地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ザ・レジーム/壊れゆく政権
2024/9/27公開
現代の独裁国家とその崩壊を描いたダークコメディ
© 2024 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. All rights reserved. Max and related elements are property of Home Box Office, Inc.
以前本連載でご紹介した、真田広之さん主演・プロデュースのドラマ『SHOGUN 将軍』が、9月15日(現地時間)に主要部門が発表された第76回エミー賞、他の各部門も合わせると計18部門を受賞し、史上最多の受賞記録を達成。おめでとうございます!
さて海外ドラマ好きとして今年のエミー賞全体を展望すると、米TV界の雄HBO局の不振が気になった。前年は計31部門で受賞したが、今年は計23部門。日本でも人気の『セックス・アンド・ザ・シティ』『ゲーム・オブ・スローンズ』『メディア王~華麗なる一族~』など秀作を量産してきたが、今年は人気ファンタジー『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の新章・シーズン2が間に合わなかったからか、HBOはお休みという印象だ。
そんなHBO局が今年3~4月に全米放送したのが、この『ザ・レジーム/壊れゆく政権』。‟レジーム”は‟政権”を意味し、大胆にも、架空ではあるが現代の独裁国家を題材にしたポリティカルドラマだ。有料チャンネルであり、系列の動画配信サービスMaxも躍進中で、CMスポンサーに一切忖度しないHBOならではの野心的作品である。
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まず主演俳優に驚かされる。大ヒット映画『タイタニック』に出演後、映画『愛を読むひと』で第81回アカデミー賞の主演女優賞を受賞するなど、アカデミー賞に計7回もノミネートされたケイト・ウィンスレットだ。かつて映画スターはドラマに出演しないと言われたが動画配信サービスが世界的に盛り上がる中、ウィンスレットもドラマ界に進出。
舞台は中央ヨーロッパにあるという某国。女性の首相エレーナ(ウィンスレット)は事実上の独裁者で、周囲を支配する。そこで彼女はトラブルを起こした兵士ハーバート(マティアス・スーナールツ)をボディーガードにするが、国民はエレーナを憎むようになり、エレーナの‟政権”は危機を迎えていく……。
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主人公のエレーナは明らかに、米国のドナルド・トランプ元大統領がモデルだろう。わがままし放題で、周囲で何が起きようがマイウェイを突き進む。日本では考えられない奇想天外な物語ということもあり、筆者は全6話をイッキ見に近い感じで楽しんだ。
しかし一点、引っかかった。エレーナを演じる俳優は本当にウィンスレットがベストだったのかと。このストーリーなら本来ウィンスレットに望まれた演技は、現実世界における政治家たちをデフォルメした、もうちょっとくだけたスタイルだったのではないか。考えるとウィンスレット、コメディで成功した作品がないのが唯一残念なスターだという気がする。なので独裁者になってしまった主人公ならでは悲喜劇感が弱いというが、独裁者像が迫力たっぷりかつリアル過ぎて、もうちょっと笑わせてよと筆者は感じてしまった。
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また、これは作品全体に対して思うことだが、演出(第1・2・4話の監督は英国の鬼才スティーヴン・フリアーズ)や映像もシリアス過ぎる。それこそ同じHBOで『メディア王 ~華麗なる一族~』を手掛けた名手アダム・マッケイ監督ならどう仕上げただろうと妄想してしまった。本当にこんなバカな国があってヤバい独裁者がいたらどうなるか、もっと笑い飛ばしながらも、そこにスパイシーな風刺をきちんと盛り込めたはず。
そんなウィンスレットだが、最新作は大ヒット映画『アバター』シリーズの第3作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ(原題)』。これまでのシリーズと同様、冒険アクションになるのは間違いなく、自身がこれまで演じてきたシリアス路線とは異なる、新たな顔をどう見せてくれるのか楽しみ。引き続いて目が離せない世界のスーパースターだ。
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今回ご紹介した作品
ザ・レジーム/壊れゆく政権
- 配信
- U-NEXTにて独占配信中
情報は2024年9月時点のものです。