地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
モブランド
2025/11/21公開
英国のロンドンを舞台にギャング抗争を描く犯罪アクション

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“モブ(Mob)”という単語は日本人にとってあまりなじみがない単語かもしれないが、米英では犯罪者集団“ギャング”を指すことが多い。日本ではよく“ギャング”を“マフィア”と呼ぶが、本来はイタリアの国内外で同国人をルーツにした犯罪組織が“マフィア”であり、日本語版Wikipediaもアイルランド系ギャングを“アイリッシュ・マフィア”と誤記している(ちなみに英語版Wikipediaでは“Irish mob=アイリッシュ・モブ”)。
前置きが長くなった。このドラマは英国のロンドンを舞台に、“アイリッシュ・モブ”の戦いを描く犯罪アクション。英国出身だが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『ヴェノム』シリーズなど世界的にも活躍するトム・ハーディが主演し、人気映画『007』シリーズの5代目ジェームズ・ボンド俳優として有名なピアース・ブロスナン、やはり世界的に活躍するベテラン女性スター、ヘレン・ミレンらが豪華共演し、実写版『アラジン』のガイ・リッチーが第1・2話で監督を務めたので映画ファンは要注目だ。

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ロンドンの裏社会を牛耳る犯罪ファミリー、ハリガン家のボス・コンラッド(ブロスナン)は、老いた現在も怒らせてはいけない恐ろしい存在。その部下ハリー(ハーディ)は組織のトラブルを始末する“フィクサー”だが、コンラッドの尻ぬぐいに追われることが多い。新たに、コンラッドの孫エディ(アンソン・ブーン)の友人だが敵対するスティーヴンソン家の失踪した若者トミーの捜索を依頼される。トミーの運命をめぐってハリガン家とスティーヴンソン家の抗争はエスカレートし、ハリーはさらに頭を抱えることに。
ギャングが題材の作品は1972年の名作映画『ゴッドファーザー』の影響が特に大きく、古今東西たくさん作られているが、題材が題材だけにTVというメディアにはなじまなかった。しかし1999~2007年のドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』が評判で、ギャングドラマはコンスタントに作られだす。そして英国のキャスト・スタッフが集まった最新ヒットドラマがこの『モブランド』だ。

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面白いポイントはいくつもあるが、まず『ゴッドファーザー』と同様、ファミリードラマ(ホームドラマ)としての面白さがある。ボスの孫エディはドラ息子で、ある晩クラブで店員を刺したのがトミー失踪の原因だ。凄腕のハリーは直感でエディを怪しいとにらむものの、頭が上がらないコンラッドの孫なのでそうは言えないので悩む。優秀な“フィクサー”であっても企業の中間管理職のよう。
さらにコンラッドの妻メイヴが強烈。老いた専業主婦でありながらやけに裏社会の最新事情に通じ、しかもトラブルメーカーのトミーを「ハリガン家の男はそうじゃなくちゃいけない」と励まして火に油に注ぎまくる。このドラマで一番の面白キャラだろう。ギャングというと男性社会のようだが、他の女性キャラ陣にも見せ場が多いのは魅力的だ。

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ハリガン家もスティーヴンソン家も家庭内にトラブルが連発。つまりファミリーのドラマだがホームドラマでもあるという『ゴッドファーザー』以来の伝統を継承している。
第1・2話のガイ・リッチー監督は犯罪映画の名手で、このドラマでも得意のスタイリッシュな映像を駆使し、迫力満点のアクションを次々と畳みかける。苦手という人が多いかもしれないバイオレンス(暴力)の描写も、あえて過激にすることでブラックユーモアを醸すのは英国作品ならではの味でもある。
ダークな風景もムードたっぷりなロンドンの裏社会を、まるでジェットコースターに乗って突っ走るような痛快エンタメ。すでに続編=シーズン2に継続されると決まった。
今回ご紹介した作品
モブランド
- 配信
- Paramount+にて独占配信中
情報は2025年11月時点のものです。














