地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
リビングの松永さん
2024/2/8公開
持続可能なときめきを体感できそうなラブコメ
「リビングの松永さん」で主演の中島健人。もし、帰宅してリビングに中島健人がいたら……そんな夢のようなシチュエーションを思い浮かべながらドラマを楽しみにしていたら、突然のグループ卒業、そして熱愛発覚のニュースが入ってきて、現実に引き戻されました。皆の王子様だったケンティが、29歳を迎えて、人生の転機を迎えているようです。せめて画面ごしに眺めて、アイドルの残り香を感じたいです。
中島健人が演じるのは、同じ29歳という設定の、グラフィックデザイナーの松永純。ピュアな女子高生園田美己が、親の転勤で和歌山に引っ越すことを告げられるも、高校の友人と離れたくないので叔父の家へ居候しようとします。いつのまにか叔父の家はシェアハウスになっていて、その住人の1人が松永でした。第一印象は、松永が仕事の電話で相手にキレている姿を目撃したこともあり、あまり良いものではありませんでした。シェアハウスに引っ越すことになると、松永はシェアハウスのルールを教えたり、荷ほどきを手伝ったり、呼びやすいからと勝手に「ミーコ」というニックネームをつけたりして、彼のペースに巻き込まれる美己。ぶっきらぼうに見えて実は世話好き、というギャップ萌えキャラです。
引っ越しできたと思ったら、親がシェアハウス入居を心配して美己は連れ戻されそうになります。母親に対し「俺が美己さんの保護者代わりじゃダメですか!?」と、提案する松永。「シェアハウスにいるみんなは家族みたいなもんだし、みんな信頼できる奴たちです!」と、会って間もない若者に直談判されてあっさり受け入れてしまう母親。マダムキラーということなのでしょうか。
松永と美己は一回りくらいの年齢差。この「保護者代わり」という設定が、意外にもあとで効いてきます。年上でクールな印象だった松永が、好物のパンを食べて無邪気な笑顔になる姿を見て、美己は内心、かわいいと思ってしまいます。すでに第1話で恋のフラグが……。
第2話では、松永がリビングで半裸になる刺激的なシーンから始まりました。腹筋が割れている鍛え上げた肉体を披露する中島健人。テカリ感が妙に生々しい、29歳のリアル。シェアハウスのリビングに半裸の男性がいたら……親御さんは入居を許さなかったのではないでしょうか。
半裸を見せたあとは、「門限5時半」「ムダ遣い禁止」「早寝早起き」という厳しいルールを美己に言い渡していて、洗脳しようとしているかのようです。ある時、美己がスマホを落として連絡できないまま門限が過ぎてしまったら、その間松永からの大量の着信が。保護者として心配しての行動かもしれませんが、若干のモラハラ感が……。その後、自分のデザインの仕事を見せたくて早朝に美己を叩き起こすシーンも。中島健人が演じているからギリギリ許されるのかもしれません。
グラフィックデザイナーとして有能という設定ですが、第3話では、新入居者の北条凌の歓迎会を、遠方のグランピング会場で開こうとしていて、実は暇なのでは、という説が浮上。リアリティ番組「テラスハウス」の時も思いましたが、本当に忙しい人はシェアハウスで社交している場合ではありません。でも、高校生の美己には、年上の社会人で、デザイナーというかっこいい肩書きの松永は、輝いて見えたことでしょう。
クライマックスは「保護者」としての手当てシーンです。他のシェアハウスのメンバーがなかなか来なくて松永の手料理がムダになると思った美己が、食べ過ぎて腹痛でダウン。ベッドに横たわった美己を心配した松永は「ほら、さするか」「このあたりか」と、お腹に手を当てていました。「保護者プレイ」の新境地。お腹とはきわどい場所ですが、これがいやらしくないのは、「セクシーサンキュー」を連発しても下品にならなかった中島健人の人徳かもしれません。
高校生と29歳なので、スキンシップが過ぎるとドラマとはいえ、淫行っぽくなってしまいます。今後の展開も、寸止め状態をキープするのでしょうか。簡単にラブシーンになるより、持続可能なときめきを体感できそうです。
今回ご紹介した作品
リビングの松永さん
- 放送
- カンテレ・フジテレビ系で火曜23時~
- 配信
- FOD、U-NEXT、TVer、カンテレドーガで配信中
情報は2024年2月時点のものです。