ペリー荻野さんのドラマ批評 - ちるらん 新撰組鎮魂歌

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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ちるらん 新撰組鎮魂歌

2026/6/26公開

史実に基づきながらも大胆な解釈で描く「新撰組」

画像:ちるらん 新撰組鎮魂歌 1

©橋本エイジ・梅村真也/コアミックス ©THE SEVEN

「ちるらん 新撰組鎮魂歌」の始まりは、明治45年。腕の立つ娘が、白髪の老人・元新撰組の永倉新八(柄本明)を訪ねてくる。彼女を「歳さんの孫だな」と見抜いた新八は、歳三の生涯を話し始める。

 百姓の家に生まれ、ケンカに明け暮れる「バラガキ」土方歳三(山田裕貴)は、剣術道場で暴れて、ケガをした者たちに薬を売りつけるという商売をしていたが、多摩の剣術道場・試衛館の道場主・近藤勇(鈴木伸之)、山南敬助(中村蒼)、沖田総司(細田佳央太)らと出会い、剣の修行をはじめた。江戸を騒がす“人斬り”以蔵(中島健人)とも死闘を通じて友人となった歳三。やがて、近藤らと京に向かった土方は、幕末の風雲の真っ只中に身を置き、ギラギラした男たちと、闘いの日々を送ることになる。

 新撰組は、これまで多くの映像作品で描かれてきたが、人気コミックを原作にしたこのシリーズは、とにかく登場するキャラクターが強烈だ。

画像:ちるらん 新撰組鎮魂歌 2

©橋本エイジ・梅村真也/コアミックス ©THE SEVEN

 まず、主人公の土方は、ぼさぼさ頭に着物もよれよれ、「強いやつと戦うとき、生きてるって気がする」と、近藤らが止めるのも聞かず、突っ走る。おかげでいつも傷だらけだ。

 その土方と出会うのが、芹沢鴨(綾野剛)の一派だった。
 不敵な笑みを浮かべる芹沢は、試衛館の天才剣士・沖田をあしらうように打ち負かすほどの遣い手で、「なんつっても暴力だよ」と狂気を感じさせる男。試衛館の面々とは、とてもそりが合わない。

 そんな彼らは、会津藩主で京都守護職となった松平容保(松本潤)が後ろ盾となり、なんとか食い扶持を得る。芹沢は近藤を見下し、取り巻きを引き連れて色里で豪遊、気にいらない者を蹴倒していく。そんな中で、一度は試衛館を離れながら、戻って来た斉藤一(藤原季節)が、仲間の中に裏切り者がいることを突き止める。

 多くの作品では、家訓を死守する悩み多き若殿と描かれる容保だが、松本潤は短銃をぶっ放し、幕府がなくなっても戦を続けると宣言。「それが会津だ!!」と好戦的な顔も見せる。ちなみに13年の大河ドラマ「八重の桜」で苦悩する容保を演じたのは、綾野剛だった。

 このドラマの中でも、「最期の徒花」と言われているが、新撰組は武士の世が終わりつつある中で、武家の生まれの者もそうでない者もひたすら「武」に生き、散ることを決意した特異な集団だ。彼らの物語が、繰り返し映像化される理由、魅力は、どこにあるのか。

画像:ちるらん 新撰組鎮魂歌 3

©橋本エイジ・梅村真也/コアミックス ©THE SEVEN

 実は第一の魅力は、若者集団であること。
 生真面目なリーダー・近藤、それを支える副長の土方、「ですます調」で話す山南、ときに無邪気さを見せる沖田などなど、集団ゆえに個性的なメンバーの中に“推し”を見つけられる。

 実際、新撰組ドラマの元祖ともいえる「新選組血風録」(65年・NET現在のテレビ朝日)は、今もファンが上映会を開くほどの人気作で、主人公の土方歳三を演じた栗塚旭、沖田の島田順司などは、無名に近かったが、ここで大ブレイク。栗塚は大河ドラマ「新選組!」(04年)で、土方(山本耕史)の盲目の兄として出演し、ファンを喜ばせた。

 近藤勇は、33歳でなくなっているにも関わらず、昭和期には片岡千恵蔵ら日本映画界の重鎮が演じることが多く、長く貫禄たっぷりの壮年イメージだったが、「新選組!」の香取慎吾、岡田准一が土方歳三役で主演した映画「燃えよ剣」の鈴木亮平など若手の役となり、若い世代にも注目されるようになってきたこともポイントだ。

 そして、「ちるらん」では、それぞれが相手を斃(たお)すため、刀はもとより、体当たり、足蹴り、なんでもありのすさまじいアクションを見せる。“勝てない土方”も見どころだ。

 第二の魅力は、幕末から明治の物語であること。
「ちるらん 新撰組鎮魂歌」の芹沢は、真っ赤な髪に巻きたばこをくわえて現れる。赤毛の鴨!?  他にもパーカみたいな着こなしの原田左之助、銀髪に三つ編みヘアの斉藤一などユニークな外見の人物が登場。こんな人物がいたのかと驚いたが、幕末には外国商人と武器の取引もあり、さまざまな物品の流入があったはずで、後に土方も洋装することが知られている。ドラマの場合、完全に否定される史料がなく、「これはあったかもしれない」と解釈できるものは、採用されることも多い。その点、時代の転換期の幕末~明治は、自由度が高い。

「ちるらん 新撰組鎮魂歌」は、「江戸青春篇」から「京都決戦篇」へと進んだ。
 後半、異様な存在感を示すのが、芹沢一派の新見錦(奥野瑛太)だ。眉毛がなく、イナヅマのような剃り込みでどこから見てもヒール顔の新見は、自分を仇と狙った相手に、スキを見て毒を塗った刃を突き刺す“毒サソリ”という恐ろしい技を見せた。卑怯だという相手に、新見は頭を指さし、「今の時代、ここが弱い奴を武士って言うんだよ!」「気持ちいい~!!」とあざ笑うのである。

 芹沢の乱暴狼藉もエスカレートし、いよいよ試衛館組とは緊張が高まる。
 年老いた永倉新八が、「語るものによって、見える景色は変わる」と言いながら、永倉が示した土方歳三の実像がどんなだったか。驚きの「歳さん」がここにいる。

今回ご紹介した作品

ちるらん 新撰組鎮魂歌

配信
U-NEXTにて独占配信中

情報は2026年6月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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