5年生になるまで踏んばりたい」幸田康子さん(九州・沖縄地方在住)

 次に訪ねた幸田康子さん(69歳)のお宅では、孫の蓮くん(9歳)が学童保育をお休みして待っていてくれました。学校楽しい? と蓮くんに聞くと、間髪をいれず、「楽しい! 友だちと休み時間に遊ぶのが楽しい。勉強はきらーい」。
「勉強もせんといかん」と康子さんが渋い顔をしても、蓮くんはニコニコ。つられて笑ってしまう康子さんとは、名コンビのようです。

「蓮が1歳7ヵ月のときからだからね。この間、ババと暮して8年になるねと言ったら、『長いこといるねえ』って。『老人と海』の会話みたいでしょう?」
 笑って話す康子さんですが、6月に乳がんの手術を受けたばかり。入院したときに蓮くんの一時預け費用がかさんだため、その後は通院だけで8回の抗がん剤治療を受けながら介護の仕事をつづけています。
「蓮が来るまでは喫茶店の厨房で働いてたけど、蓮が大きくなるまで働けるように60歳でホームヘルパーの資格を取ったんです。職安で養成講座を申込んだときは歳だからムリだって何度も門前払いされたけど、粘ってよかった。まだしばらくは働けるもの」

 蓮くんは、離れて暮す康子さんの息子さんの子どもです。蓮くんが1歳の頃に息子さんが離婚し、奥さんが蓮くんを引きとりましたが、ある日、夜間保育園から「蓮くんのママが5日間迎えにこない」と息子さんの元に連絡があって、康子さんが育てることになったそうです。

 体調がいいときの康子さんのお給料は、手取りで月に8万円ほど。これにわずかな年金を足した11万円ちょっとに、不足分の生活保護費を2000円~1万円だけ受給してやりくりする感じだと言います(※2)。
「2年前、あすのばさんの入学準備金のことを福祉の窓口で教えてもらったときは、子どもを2、3人抱えてもっと困っているママがいるかもしれないから遠慮すると言ったの。でも、決まったときはやっぱりうれしかったですよ。誰かがいたわってくれたお金だと思いました」

 じつは康子さんは、14年前に脳腫瘍を、6年前には糖尿病に起因する軽い脳梗塞を患うなど体にいくつも不安を抱えています。なぜ、生活保護に全額を頼らずに働きつづけているのでしょうか。

「体が動くかぎりは働いて、社会に貢献しながらこの子を育てたい気持ちもあるけれど、もうひとつの大きな理由は車です。田舎では食料を買うにも蓮を迎えに行くにも、車がないと動けません。いまは会社が役所にかけあって社用車を通勤の範疇で使えるようにしてもらっているけど、仕事を辞めて生活保護だけになったら車が使えなくなります。
 車は贅沢品と言うけど、ボロボロの中古車でも走ればいいんです。地域によっては、車を取り上げられるのは足をもがれるのと同じことだと国にわかってほしい」

 康子さんの当面の目標は、あと2年。蓮くんがちょっと遠くても1人で出掛けられるようになるまでは、車のために踏んばって働くとおっしゃいます。
「蓮が早く自立できるように、3年生になってからお風呂も1人で入らせているけど、『ババ、髪洗うから見てて』って呼ばれてしまう(笑)。まだ甘えたいんだね」

 康子さんは、いまも蓮くんを置いたまま消えてしまった蓮くんのママのことを心配しています。
「まだ若かったから、お金のやりくりも子育ても1人で大変だったと思う。あすのばさんの支援のように、ちょっとだけ支えてもらえる場所があったら、今頃まだ蓮と暮せていたんじゃないかって、ときどき考えるんです」

(※2)生活保護を受けながら働くと…

生活保護を受給する場合、原則として福祉事務所に毎月収入を申告し、保護費から収入分が減額される。幸田さんの場合、家賃込みで約12万円ほどが生活保護費で、ここから勤労収入約8万円と年金収入約3万円が引かれ、保護費の振込みが1万円ほどになる計算。ただし、収入の一部は就労に必要な経費として控除されるため、幸田さんは「体はきついけど、働いたほうが家計も少しラク」とおっしゃる。

