ペリー荻野さんのドラマ批評 - 隠し目付参上

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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隠し目付参上

2026/7/21公開

時代劇版「戦隊ヒーロー」アクション!?

画像:隠し目付参上 1

 三船敏郎といえば、「椿三十郎」、「用心棒」、「七人の侍」など、黒澤映画で高く評価された映画スター“世界のミフネ”であり、テレビ作品でも「大忠臣蔵」の大石内蔵助など、重厚な存在感で知られる名優だ。60年代からは、自ら設立した「三船プロダクション」で、時代劇制作にも乗り出し、「荒野の用心棒」など、人気作を生み出してきた。

 その三船プロ作品の中でも、異色作としてファンの間で語り継がれているのが、1976年に放送された「隠し目付参上」だ。

 ポイントとなるのは、「色」である。

 日本では、なぜか集団で戦うときには、メンバー各々にカラーをつける習慣がある。
 戦隊ヒーローシリーズやアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」、アイドルの「ももいろクローバーZ」もしっかり色分けされている。色の種類は、グループによっていろいろだが、ほとんどの場合、リーダーは赤を身に着けるのがお約束。戦隊ヒーローものの元祖である「秘密戦隊ゴレンジャー」(75~77年)のアカレンジャーは、「暴れん坊将軍」など数々の時代劇でも活躍した誠直也だった。なお、時代劇の色分けヒーローでは、「仮面の忍者 赤影」は、かの「ゴレンジャー」より早く赤、白、青の忍者が活躍している。

 そこに登場したのが、「隠し目付参上」だった。

画像:隠し目付参上 2

 老中・松平伊豆守(三船敏郎)が、腐敗した世の中をよくするために、異母兄の素浪人・九十九内膳正(三船・二役)に依頼して、「隠し目付」を結成する。からくり人形作りの春楽(江守徹)、芸者の菊次(大谷直子)、熱血浪人の吉岡鉄五郎(竜雷太)、モテモテの遊び人の佐吉(沖雅也)、女飛脚のお駒(秋野暢子)らメンバーは、九十九の指令書で探索を開始。敵方に深く潜入、からくり細工を用いて、悪の根を絶つ!

 クライマックス。悪人屋敷に乗り込み、横一列になった隠し目付たちのコスチュームは、一度見たら忘れられない。彼らは、葵の御紋つきのブラックマントを着用し、はらりとめくると、それぞれのカラーがのぞくというおしゃれ仕様なのだ。春楽は緑、菊次は紫、吉岡は茶、佐吉は青、お駒はオレンジ。リーダー九十九は「ブラック」だ。黒い着流しに黒いマントで悠々と歩く三船。どこかダース・ベイダーを思わせる。貫禄たっぷりである。ちなみに秋野は、「隠し目付参上」の続編でやはり色分けヒーローたちが活躍する「江戸特捜指令」でもレッド系を担当している。

画像:隠し目付参上 3

 世界のミフネ制作だけに、脚本は「太陽にほえろ!」などを手がけた小川英らが担当、演出も「眠狂四郎」「座頭市」の池広一夫、「あぶない刑事」「相棒」シリーズなどで知られる長谷部安春など手練れの監督が揃う。殺陣はのちに中村吉右衛門の「鬼平犯科帳」を担当した宇仁貫三。夏八木勲、加賀まりこ、中尾彬、天本英世などゲストも豪華な顔ぶれだ。今井健二、菅貫太郎、神田隆、五味龍太郎など、顔を見れば「これは!」と思う、昭和を代表する悪役陣も次々登場している。

 第六話「からくり三太はなぜ泣いたか」のゲストは、当時、名子役として知られた坂上忍。春楽(江守徹)のからくり人形三太が強奪され、たまたま遊びに来ていた少年・健吉(坂上忍)も巻き込まれる。その背後には、元将軍側用人で別名からくり御前の鷹澤(大滝秀治)の存在が……。鷹澤の恐怖のからくり屋敷に潜入した隠し目付に危機が迫る。「飛んで火にいる夏の虫よのう。ヒヒヒ」と笑う大滝の悪役ぶりがいい。そのからくり御前の一番の楽しみが、からくりで人を陥れることと、小判を張り詰めた壁を眺めることというのもびっくり。

 そして、いよいよ始まる隠し目付の反撃。例によってマント姿で現れると、悪人たちの悪行をしっかり糾弾する。「金と力で世間を欺き 闇から闇への極悪非道 まさに天神ともに許しがたく 三途の川を引き回し 冥土への追放を申し渡す!!」と、決めセリフをメンバーが分担して言い切ると、ズバッと大立ち回りが始まるのである。締めくくりは人形の三太の必殺技が炸裂!?

 なお、決めセリフには、別バージョンもあり、メンバー全員が揃わない回もある。考えてみると、レギュラーの江守は、「隠し目付参上」の前年、大河ドラマ「元禄太平記」で、一年間、大石内蔵助を演じていた。竜雷太は、ご存知、「太陽にほえろ!」のゴリさんこと石塚刑事役で出演中、沖雅也は73年の「必殺仕置人」で時代劇俳優としても人気を確立している。秋野暢子は、75~76年にかけて放送されたNHK朝ドラ「おはようさん」のヒロイン、大谷直子も69年~70年の朝ドラ「信子とおばあちゃん」で主演している。乗りに乗ったキャストが、悪を成敗していたのだ。そんな中で、浪人の九十九は、井戸端で長屋のおかみさんたちに「もっとしっかりしないとダメですよ~」などと言われて頭をかいている。ちょっとお茶目な三船敏郎が面白い。

画像:隠し目付参上 4

 荒唐無稽な設定の中にキラリと光る名優たちの名演、勧善懲悪の爽快感、集団アクション時代劇の醍醐味をたっぷり味わえるシリーズだ。

今回ご紹介した作品

隠し目付参上

放送
時代劇専門チャンネルにて7月22日19時~放送開始(月~金曜)全26話

情報は2026年7月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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