地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ゼロデイ
2025/4/21公開
名優ロバート・デ・ニーロがドラマ初主演!
Netflixシリーズ「ゼロデイ」独占配信中
1970年代以来、半世紀以上も活躍を続ける米国の名優、ロバート・デ・ニーロが連続ドラマに初主演した要注目のポリティカルサスペンス。全6話のリミテッドシリーズだ。
タイトルの“ゼロデイ”とは、全米で何度か起きた、実際のサイバー攻撃のこと。
全米がサイバーテロを受ける。電力網などのライフラインが機能しなくなり、航空機が着陸に失敗したり、病院で患者が治療を受けられなくなったりと、1分間で数千人も命を落とす非常事態が発生。元大統領ジョージ・マレン(デ・ニーロ)はすでに政界から引退していたが、現在の女性大統領ミッチェル(アンジェラ・バセット)から事件を捜査するよう依頼され、調査委員会を率いることに。
Netflixシリーズ「ゼロデイ」独占配信中
だが、年老いたマレンはジョギングや水泳こそするが、どうやら認知能力に問題がありそう。なぜ大統領2期目に挑まなかったか、なぜ息子を失ったか、なぜ下院議員である娘アレクサンドラ(リジー・キャプラン)との間に確執があるのかという複数の“なぜ”を含ませることで見る者を引き付ける一級のサスペンスが展開。銃撃戦のような派手な見せ場が少ないのにこれほど楽しめるのはデ・ニーロら職人たちの手練れがあってのもの。計・約6時間、つまり休日の半日位、一気に楽しむのに打ってつけの娯楽ドラマだ。
ひとつ知っておきたいのはデ・ニーロ自身、反トランプを公言し続けていること。過去にもトランプに対し、何度も過激な発言をしている。ならばと本作では、理想的であると共に現実的な(元)大統領を堂々と演じ、トランプ現政権にいらだつ人々には痛快だ。
本作を生んだクリエイター陣も知性が高め。犯罪ドラマ『ナルコス』のエリック・ニューマン、TVジャーナリストのノア・オッペンハイム、ニューヨーク・タイムスのワシントン支局で働いたマイケル・シュミットという3人ならではのリアリズムは圧倒的。しかも全6話を監督したのはドラマ『ER 緊急救命室』以来の名手レスリー・リンカ・グラッター。緊迫感たっぷりの演出だ。
Netflixシリーズ「ゼロデイ」独占配信中
そしてデ・ニーロが座長とあって共演陣も充実。映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(22年)でワカンダ王国の女王ラモンダを演じたバセットは大統領役を堂々と演じ、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(21年)で第94回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされたジェシー・プレモンス、アカデミー賞に3度ノミネートされたジョアン・アレンら実力派スターが集結しており、見ているだけで壮観という名キャスティングだ。
それにしても若手時代、『タクシードライバー』(76年)で大統領候補を暗殺しようとするベトナム帰還兵トラヴィス役を演じ、『ディア・ハンター』(78年)でもベトナム戦争に出征した若者を演じ、一方で名匠マーティン・スコセッシ監督の作品で何度もギャング役を演じたデ・ニーロが、元大統領マレンの役を演じるのが実に楽しい。マレンもまたベトナム帰還兵であり、元兵士が多いと明らかになっていくサイバーテロ集団を取り調べるマレンは、デ・ニーロが演じてこその味わい。彼がしっかり演じたのがファンにはうれしい。
昨年8月、81歳になったデ・ニーロはもう新作映画2本が撮影済みで、なんと1本はスコセッシ監督と組んだ秀作『グッドフェローズ』(90年)の原作者ニコラス・ピレッジによる脚本を映画化するというギャングもの『ザ・アルト・ナイツ(原題)』(25年)だというのもお楽しみ。『ジョーカー』(19年)を通じてデ・ニーロを知った若い映画ファンは多いかもしれないが、半世紀以上活躍してきたレジェンドの気迫が本作にも漂っている。まだしばらくファンを楽しませてくれそうだ。
Netflixシリーズ「ゼロデイ」独占配信中
今回ご紹介した作品
Netflixシリーズ「ゼロデイ」
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- Netflixにて独占配信中
情報は2025年4月時点のものです。