地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
サニー
2024/8/30公開
米国の会社が日本で作った‟インバウンドドラマ”!?
アジアの映像文化は近年の動画配信を通じ、かなり好況を呈している。先行して世界的に人気だった日本産アニメ以外でも多くの才能が認められてほしい。この「通販生活」の連載でご紹介した、真田広之主演の米国ドラマ『SHOGUN 将軍』はエミー賞(発表は9月)で今年最多の25ノミネーションを獲得!
画像提供 Apple TV+
そして新たに日本で撮影された、刺激的ドラマがこの『サニー』。米国作品ながら、日本の西島秀俊、國村隼、YOU、ジュディ・オングらをキャストに迎え、京都などで撮影した。製作したのは米国の映像会社‟A24”。保守的だった既存の大手映画会社と一線を画して個性的作品を量産し、第89回アカデミー賞で野心作『ムーンライト』が作品賞などに輝き、第95回の同賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞など7部門で受賞。そんな‟A24”ならではのオフビートなドラマが本作だ。
暗い過去がある米国人女性スージー(ラシダ・ジョーンズ)は京都に引っ越し、日本のサラリーマン、マサ(西島)と結婚し、息子ゼンを産んだ。しかしマサとゼンが乗った北海道行きの飛行機は事故で墜落し、マサは亡くなったと考えられる。そんなスージーに、マサが働いていた大企業「イマテック」の上司タナカ(國村)は同社で作られたロボットをプレゼント。ロボットのサニーは、なんとマサが知っているスージーの情報をプログラミングされ、マサのくせを知り、ロボット嫌いのスージーはサニーを気に入っていく。
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しかし! マサはスージーにロボット担当ではなく冷蔵庫担当だと嘘をついていた上、「イマテック」に行ったスージーはそこで死体を見つけるなど不穏な事態が続き、謎の集団がスージーを監視し出す。それでもスージーは真実を知ろうと行動を続けるが……。
AppleTV+は本作の最新エピソードを毎週水曜に配信。筆者は8月21日に配信された第8話までしかまだ見ていないが、ミステリー、SF、コメディ、ホームドラマなど、異なる要素をごった煮にした、ユニークな物語だ。しかも、京都の美しい街並みや日本の大企業の清潔なオフィスを見せる一方、ラーメン店、ホストクラブ、アダルトグッズ店などいかがわしい光景も。つまり恐らくは、海外の人々が考える‟極東の国ジャパン”をあえてテーマパーク化したようなドラマだ。また、映画好きならクエンティン・タランティーノ監督の『キルビル』2部作(特に第1作)を思い出すだろう。暴力と性の要素は増えていき、そこで大人の視聴者たちを遊ばせたかったのか。日本人なら違和感を覚える‟ジャパン”な世界をあえて確信犯的に狙った点、ついに現れた‟インバウンドドラマ”か?
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‟A24”と聞いて熱心な映画好きの中には、‟また低予算作品?”と考える人もいるだろう。だが素人の筆者から見ても明らかに日本映画より製作費はかかっており(セットがいちいち広くてつい苦笑してしまう)、これもまた‟A24”らしいユニークな視点なのだろう。ハリウッド流の豊かな環境のもと、日本のスタッフ陣もいい意味で真剣に遊んだのではないか(筆者の偏見だったら申し訳ない)。
俳優陣にも目を向けたい。日本ではもう人気スターだったが、第94回アカデミー賞で国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』に主演した西島。意外にもそれ以前から本作への出演オファーがあったんだとか。
また、ヒット曲『魅せられて』のイメージが強い人気歌手ジュディ・オングが、本来持っていた高い語学力を駆使し、ベテランの実力を発揮。そして第3話から登場するYOUの存在感が大きい。裏街道の女性ボス・ヒメ役を、得体の知れなさ全開で怪演している。
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今回ご紹介した作品
Apple TV+「サニー」
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情報は2024年8月時点のものです。