地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ボバ・フェット/The Book of Boba Fett
2022/05/04公開
『スター・ウォーズ』シリーズ屈指の人気者が主役のオリジナルドラマシリーズ。アウトローな魅力は健在
『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』
© 2022 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで独占配信中
映画『スター・ウォーズ』シリーズは、筆者が小学5年生だった頃、後にエピソード4と呼ばれる第1作『スター・ウォーズ』(『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』)で始まり、大いに衝撃を受けた筆者はそのまま映画好きになったほど。そして以来40年以上の間に映画9本+アナザーストーリーの2本が作られ(いずれも劇場公開用実写作品)、どれもが世界的ヒット。そんな『スター・ウォーズ』ヒストリーに堂々と加わったドラマ版が第1作『マンダロリアン』と、この第2作『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』だ。
ボバ・フェットは、映画シリーズの『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』に登場し、後に作られた『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』ではまだ少年だった、宇宙の賞金稼ぎ。同じディズニープラスで配信中のドキュメンタリー『ボバ・フェットの伝説 アーマーに隠された素顔』もおすすめだ。映画版エピソード5・6に合計6分半しか登場しなかったボバ・フェットだが、謎めいた存在感とワイルドな風貌で人気者となった。
本作の世界観を理解する上で映画版のエピソード4~6は見ておくべきだし、本作の前に『マンダロリアン』の2つのシーズンも見ておきたい。そんなハードルを高く感じる人がいるかもしれないが、それに見合うお楽しみが本作にはぎっしりと詰まっている。
『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』
© 2022 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで独占配信中
銀河帝国と反乱同盟軍の戦いを描いた映画版のエピソード6で犯罪組織のボス、ジャバ・ザ・ハットに用心棒として雇われたボバは、反乱同盟軍のルークらとバトルを繰り広げたが、最後は巨大生物サルラックに食べられた。そして本作はそんなボバが実は生きていたというサプライズなストーリー。惑星タトゥイーンに住む先住民たち、タスケン・レイダー(サンド・ピープル)の一団に命を救われたボバは、ジャバ・ザ・ハットら支配者層にあらがう人々のリーダーになっていく。
ボバ・フェットの魅力は、銀河帝国でも反乱同盟軍でもないアウトロー感といっていいはず。2022年の現在、そういうマインドの人たちはむしろ世界では主流かもしれない。
そんな新生ボバに味方する女性キャラ、フェネック・シャンドも勇ましくてチャーミング。演じるミンナ・ウェンは『エージェント・オブ・シールド』などでもおなじみのアジア系女優だが、1963年生まれと思えぬ(←失礼)ハードなアクションも見せている。
『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』
© 2022 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで独占配信中
幼い頃に父親を失い(映画版エピソード2で描かれた)、非情な賞金稼ぎとなったボバが、タスケン・レイダーとの交流を経て心優しきタフガイに生まれ変わる設定が心憎いが、それには背景がある。
『マンダロリアン』でほとんどの脚本を担当し、時々だが監督も務めるジョン・ファヴローは、映画『アイアンマン』3部作を成功させた名手。『スター・ウォーズ』第1作にはまった筆者(初老のおっさん)の1歳上だが、映画『スター・ウォーズ』シリーズはエピソード4~6が最高とファヴローも思っているはず。『マンダロリアン』にも本作にも、映画版エピソード4~6に登場したキャラやメカが次々と登場。それだけでも満腹だ。
シリアス感とユーモアをバランスよく共存させる手つきも『アイアンマン』以来引き続いて快調だが、考えると悪党だったボバ・フェットが改心して英雄になる物語自体、映画『アイアンマン』シリーズと似ており、本作の痛快さを保証する“肝”となっている。
とはいえ問題点も。どういう訳か終盤、ボバやフェネックは活躍が減ってしまう。『マンダロリアン』と同様、これは映画館で見ても満喫できたというハイクオリティなアクションが連発するだけに、もっとボバやフェネックの大暴れが見たかった。もしもシーズン2が作られるとしたら、ぜひ期待したい。
ちなみにディズニープラスは、『スター・ウォーズ』ドラマ版第3作『オビ=ワン・ケノービ』を5月27日から配信予定。その予習になるかもしれない点でも本作は要注目だ。
ボバ・フェット予告編
オビ=ワン・ケノービ予告編
今回ご紹介した作品
ボバ・フェット/The Book of Boba Fett
ディズニープラスで独占配信中
情報は2022年5月時点のものです。