ペリー荻野さんのドラマ批評 - 銭形平次

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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銭形平次

2026/9/11公開

亀梨和也のニュー銭形平次誕生! 気になる“投げ銭”技を考える

 江戸の難事件を追う神田明神下の名親分といえば、御存知、銭形平次。8月21日に亀梨和也が平次を演じた新作がNHK総合で放送され、多くの名優が演じてきた時代劇の名キャラクターに注目が集まっている。

 今回の物語の舞台は、享楽的で退廃的な空気とともに、貧富の差は激しく、貧しい者たちのうっぷんが渦を巻いていた文化文政の江戸。神社の境内で男が殺され、その懐から、建物の図面のような紙切れが発見される。同僚の岡っ引き・三輪の万七(後藤剛範)は物取りだと早合点するが、平次は「妙…」と違和感を抱く。南町奉行所筆頭与力笹野新三郎(高橋克実)によると、この事件の裏には大きな陰謀の疑いがあるという。笹野は、平次に協力を依頼する。同じころ、平次は、お静(生田絵梨花)と一緒に、江戸で評判の旅一座「花影社中」の舞台を観に行った。看板芸人つばめ(山田杏奈)は、観客を虜にし、熱狂的な人気を集めていたが、平次はそこでも何かを感じ取る。その後、彼女と座員の熱愛が瓦版に載り、トップアイドルのスキャンダルに江戸庶民は騒然となる。そして、さらなる殺人事件が。

 亀梨平次のポイントは、観察力や推理力に加えて、身体能力が高く、さらに好奇心旺盛で、医学や化学、数学などの禁書を読み、独学でオランダ語も習得としているというところ。過去の作品では、「愛妻」として登場していたお静も、まだ友達以上恋人未満の存在だ。

 そこで気になるのが、平次の特技の「投げ銭」だ。実はよく見ると、過去の平次も、この技にそれぞれ特徴がある。

 たとえば、1966年から84年まで平次を演じた大川橋蔵の投げ銭は、初期のころは手にした十手を腰に差し、束ねた銭を一枚とって耳の横辺りから投げるスタイルだったが、後期には、二丁十手での立ち回りとなり、ひとつを口にくわえて、ピュッと投げる。当てられた悪人は、倒れたり、転んだり、効果は抜群だ。

 87年、新たに登場した風間杜夫の平次の投げ銭は強烈だった。こめかみあたりから飛ばした銭は、悪人たちの腕に食い込むほどの威力を持ち(!)、ピュピュッと連投も可能。飛距離も川の向こうにいる相手にも命中させるほどだ。おそるべし、投げ銭。なお、この威力に説得力を持たせるためか、ドラマの中でこの平次がこれだけの技を身に着けるまで、浜辺で鍛錬する場面もしっかり見せていた。日本テレビの青春ドラマのスタッフが関わっているだけに、爽快感と若々しさ、岡っ引きとしての成長が強調された平次といえる。

 91年から98年まで続いた北大路欣也の平次は、大川橋蔵と同じフジテレビ系でもあり、オーソドックスなスタイル。いつもパリッとした着物の親分は、貫禄を感じさせる。帯に緑色の根付(留め具)をつけた銭の束(数えたら銭は40枚くらいあった)から、一枚抜き取り、眉毛のあたりで銭を構えるのだが、なんといっても目力がすごい。敵に投げつけるだけでなく、第三部一話「暗闇の婚礼」では、蔵の隠しスイッチにバシッと命中させて、バカっと開いた扉の奥の黄金の観音像を発見した。

 さらに2004年の「銭形平次」は、これまで武士役が多かった村上弘明が、初めて本格的に町人役に挑んだ。長身を活かしたダイナミックな銭投げの技は、投げる仕草が超速い。そこにCGも駆使して軌跡を描き、ぐいーんと相手に迫って命中させる。21世紀の平次にふさわしい特撮のような投げ技だった。シリーズ第一話のタイトルも、「炎の投げ銭! 消えた二万両の謎」、翌年の第2シーズン第5話は「狙われた娘の絆! 涙の投げ銭」と、投げ銭推しだったことがわかる。

 そして、令和の新・平次、亀梨はどんな「投げ銭」を見せるのか。亀梨といえば、野球の経験豊富で、日本テレビの「Going!Sports&News」のベースボールスペシャルサポーターとしても出演中。ここは大胆なオーバースローかと思ったが、意外にもこれまで誰も見せたことがなかった下手投げだった!

 ここで重要なのは、すくっと立って、カッコよく投げるのもいいが、敵に追い詰められ、必死に戦いながら、銭を投げる姿には、なんとも色気があるということ。いつもしゃきっとした平次が、戦いのため、一筋のシケ(ほつれ髪)を見せつつ、奮闘するのはファンとしてはドキドキのシーンなのだ。

亀梨平次は、上様暗殺、幕府転覆など、とんでもない事態に立ち向かい、この事件をきっかけに「捕物名人」として広く江戸で知られるようになる。

野村胡堂の原作には、大盗賊がからんだり、八五郎の人情話、奇怪な幽霊ものなど、さまざまなストーリーがある。ぜひ、シリーズ化して、平次親分の名推理と十手さばき、個性的な投げ銭を見せてほしい。

今回ご紹介した作品

銭形平次

配信
NHKオンデマンドにて配信中

情報は2026年9月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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