松本侑子さんのドラマ批評

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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あやしいパートナー~Destiny Lovers~

2025/9/26公開

恋愛&法廷ドラマの裏テーマは、検察の不正

©SBS

 人気俳優の男女2人が共演しているため、明るいラブコメ&法廷ドラマに見えるのですが、実は、検察の不正がテーマ、という硬派なドラマです。

 ヒロインは、司法試験に合格して、司法研修生となったウン・ボンヒ(ナム・ジヒョン)。
 彼女は地下鉄で尻をさわられ、隣にいた男が犯人と思いこみ、大声をあげます。

 その男は、検察で検事をつとめるノ・ジウク(チ・チャンウク)。
 もちろん犯人は別にいます。

 ボンヒは、その直後、自分の恋人が別の女性と浮気をしているの目撃。
 恋人を問い詰めて口論して、別れ話に発展。

 彼女は一人でやけ酒を飲み、歩けないほど泥酔、酩酊して、朝気がつくと、検事ジウクの家で寝ていたのです。

 そんなボンヒが研修生として検察に行くと、なんと指導教官の検事は、ジウク。
 出だしから、面白い展開です。

©SBS

 さらにボンヒは、浮気をした元恋人に、冗談まじりで「殺してやる」、なぞと憎まれ口をたたいたところ、その元恋人が、ボンヒのアパートの部屋で、ナイフで刺された死体となっていたのです。

 第一発見者のボンヒは、殺人の容疑で緊急逮捕。

 警察は、恋人にふられた若い女のボンヒが、恨みから男を殺害した、というシナリオを作り、大々的にテレビが報道。

 運の悪いことに、元恋人の父親は、検察のトップ。
 息子を殺された父親は、悲しみから怒り狂い、有力被疑者のボンヒを必ず有罪にしろと、担当検事に圧力をかけます。

 その担当検事は、なんとジウク。ジウクは、ボンヒの無実を主張する弁護人と激しく対立します。

 すると検察トップの父親は、証拠となる凶器をねつ造して、ボンヒを有罪にしようと画策。

 正義感の強い検事ジウクは、凶器の証拠としての曖昧さを法廷で語り、結果、ボンヒは証拠不十分で無罪放免。弁護士として働き始めます。

 いっぽう、検事のジウクは、ボンヒを無罪にしたため、検察トップの怒りを買い、職場を追放され、民間の弁護士に。

 では、真犯人は誰なのか? 

©SBS

 真犯人が見つからない限り、ボンヒは、証拠不十分で釈放されただけで、殺人事件の元被疑者、と後ろ指をさされ続け、いつまでも肩身の狭い思いをします。

 ジウクも、逮捕したボンヒを無罪にしたため、検察のメンツをつぶしたと言われ、検察に戻ることができません。

 真犯人を見つけなければ先がない! という利害が一致するボンヒとジウクは、2人で協力して犯人を捜すことになり、やがて恋が生まれます。

 しかし、その真犯人は、次々と人を殺していき、連続殺人事件へ拡大。

 私たち視聴者は、途中で、「真犯人は、あの男かな?」とわかるのですが、ではなぜ真犯人は、次々と人を殺すのか?

 その理由として、過去の犯罪捜査で行われた検察の不正が浮かび上がってきます。

 犯人グループの一人が、権力者の息子だったため、検察はわざと不起訴にしたのです。

 その不正への復讐が行われているのではないか? くわしくはドラマで……。

©SBS

 またボンヒとジウクの両親は、同じ日に、同じ火災で死んでいました。

 その捜査でも、検察は、子どもに嘘の証言をさせて、無実の人に放火の罪をなすりつけ、ボンヒにもジウクにも悲劇的な過去があったことが、次第にわかってきます。

 このように、本作は、一見するとラブ・シーンがすてきなロマンス作品ですが、複数の事件で行われた検察の不正が重要なテーマなのです。

 たとえば、証拠をねつ造して無実の人を有罪にしたり、逆に、権力者が不法行為をしても不起訴にしたりといった腐敗です。

 それを本作は鋭く追求していくあたり、韓国ドラマ制作者の社会意識の高さ、ドラマにかける意気込みを見る思いがします。

 日本では、このリメイクドラマが、今年2025年に放送されました。
 日本版も、検察の腐敗が、隠れた裏テーマになっているのでしょうか?

 韓国版では、若い女性弁護士ボンヒの成長と恋を、時にコミカルに、時にシリアスに、時にロマンチックに熱演したナム・ジウクが、SBS演技大賞を受賞。

「真犯人」役の俳優キム・ヒョンギュの狂気を感じさせる怪演ぶりも、特筆すべきでしょう。

 ドラマのサブタイトルは「Destiny Lovers 」、訳すと「運命の恋人たち」。
 親の代からの複雑な因縁がある運命的な2人の恋を描く脚本の凄さ。ぜひドラマでお楽しみください。

©SBS


松本侑子さんのYouTube公式チャンネル「赤毛のアンの世界」開設

今回ご紹介した作品

あやしいパートナー~Destiny Lovers~

配信
U-NEXTにて配信中

情報は2025年9月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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