「公益財団法人あすのば」は、小中高の入学時などに必要な費用が不足し、経済的に困窮している世帯に「あすのば入学・新生活応援給付金」を届けています。
「通販生活」では2016年から読者のみなさんにカンパを呼びかけ、その結果、多くの子どもたちがランドセルや制服などを手にしました。一方で一時的な支援では、できることに限りがあることもわかってきました。
いま困難を抱える子どもたちが新生活を笑顔で迎えられるよう、1口2,000円からのカンパをお願いいたします。
カンパを受けとった
子どもたちがいま、
考えていること。
「あすのば」は、2023年までに入学準備支援金の給付を受けた1万3775世帯に対してアンケート調査を実施し、約6000人の保護者や子ども・若者からの回答を得ました。カンパを受けて学校生活を始めた子どもたちは、いまだにたくさんの悩みや問題を抱えていました。
修学旅行に行ったことがありません。
生活保護を受けても毎日カツカツです。
(愛知県/中学3年/女性)
母が癌の治療をしていて生活保護を受けています。はっきり言っていまの生活保護の金額では生活するだけで、余分なお金はありません。おこづかいも、もらったことがありません。修学旅行もお金がなくて、小学校のときも中学校のときも行っていません。制服もほとんど、おさがりです。生活保護費は一度ちゃんと見直してほしいと思いました。母は、いただけるだけでもありがたいと言っていますが、実際は毎日カツカツです。
収入は祖父母の年金だけ。
スマホが買えず、仲間はずれにされています。
(広島県/定時制高校1年/女性)
いま、困っていることは、家にあまりお金がなく、スマホを買ってもらえないことです。スマホがなくても最低限生活はできますが、学校ではスマホを持っている子がほとんどで、友だちに持っていないととても言いにくいし、仲間はずれにもされています。時代遅れと言われたこともあります。両親がいないので、収入は祖父母の年金だけ。ほかの子みたいにほしいものを買ってもらえないし、おしゃれなものも買ってもらえません。
朝食は食べず、シャワーは週1回、
学校で髪にはさわりません。
(神奈川県/中学1年/女性)
離婚後、母は一生懸命働いて、私を育ててくれています。でも物価高で食費が足りないため、毎日朝食は抜いて学校に行きます。学校が休みになると昼食も抜くことがあります。シャワーは週に1回と決めています。髪の毛の汚れが目立ってこないように、絶対に髪をさわらないようにしています。行政の子育て支援には年収制限があって、制限ギリギリの私の家では、きりつめてやっと生きていける状態です。特に中高に入ると部活や体験学習など、学外の活動などもしたいので、お金がかかって生活がますます大変です。
私が生活保護から外れてから、
母がごはんを食べている姿をあまり見ません。
(大阪府/専門・各種学校1年/女性)
うちの家族は生活保護を受けて生活しています。母は障害があり働けません。私は専門学校1年生で、生活保護からは世帯分離(※)しなければならず、母と高校1年生の弟の2人分の保護費で3人で暮しているため、生活にまったく余裕がなく、母がごはんを食べている姿をあまり見ません。お風呂も数日に一度、でも私と弟には毎日入らせてくれます。専門学生・大学生も、生活保護をなんとか受給できるようにしてもらえないでしょうか? アルバイトをたくさんすると学生支援機構の奨学金を満額借りられなくなり、学費が払えなくなります。奨学金の返済も始まり、いまのアルバイトの賃金では、親子ともに負のループに陥っています。
※世帯分離=生活保護を受けている世帯の子どもが大学・短大・専門学校に進学した場合、その子どもの分の生活費や医療費が生活保護費からは支給されなくなる。
生活が苦しいので、
給食を多めに食べています。
(滋賀県/中学1年/女性)
私は赤ちゃんのときから原因不明の虚弱体質で、40~41度の熱が続くことがよくあります。新型コロナがうつると、学校も長く休まないといけないので、すごく気をつけて生活しています。でも、国がウィズコロナに変えてから、マスクや消毒をしない人が増えてすごく怖いです。
それに税金やいろんな物の値段が上がって、生活が苦しいです。お金がかかるので部活も諦めたし、給食を多めに食べたりしています。支援団体さんのご支援が私の家では救いですが、ずっと生活が苦しいのに、たまに少し支援金をもらっても生きていけません。もっとみんなが普通に安心して生活できるようにしてほしいです。
サンタさんにたのもうと思います。
(大阪府/小学5年/女性)
おかあさんはがんばってお仕事をして、バスケットボールを習いに行かせてくれてます。シューズがキツくなって、ボロボロになってきましたが、お母さんにあたらしいのをかってほしい!と、なかなかいえません。サンタさんにたのもうと思ってます。
生理用ナプキンを配布してほしい。
(沖縄県/高校1年/女性)
奨学金の種類や、給付金額をもう少し増やしてほしいです。また、3ヵ月に1回でもいいので、女性用ナプキン等の配布をしてほしい。私の家は女性が3人いるので、ナプキン等の生理用品の消費が激しいです。
看護学校に通いアルバイトをして、
病気の母と認知症の祖父母を支えています。
(東海地方/看護学校2年/女性)
私は母と祖父母の4人で暮しています。母は私が小学生の頃から障害があって働けず、その後、病気になり入院が長く続きました。母に付き添い、看護・介護してきたため、中学にも高校にもほとんど行っていません。アルバイトもしていたので、高校もギリギリで卒業しました。学費が安く、母の面倒も見られる看護学校に進みましたが、母の障害年金と祖父母の年金だけでは苦しいので、アルバイトを4つかけもちして、実質、私が家族の生活を支えています。
