地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
九条の大罪
2026/6/19公開
法とモラルの極限を描いたリーガル・ドラマ

Netflixシリーズ「九条の大罪」独占配信中
海外ドラマ好きの筆者だが最近気に入ったのはNetflixの国産ドラマ『九条の大罪』。
弁護士が主人公のリーガルドラマだが第1話、“いい弁護士は性格が悪い”という台詞が飛び出す。弁護士の九条(柳楽優弥)は、ヤクザや半グレが被告の裁判で彼らの弁護を引き受ける。勝訴のため、やばいアドバイスすら被告にする。拘置中はカンモク=完全黙秘せよ、など。だが九条には“依頼人に味方するのが弁護士”だという固い信念があった。
原作は、山田孝之主演でドラマ化された『闇金ウシジマくん』が知られる真鍋昌平によるコミック。闇金業者が題材の『闇金ウシジマくん』の取材中、ある弁護士の話がよく挙がり、それから5年をかけて約50人の弁護士に取材し、原作の『九条の大罪』を生み出した。

Netflixシリーズ「九条の大罪」独占配信中
第1話がいきなりショッキング。九条は知人の半グレ、壬生(みぶ。演じるのは町田啓太)に頼まれ、その手下であるひき逃げ犯を弁護。被害者の運命を大きく変えてしまった事件だが被害者側にあった問題点を見つけ出し、犯人には執行猶予付判決が下る。
まず原作と最も異なるのは、ドラマ版では九条が元大手弁護士事務所の青年、烏丸(からすま。SixTONESのメンバーで俳優業も順調な松村北斗が演じる)の訪問を受けるところから始まること。東大法学部を首席で卒業した烏丸だが、依頼人が犯罪者だと知りながらも弁護する九条に興味を持ったのがきっかけ。原作では最初から九条の事務所に所属し、九条と同様、事態を冷静に見るパートナーという役割だが、2人を出会ったばかりにすることで、見る者が常識人の烏丸の視点から九条に接していくという巧みなアレンジ。ちなみに烏丸と九条には過去から縁があるのが明らかになっていき、大きな見どころだ。
正義と悪の境界線が曖昧なので、もやもやするという人もいるかもしれないが、九条に救われた者が最期は裏社会で命を落としたり、片やアウトローの更生を救ったりと希望を感じさせる展開も。リーガルドラマというより世の矛盾を真正面から見つめた、極めてリアルな社会派ハードボイルドである。ちなみに同じ原作者による『闇金ウシジマくん』と同様、刺激的な暴力やドラッグの描写がふんだんで、16+指定が付いている。

Netflixシリーズ「九条の大罪」独占配信中
一方、九条の事務所に出入りする司法ソーシャルワーク団体の女性、薬師前役を演じるのは池田エライザ。これも原作ファンにとっては絶妙なキャスティングではないか。
ひとつだけネタバレするとこのシーズン1で物語は完結しない。難しい役どころに挑んだ俳優陣、配信ドラマ『ガンニバル』でも好演を見せた柳楽、ナイーブさが魅力の松村、底知れぬ迫力にみちた町田、いずれも素晴らしい。しかもシーズン1の途中からは、九条を破滅に導きかねない大物ヤクザ京極役をムロツヨシが、その部下のAV制作会社の社長・小山役をお笑い芸人の長谷川忍(シソンヌ)が、さらに九条と強い関係がある検事役を生田斗真が演じていて充実ぶりに驚かされる。
第1話などを演出したメイン監督は、『カルテット』など数々のドラマや映画『いま、会いにゆきます』『花束みたいな恋をした』の名手、土井裕泰。これほどハードな作品は初めてでは。九条の事務所は東京・下町にある設定だが、ビルの屋上の場面は横浜の繁華街の雑居ビルでロケ。VFXを使い、わざわざ背景に東京スカイツリーを映り込ませるなど、アナログ好きである昭和の映画好きも、この凝った演出に思わずにやりだろう。
同じNetflixで最も近い作品は大ヒット作『地面師たち』か。それにしても、Netflixのもとで本作を作ったのは、土井監督が所属するTBS。時代は変われば変わるもんだ。

Netflixシリーズ「九条の大罪」独占配信中
今回ご紹介した作品
Netflixシリーズ「九条の大罪」
- 配信
- Netflixにて独占配信中
情報は2026年6月時点のものです。














