松本侑子さんのドラマ批評

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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社内お見合い

2022/04/22公開

Netflix視聴ランキング1位獲得のドキドキ、時々爆笑の王道オフィスラブコメディ

Netflixシリーズ『社内お見合い』独占配信中

 こんにちは、作家・翻訳家の松本侑子です。これから韓流ドラマをご紹介させて頂くことになりました。韓流ファンの1人として、激推しドラマを楽しくご案内させて頂こうと思います。

 最初のオススメは『社内お見合い』。抱腹絶倒のロマンチック・ラブコメディで、ウキウキ、ワクワク、ドキドキが満載の傑作です。
 ヒロインは食品会社の商品開発部で研究員として働く20代のシン・ハリ。彼女には財閥令嬢の親友チン・ヨンソがいます。ヨンソは、親から財閥の子息と見合いをするように命じられますが、政略結婚がいやで、運命の人と恋をして結婚したいと考えています。

 そんなヨンソは、親から、また財閥の御曹司との見合いを命じられ、主人公のハリに、自分の代わりに行って、破談にしてほしいと頼みます。そこでハリは、ニセの令嬢になりすまして見合いに行き、男性が嫌がる振る舞いをして、断られるように演技をすることになります。

 ハリは、身元がバレないように、かつ、相手の男性に嫌われるため、見合いにはふさわしくない派手な姿に大変身。脱色メッシュ入りのロン毛のカツラで髪型を変え、ケバい厚化粧、服もミニスカに。
 その恰好で、待ち合わせの高級ホテルのラウンジに出かけると、惚れ惚れするような長身の美男子がいて、思わずうっとり。しかし渡された名刺には、自分の勤務先の会社のロゴがあって目が点になり、おまけに肩書きは社長と書かれていたのです! 実は、見合い相手は、ハリの会社に就任したばかりの新社長カン・テムだったのです。彼は創業者の孫息子ですが、長らく米国にいたため、2人は初対面でした。

 ハリは、身元を知られる前に早く帰ろうと、奇妙キテレツな女のふりをして逃げ出し、これで絶対に断られると安堵しますが、カン・テム社長は、型破りな彼女の自由奔放さが気に入り、「きみと結婚します」とプロポーズ。
 以後、ハリは、会社でカン・テム社長を見かけるたびに、バレないように顔を隠して逃げ回る羽目になりますが、ついに……。

『社内お見合い』は、美男美女が織りなす胸キュンのラブロマンスと、大爆笑のコメディが交互に配置され、息もつかせぬ面白さ、おかしさ、楽しさ満載です。

 とにかくヒロインのシン・ハリが魅力的。彼女は会社では仕事熱心で意欲的、夜は実家のチキン料理屋を手伝う働き者。明るくて、元気いっぱいで、おしゃれが大好き。会社員のときは茶系やグリーン系の落ち着いた色合いのゆったりしたジャケットとパンツルックの仕事着、ニセの令嬢として社長に会う時は、ギャル系のカジュアルが可愛い。

Netflixシリーズ『社内お見合い』独占配信中

 テム社長もクールで有能な敏腕社長ぶりが魅力的。オフィスでは前髪を少し上げて額を出し、スタイリッシュなスーツ姿。オフのときは前髪を下ろして、カジュアルな服がキュートで女性の心をわしづかみに!

 テム社長は、最初のうちは、政略結婚に疑問をもたない男性で、子どものころに両親を亡くしたせいもあって、人間的な愛情を知らない孤独な一面がありますが、そんな彼が、両親に愛されて育ったハリのぬくもりに触れるうちに、顔つきが柔らかくなり、自分の弱さを女性に伝えられるようになります。

 この主役カップルのほかにも、親友ヨンソが一目惚れした男性との肉食的な熱い展開、別の驚きのカップル誕生と、複数の恋が進行するドキドキ感。
 脇役の存在感も見事です。実はハリには、片想いの男性がいて、その彼とカン・テム社長とハリの三角関係も見どころです。ハリの職場の女性部長、男性次長、部下、そしてテム社長の祖父にあたる創業者の会長(往年の映画スター、イ・ドックァ)の名演技も楽しんでください。

 この作品では、劇中劇として「がんばれ!クムヒ」というTVドラマが放送され、会長などが見ています。これはチキン料理屋の娘シン・クムヒと財閥の御曹司が恋をするも、周囲に反対される波乱の物語で、ハリとテム社長の恋と同時進行するのです。この劇中劇ドラマの演技が実にオーバー・アクションで、おなかを抱えて笑い転げること必至です。

 ドラマの面白さを支えているのは、テンポの早い脚本、ハリ役の女優キム・セジョンのコメディエンヌとしての才能ですが、喜劇的な効果音と凝ったCG(始祖鳥など)も注目に値します。
 韓国では放送の回を重ねるごとに視聴率が上昇、配信のNetflixランキングでは日本第1位、全世界の非英語ドラマ第4位と世界的なブームになっています。

 ハリ役を好演するキム・セジョンは、歌唱力抜群の歌手でもあり、『愛の不時着』の挿入歌「私のすべての日」をソロで熱唱。テム役のアン・ヒョソプはソウル生まれ、カナダ育ちで英語が堪能、長身、甘く端麗な顔だち、スポーツ万能、ピアノを演奏、ダンスに歌もこなす新しい世代のスターです。

予告編

今回ご紹介した作品

社内お見合い

Netflixで独占配信中

情報は2022年4月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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