貸与型と給付型の奨学金を受けてはいますが、看護学校は入学費用こそ安かったものの、看護服は高く、靴も定期的に購入しなければならず出費がかさみます。特に参考書は高価で頻繁に買えないため、友人からはやる気がないと思われてしまっています。また、学費優先で選んだため学校が遠く、通学時間が長いうえにバイトも忙しくて、勉強時間を十分に確保できません。
年の離れた兄が2人いますが、それぞれ家庭をもっていて経済的援助はしてもらえません。アルバイトを入れすぎるあまり、体調を崩すことも多く、母の付き添いで行った病院で病気をもらうこともあり、医療費も負担になっています。婦人科の検査なども十分に受けられません。医療費を無料にしてほしいです。
お母さんたちが
考えていること。
給付金を受けた後も苦しい生活を強いられているのは、子どもたちだけではありませんでした。子どもの成長を見守りながら、お母さんも悩みを抱えています。
持続的な支援があれば、
もう少し普通の生活ができたのに。
(沖縄県/3人家族・母子世帯/40代)
母子での生活に加え、実父が倒れて緊急手術、介助が必要になり施設に入居。そのため、手続きや相談に参加するたびに仕事を休み、収入減に。娘は高校3年で、美容系の専門学校を希望していたのに、私を助けるために就職すると言い出しました。専門学校はいまじゃなくても行けるから、と。申し訳なく思いながらも本音は「よかった! 助かる!」です。
あすのばさんの給付金は本当に助かりました。新しい制服が買えたので娘も喜んでいました。でも、一時的な支援はその時だけの気休めで、貧困世帯は常に苦しい。お米が買えず、小麦粉で飢えをしのぎ、光熱費が払えず電気やガスを止められたことも。子どもは「大丈夫! 1週間食べなくても、電気なくても死なない!」と言ってくれます。持続的な支援があれば、もう少し普通の生活ができたのに。もう子どもも卒業。今さら行政や国に何も期待しない。
「なんで我慢しなきゃいけないの?」
と言われたことが忘れられません。
(栃木県/2人家族・母子世帯/50代)
何年か前、子どもに「なんで私は、○○ちゃんみたいにいろいろなところに出かけたり好きな物を自由に買ったりできないの? なんで我慢しなきゃいけないの?」と、泣きながら言われたことがいまでも忘れられません。それが一番辛かったです。あすのばさんから支援をいただいたときはほんとに助かりました。そのような支援、給付金がもっといろいろな形で増えたらいいと思います。
制服はリユースを探しています。
学用品を無料にしてほしいです。
(沖縄県/4人家族・母子世帯/40代)
学用品等、制服(夏服、冬服)、シューズや体育着を購入する費用がないです。夏服を購入しても秋には冬服を買わなくてはならないので経済的に負担です。リユース品を探しますが、探しに行く時間や交通費も大変です。
給食がない学校なので毎日弁当を作りますが、食費が給食費並みにかかります。昼食代などの支援や補助があれば助かります。栄養も昼食時にはあまりとれていません。給食のようにおかわりできず、弁当のおかずを買う費用がないです。
6000人の声から見えたもの――
専門家に聞く。
子どもたちの声は、
本当に届いているのでしょうか。
末冨芳さん
(日本大学文理学部教育学科教授)
すえとみ・かおり/1974年、山口県生まれ。2014年より、内閣府「子どもの貧困対策に関する有識者会議」に参画。
2023年に施行された「こども基本法」の第11条にはこうあります。
「国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」
今回の調査結果を見るに、貧困の当事者である子どもたちの声が本当に聞かれていると言えるでしょうか。回答した6000人の背後には、何十万人もの子どもたちの声が隠されているのです。
「子どもの貧困対策法」が交付された2013年。ちょうど二人目の子どもを宿していた私は、この国に生きる子どもが誰一人、おなかをすかせることのない、安心して暮せる日本にすることを目標としました。しかし、毎日朝食を食べていない小学生は36.7%、中学生は49.5%、入浴頻度が週4日以下の小中学生は12~13%もいます。衣食住に事欠き、苦しい生活を強いられる子どもたちが、10年以上経てもなお、まだこんなにいることに改めて衝撃を受けました。
もういい加減、おなかをすかせた子ども・若者をゼロにすることを実現させなければなりません。
努力しても貧困から抜け出せない。
格差は拡大しています。
宮本みち子さん
(千葉大学、放送大学名誉教授)
みやもと・みちこ/1947年、長野県生まれ。2012年より、内閣府「子ども・若者育成支援推進点検・評価会議」座長を務めた。
お母さんがダブルワークや労働時間を長くし、あるいは子どもがアルバイトを増やした結果、住民税非課税世帯の対象外とされたり、生活保護費が減額されたり、児童扶養手当、大学生では給付型奨学金が中止されることもあります。努力しても貧困から抜け出せないのです。
「子どもの貧困対策法」で、授業料の無償化は進んでいます。しかし、困窮する世帯の悩みは、増加する学習教材や、塾の必要を出せないことです。学校で勉強すればいいじゃないかといった反論がありますが、学校の授業だけではわからないという子どもたちの声が圧倒的に多い。また、10年前と大きく違うのはスマートフォンの普及です。買えないことで学校や部活の連絡を受けられない、仲間外れにされることもあるのです。
調査に協力した世帯のうち母子世帯は81.3%、平均年収は178万円と非常に低い。また、就業している若者は143人。貧困な状態で育った子どもたちは、働き始める年齢になっても、不安定就労や無業の状態から脱出できずにいます。この10年間の対策で平均的な貧困世帯にはある程度効果が出ました。一方で、格差が拡大し、本当に厳しい世帯に関しては効果がなかったと言わざるをえません。