地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
2024/2/1配信
日本生まれの“ゴジラ”を海外でドラマ化!
画像提供:Apple TV+
2023年の年末、2本の日本映画が全米で大ヒットした。宮崎駿監督のアニメ『君たちはどう生きるか』と山崎貴監督の実写映画『ゴジラ-1.0』だ。後者だが、日本生まれの怪獣“ゴジラ”は最初の映画が作られてから2024年で70周年を迎え、中でも2014年の映画『GODZILLA ゴジラ』に始まったハリウッド映画版シリーズは“モンスター・ヴァース”と呼ばれ、好評を博している。
日本の映画会社・東宝と米国の映画会社・レジェンダリーは同年に“ゴジラ”を作らないという契約を結んだという説があり、日本で映画『ゴジラ-1.0』が作られた2023年にドラマならOKと、レジェンダリーが放った“モンスター・ヴァース”初のドラマがこの『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』と思われる。
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映画『GODZILLA~』で描かれた通り、2014年の“Gデー”、ゴジラとムートー2体という怪獣3頭に壊滅させられたサンフランシスコ。1年後、日系人女性ケイト(澤井杏奈。ニュージーランド生まれであり世界で活躍中なので今後はアンナ・サワイになりそう)は“Gデー”のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩みつつ、失踪した父ヒロシ(平岳大)を捜そうと東京へ。そこでヒロシが母親と異なる別の女性の間にもうけた青年レン(渡部蓮)や、その友人のハッカー、メイ(キアシー・クレモンズ)と知り合う。
まず第1・2話、実際に東京でロケをした場面の数々が素晴らしい。海外の作品で再現される日本はいまだにいい加減なことがあるが、本作の東京は実際にロケをした分(日本側スタッフの尽力も大だろう)、違和感がほぼなく日本語のせりふも多い。“モンスター・ヴァース”中でも屈指のレベルで、ゴジラが生まれた国へのリスペクトがたっぷりだ。
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その後、ケイトら若者3人は、韓国、アラスカなどへ転々とし、そのスケール感に圧倒されるが、一方、過去の物語も並行して展開。“モンスター・ヴァース”第2作『キングコング:髑髏島の巨神』でも描かれた、1944年のアジアに始まる物語だ。『キングコング~』にも登場した元軍人の地質学者ビル(アンダーズ・ホーム)と日系人科学者ケイコ(山本真理)は、アジアに現れた怪獣の謎を共に調べるうち、関係を深めていく。そしてケイトたちはかつて、ビルやケイコの仲間だったリー・ショー(名優カート・ラッセル)と出会う。
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『GODZILLA~』などで渡辺謙が演じた芹沢博士はゴジラに思い入れがある人物で(海外風の「ガッジーラ」ではなく日本風にちゃんと「ゴジラ」と呼んだのは感動的だった)、彼が所属する国際的な怪獣研究機関“モナーク”は善の組織と思われそうだが、怪獣に関する情報を世界に開示しない点、悪の組織と見ることもできる。そしてこのドラマでも不穏に振る舞うことが多く、父親との再会を望み続けるケイトやレンを妨害することも。つまりこのドラマは過去と現代の両方にまたがり、ゴジラら巨大怪獣(新たな怪獣も多数出現)と人類の戦いを描くモンスターSFであると同時に、スパイアドベンチャーのようでもあり面白い。そして繰り返しになるが映画史を代表する名モンスター、ゴジラを生んだ国・日本へのリスペクトも強く、澤井杏奈、渡部蓮、平岳大、山本真理など、日本がルーツの俳優陣の熱演も含め、筆者はひたすら深い感銘を受けている。
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本作はシーズン1の配信がすべて終わらないうちに、シーズン2への継続が決定した。ケイトとケイコの名前が似ているのは偶然かなど、人間関係にも興味を抱かせる手つきはドラマならでは。そして映画版“モンスター・ヴァース”は2024年春、4年ぶりの最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』が完成予定。本作がこちら本家にリンクするのかどうかまでどきどきさせられる、最高の要注目作だ。
今回ご紹介した作品
モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
Apple TV+で配信中
情報は2024年2月時点のものです。