ペリー荻野さんのドラマ批評

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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ふたがしら

2025/9/19公開

盗賊一味の駆け引きと騙し合いを描く痛快時代劇

「連続ドラマW ふたがしら」©オノ・ナツメ/小学館 ©2015WOWOW/ホリプロ

「平清盛」で大河ドラマ主役を演じた松山ケンイチと大衆演劇で時代劇を磨いた早乙女太一。ふたりが性格が違う盗賊のツートップとして、敵対する一味と激闘を繰り広げる新感覚盗賊エンタテインメント。原作は、オノ・ナツメの人気マンガ。脚本は劇団☆新感線の座付作家・中島かずき。監督は「ジョーカー・ゲーム」などで知られる入江悠。こう聞いただけで、面白くないはずはない!

「連続ドラマW ふたがしら」©オノ・ナツメ/小学館 ©2015WOWOW/ホリプロ

 物語は、盗賊一味の内部抗争から始まる。
 弁蔵(松山)は「俺に任しとけ!」「男がすたるだろ!」という熱血男だが、酒好きで喧嘩っ早いのが玉に瑕。一方、クールな宗次(早乙女)は、頭脳明晰な二枚目男。なぜか馬が合うふたりは人を「脅さず、殺さず、汚ねえ金を根こそぎいただく」掟を守る盗賊赤目一味だった。しかし、頭の辰五郎(國村隼)が「一味のことはふたりに任せた」と言って亡くなると、実権を握ったのは辰五郎の妻おこん(菜々緒)と内通した甚三郎(成宮寛貴)だった。残忍な盗みを始めた甚三郎に怒った弁蔵と宗次は、「俺たちゃ悪党だ。だが、俺たちの仕事に殺しはなしだ」「てっぺんを獲る」と宣言、赤目一党との対決を決意し、自分たちの一味を作るため、大坂に向かう。

「連続ドラマW ふたがしら」©オノ・ナツメ/小学館 ©2015WOWOW/ホリプロ

 もともと、松山が原作のファンで、劇団☆新感線の舞台で共演した早乙女との共演を熱望し、実現したという。松山は早乙女に対して「いてくれればなんとかなる最高の相棒」と絶大な信頼を寄せ、撮影中は「ごはんもほぼいっしょ」(早乙女)という名バディぶりだった。確かに熱血×クール、ふたりのバランスは絶妙だ。共演陣もくせ者が多く、蛇のような存在感を放つ成宮、ねっとりした濡れ場も入浴シーンもこなす菜々緒の謎めいた悪女っぷりもいい。第二話には、旅の途中のふたりが出会う女スリお銀役で芦名星、第三話からは弁蔵たちが修行することになった大坂の夜板一味に橋本じゅん、村上淳も登場。「俺は俺の一味をつくる」「いや、俺たちのだ」弁蔵、宗次のシビれるやりとり、「てめえらにけじめをつけなきゃ、赤目の頭を名乗れねえ」と執拗な甚三郎の脅し文句、盗賊たちのセリフも冴えている。

 まさにおとなの時代劇という雰囲気だが、実はこの作品は「初尽くし」と言っていいくらい、初めてのことが多いドラマだった。

 まず、主役の松山にとっては初の町人役。製作のWOWOWにとっても初の連続時代劇で、監督も京都での時代劇撮影は初。菜々緒も初時代劇出演であった。こうしたキャスト、スタッフを支えたのが京都太秦の熟練スタッフ。松山が「時代劇を知り尽くしている」と感動したスタッフの技術により作られた濃い陰影の映像、流れるジャジーな音楽が闇の物語を盛り上げている。

「連続ドラマW ふたがしら」©オノ・ナツメ/小学館 ©2015WOWOW/ホリプロ

 さらに続編として製作された「ふたがしら2」は、監督が「スケールアップした」と言うだけに、予想外の展開が続くことになった。
 弁蔵と宗次は、新たに盗賊集団「壱師」を結成して、大胆な盗みを成功させる。弁蔵、宗次が黒装束で屋根の上にたつ姿に貫禄が出てきた。いよいよ「俺達は江戸のてっぺんをとる!」と張り切るが、彼らの前に「この世はしょせん色と欲」という最凶の敵・火付盗賊改方の蔵人が現れる。

 ある日、お調子者の弁蔵は賭場で蔵蔵(大森南朋)という男と知り合い、「蔵蔵とは面白れぇ」と意気投合。そこに白ヘビのごとくするすると甚三郎が近づく。一方、「姐さん」と呼ばれていたおこんは、吉原の売れっ子太夫として、堂々の花魁道中を見せる。菜々緒は172センチの長身に黒漆の超厚底花魁ぽっくり(15センチ以上)にデラックスに結い上げた花魁の髪の高さを加えたら、全長2メートル近かったはず。衣装は20キロ近くあったという。ドラマ史に残る文字通りの超大型花魁であった。もちろん入浴シーンもあり、こちらもスケールアップした(気がする)。

「2」は、第一話から最終話まで「吉原破り」「七仏破り」「大坂破り」「御金蔵破り」「悪縁破り」と副題がついていて、ふたがしらにそれぞれ難関を「破る」ことが課せられるところがポイントだ。

「吉原破り」では、悪い遊女屋の店主に監禁されて、海外に売られそうな遊女を「盗んでおくれ」と壱師に依頼したおこん姐さん。二話では、鬼蜘蛛の羽織を着たあやしい男政吉(北村有起哉)が持ち込んだ「七仏の謎」を巡っての攻防が始まる。

 果たして7つの仏にはどんな秘密があるのか。江戸城御金蔵破りという途方もない計画は成功するのか。最終話では悲劇的な出来事も勃発する。ここで事件の鍵を握るひとりは蔵蔵だが、私は「目を細めたときの大森南朋には何かある」という法則を見出している。後半、蔵蔵はかなり目を細めている。何かがあるんですよ……。

 掟を守るか、破るか。全員が悪人という緊張感がたまらない。盗人同士の熾烈な戦いの結末を見届けたい。

「連続ドラマW ふたがしら」©オノ・ナツメ/小学館 ©2015WOWOW/ホリプロ

今回ご紹介した作品

連続ドラマW ふたがしら

配信
WOWOWオンデマンドにて配信中

情報は2025年9月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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