「働ける体があればどうにかなると頑張ってきたけれど、災害に遭うとは思いもしませんでした」栗原紀子さん(中国・四国地方在住)

 最後におじゃましたのは、昨年7月の西日本豪雨で被災した栗原紀子さん(47歳)のお宅です。
70代のご両親と高校3年生、1年生のお子さんと暮す築37年の木造住宅は近くの川が氾濫し、2階の天袋の下まで浸水。災害ローンを組んで今年3月にリフォームを終え、避難先の住宅からやっと戻って来たばかりだったそうですが、
「ついこの間、河川の改修工事が決まって市から立ち退きの通告がきたんです。下の美乃里が高校受験を控えていたので、少しでも早く家で勉強させてあげたくて急いだのが裏目に出てしまったかな。リフォーム代は市が返してくれると言うんですけど、そのお金で新築の家を建てるのはなかなかきびしい(笑)」

 苦境も明るく話す紀子さんは、これまでも2人のお子さんを優先した生活をずっとつづけてこられました。
「上のお兄ちゃんが3歳、美乃里が1歳のときに離婚しました。元夫は酔うと気が大きくなる人で、包丁を持ち出したり、子どもの前で首を絞められて気を失ったこともあります。下の子にビールを掛けられたとき、『この先、子どもに暴力が向かったら、私は子どもを守るためにこの人を殺してしまうかもしれない』と思ったんです。それで両方の親を呼んでアザだらけの体を見せて、離婚してもらいました」

 慰謝料はなし。養育費は元夫に恋人ができた1年後から支払われなくなりました。紀子さんは介護ヘルパーの資格をとって、ほぼ休まずに働いてきたそうです。
「平日は夕方5時まで働いてから、実家に子どもを預けてもう1つのヘルパーの登録所の仕事をして、土日は夜勤も入れて。夜勤だと手当てがつくんです。翌朝、子どもを迎えに行って、お風呂だけ入って寝ないまま公園に連れていって、1日遊んで、月曜からまた仕事……という生活を6年くらいつづけていました」

 お子さんを預けに来るたびに痩せていく紀子さんを見かねて、ご両親が同居をすすめたのが10年前。実家暮しになって児童扶養手当(※3)が止まり、生活費も入れていたため、家計はあまりラクにはならなかったそうですが、月収23~24万円の中からお子さんの進学のために節約を重ねて貯金してきたと言います。

「やっと見通しが立ってきたかなと思ったらこの災害ですから、参っちゃいました(笑)。2年前にお兄ちゃんが高校に入学したときはお金を準備できたけど、今回は家財道具の購入費もかさんでかなりきつかったので、あすのばさんの入学準備金には助けられました。いまの高校って制服以外にも学校指定の辞書とか靴とか教材とかことごとくお金がかかるんですよ。美乃里のときは合計で20万円くらい出ていったので、この5万円はホントに心強かったです」

 もう一つ、紀子さんには今回の入学準備金でうれしいことがあったとおっしゃいます。
「4年ほどヘルパーで通っているお宅で、うかがうたびに通販生活を見せてくれるおばあちゃんがいるんです。この間、ポロッと『じつはこんどカンパのことで通販生活さんが取材に来られるんよ』って言ったら、そのおばあちゃんもカンパしてくださっていたみたいで、2人して『えーっ!』って(笑)。
 じゃあ、○○さんのお金もウチに来たんよ、ありがとうね、とお礼を言ったら、『私が出したお金なんて知れとるけど、全国の人から少しずつ集まれば大きなお金になるからね。小さなお金が生きたお金になってくれてうれしいわ』ってすごくよろこんでくださいました。

 今回、わたしたちがいただいた5万円の中には、おばあちゃんのように、たくさんの方の気持ちがこもっているんですよね。お一人お一人にありがとうございますとお伝えしたいです」

(※3)児童扶養手当がもらえないことがある。

児童扶養手当は、ひとり親の生活支援目的で支給されている国の手当。所得と子どもの人数によって支給額が変わり、子ども1人の家庭で年収160万円までなら満額の月4万2910円が支給される。一方で同居する祖父母の所得も基準に含まれるため、同居を始めた当時、お父さんが現役で働いていた栗原さんは、ご両親とは家計が別であっても「世帯に十分な所得がある」とみなされて、児童扶養手当が受けられなくなった。

専門家に聞く

子どもの貧困を放置すると、どのような影響があるのですか?

