地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
CSI:ベガス
2023/08/29配信
人気犯罪ドラマの続編は“急がない世代交代”で成功
15シーズンも続いた『CSI:科学捜査班』の続編が『CSI:ベガス』。これまでと同様、米国のラスベガス(ベガス)で“科学捜査”のエキスパートたちが活躍する。
前作の終了からたった6年の復活で驚いたが、『クリミナル・マインド』は2年で復活したし(邦題はシーズン16で『クリミナル・マインド/FBIvs.異常犯罪:エボリューション』に変わった)、少し前、『24』も一度終わった後に復活。ヒットドラマの世界的影響力はそれほど大きい。シンプルに続編やリメイクが増えたのも理由は同じだろう。それでも、6シーズンもあった『ゴシップガール』の続編でさえ2シーズンで終わるなど、続編もリメイクも失敗することはけっして少なくない。そして『~ベガス』は、シーズン1こそ様子見したのか、全10話だけだが、好評を受けてシーズン2は全21話に増加。その全米放送が終わる前に、シーズン3への継続が決まった。
この『~ベガス』、タイトルは変わっても犯罪ミステリーとして内容は大きく変わらない。ヒットドラマの世界観という昔ながらの器に、魅力的な登場人物や最新の科学捜査事情といった料理をたっぷりと盛り、まずは旧作ファンならひと安心。テーマ曲も、引き続いてザ・フーの「フー・アー・ユー」だ。
©2023 CBS Broadcasting, Inc. All Rights Reserved.
ラスベガスの警察の犯罪研究チーム(CSI)は、女性の新しい主任マックス(ポーラ・ニューサム)に率いられているが、元警部のブラス(ポール・ギルフォイル)が何者かに襲われる事件が発生。ブラスと働いた元CSIのサラ(ジョージャ・フォックス)、そしてベガスに戻った元主任グリッソム(ウィリアム・ピーターセン)はブラス襲撃犯を追うが、さらに元CSIのホッジス(ウォレス・ランガム)にかかった疑惑に直面する事態に……。
かつての『~科学捜査班』は、各話で事件がひとつ、もしくは複数起きてもその回でどれも解決するのが痛快だった。しかし『~ベガス』は各話で解決する事件もあれば、シーズンを通じてホッジスの謎を探る、連続ドラマの要素もあってリニューアル。そして新登場の若手捜査官たちが前者を、グリッソムらベテランたちが後者を捜査。そんな新旧2チームは協力し、互いに手伝うことも。いきなり一新するのではなく、“急がない世代交代”でより多くのファンを楽しませる点、考え抜かれている。
そして若手捜査官たちも個性的で、考古学の知識もあるインド系風の女性アリー(マンディープ・ディロン)、行動派の男性フォルサム(マット・ローリア)など。
一方、がらりと変わったのはチームが働くラボ(研究所)。筆者は『~科学捜査班』のセットを2度取材し(ハリウッドのユニバーサル撮影所にあった)、ダークな雰囲気が好きだったが、新しいドラマを作るぞという決意表明か、ぐんと広くなって見ものだ。
©2023 CBS Broadcasting, Inc. All Rights Reserved.
『~科学捜査班』から継承した見せ場は、なんといっても最新科学捜査の華麗なテクニック。新しい機材も捜査テクニックも出てきて驚かされる。科学捜査はまだ進化を続けているのだ。米国の病院ドラマの中には10年以上続くものもあるが、人気の理由は新しい病気や医療の情報をどんどんと反映させているから。だから常に新鮮さを失わないのと同じだ。
シーズン1は情報量が多く、マックス主任ら新登場人物陣を掘り下げるに至っていないのが惜しまれるが、シーズン2ではマックスの元夫も登場し、それらもお楽しみポイント。
そんなシーズン2は一部のメンバーがCSIを去る一方、『~科学捜査班』のキャサリン・ウィロウズ(マージ・ヘルゲンバーガー)が復帰。またグレッグ(エリック・スマンダ)も第17話から再登場。一方で新人も加わり、“急がない世代交代”はしばらく好評を博しそうだ。
今回ご紹介した作品
CSI:ベガス
Huluで配信中
情報は2023年9月時点のものです。