「調査では困窮層の子どもほど授業についていけず、4人に1人がいじめにあっています。将来まで深い影を落とす可能性が高いのです」

首都大学東京教授/子ども・若者貧困研究センター長
阿部 彩さん

 2016年に東京都から委託を受けて私たちの研究室が行なった「子供の生活実態調査」(下参照)では、貧困が子どもの成長に及ぼす影響が明らかになりました。
 たとえば「給食以外で野菜を食べるか?」の問いに対しては、一般層の子どもで「週に2~3日以下」と回答したのは8.2%でしたが、困窮層の子どもは2倍以上に当る19.6%。学習面では、通常の授業が「あまりわからない」「わからないことが多い」「ほとんどわからない」と回答した一般層の子どもは10.9%だったのに対して、困窮層は28.7%で、ほぼ3倍にのぼります(ともに小学5年生の回答)。
 いじめにあったことがある小学5年生は、困窮層が25.7%(一般層は15.1%)。抑うつ傾向は成長するにつれて高まり、困窮層の中学2年生の30.9%(一般層は20.1%)が抑うつ状態にあります。加えて自己肯定感の低さ、幸福度の低さなど、貧困が子どもの心身の成長に落とす影は挙げればキリがありません。
 では、貧困の子どもはどれくらいいるのでしょうか。
 厚生労働省が『平成28年国民生活基礎調査』に基づいて発表した子どもの貧困率は、13.9%。また、私たちの調査では、回答に基づいていちばん経済状況が厳しい困窮層の子どもを6~7%、その次に厳しい周辺層の子どもを15%と定義して分析を行ないました。

「私の周りにはいないけど、本当にそんなに困っている子どもがいるの?」という声も聞きますが、現代の貧困は目に見えにくいのです。ファストファッションや100円ショップの普及で間に合せのものなら手に入りますし、たとえば私がホームレスでも、マンガ喫茶でシャワーを浴びて備えつけの洗濯乾燥機で洗った服を着れば、この状態でここへ来られます。昔の貧困のようにボロボロの服は着ていなくても、歯医者に行けなかったり、電気料金が払えていなかったり、安価なカップ麺だけの生活をつづけている子どもが身近にいるはずなのです。

 貧困の家庭が抱えている困窮はそれぞれ異なりますから、この入学準備金のように使い道に制約がないお金は有益です。よく耳にする「現金を渡すと親が余計なものに使うのではないか?」という意見は、貧困でない人たちの傲慢です。貧困であってもなくても、ほとんどの親は自分の子どもにとっていちばんいいものにお金を使います。その子のつらさは親がいちばんわかっていて、一緒につらい思いをしているからです。
 わが子がいちばん必要なものを買えることで、日ごろ子どもに我慢をさせている親御さんの気持ちが少しラクになる。お父さん、お母さんがラクになった様子をみて子どもがホッとする。そこがだいじなのです。

あべ・あや●貧困、社会的排除、社会保障論を専門とし、2011~2013年まで内閣官房社会的包摂推進室企画官を務める。近著に『貧困を救えない国 日本』(PHP新書・鈴木大介さんと共著)。

「子供の生活実態調査」

 全国に先駆けて2016年に東京都が行なった調査。小学5年生、中学2年生、16~17歳の子どもとその保護者を対象とし、1万9929世帯へ郵送で調査した(有効回答数は約42%)。
 生活困難度については、「低所得」「家計のひっ迫」「子どもの体験や所有物の欠如」の3つの要素に基づいて分類し、2つ以上該当する子どもを<困窮層>、1つを<周辺層>、それ以外を<一般層>として、経済状況が子どもに与える影響を分析している。

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