辛酸なめ子さんのドラマ批評 - 俺たちバッドバーバーズ

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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俺たちバッドバーバーズ

2026/2/6公開

レトロ理容室を舞台に繰り広げられるアクション・コメディ

 美容師のドラマというと、まず「Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜」を思い出す人が多いかもしれませんが、それから四半世紀経ち、テレ東で始まったのは「俺たちバッドバーバーズ」。どこか木村拓哉に似ている中島歩が主演している、というのに不思議な縁を感じます。といってもおしゃれな美容室ではなく、片田舎のワケあり理容室が舞台ですが……。

「俺たちバッドバーバーズ」は、中島歩と草川拓弥がダブル主演のアクションコメディー。ドラマが始まってみると、まず中島歩の不思議な髪型が気になってストーリーがしばらく入ってきませんでした。本人が雑誌のインタビューで語っていましたが、襟足がやたら長くてパーマがかかっているスタイルは「世界で一番ダサいと称されている髪型」で「マレット」というそうです。本人の発案でこの髪型になったそうですが、ダサいのにどこか詩的に感じられるのは、国木田独歩の玄孫だからでしょうか。共演の草川拓弥は超特急のメンバーで、クールさと可愛さが絶妙なバランスで共存しているのが魅力です。

 舞台は田舎町にたたずむレトロな外観の月白理容室。年季が入ったお店と裏腹に、店主の月白司(草川拓弥)は意外と若く、実は理容師以外に裏の稼業がありました。それは「裏用師」。お客がトラブルに巻き込まれたり、自分では対処できない問題を抱えたときに、300万円という高額で解決してくれるという、裏の便利屋さんのような仕事です。

 そこに流れ着いてきたのは、元美容師の日暮歩(中島歩)。原宿の美容院でカリスマ美容師を目指していたものの、薄給やいじめで挫折。自分探しの旅の途中に月白理容室を見つけて、お金がなかったこともあり、「俺を雇ってください」と直談判。「俺、理容師になりたいです!」と訴える日暮歩に、月白司は体力テストを課しました。縄跳びやバーベル、そしてナイフを使った武闘の擬似演習まで。どうやら普通の理容師ではない裏の理容師にスカウトされ、恐怖にかられた日暮歩は理容室を飛び出しました。高身長で筋肉もあって一見強そうなのに、メンタルは弱めというギャップを感じさせるキャラです。そのあと日暮歩は野外でお金もスマホも盗られてしまい、近くの普通っぽい美容院に飛び込んで、そこで働かせてほしいと頼み込みました。人は窮地に陥って焦っていると、さらにダークな方向に引き寄せられてしまうようです。おしゃれな美容室でなぜか「ウィー」「メルシー」とフランス語を交えて接客し、お客さんの髪をカット、店長に能力も認められて幸先の良いスタートでしたが、ここの店長にも裏の顔がありました。お客のヘアスタイルを完璧にしたあと、それを永久保存したくなるという性癖だったのです。この日も殺して標本にでもするつもりか、女性客に襲いかかろうとしていたところを、日暮歩が目撃。日暮歩は急遽月白司に助けを求め、300万円払うことを約束し、彼に美容室店長を懲らしめてもらう、という展開でした。一瞬で店長を倒すキレのいいアクションシーンも見どころです。

 借りた300万円ぶん、日暮歩は月白理容室に住み込みで働いて返すことに。なぜか毎日カップ焼きそばばかり食べている月白司の食生活を見て、もっと野菜を食べるべきだとアドバイスする日暮歩。同じものばかり食べ続けるのには、両親との幸せな過去を思い出したいという理由があったようです。月白司には、幼い頃両親が殺されたというトラウマがあり、自分のような人を増やさないために、トラブルを解決する裏稼業を始めたとのこと。過去の話を打ち明けて、少しずつ距離が深まっていく2人。ついに月白司は日暮歩の手料理を食べるまでに。第2話では、大切な財布をなくしたというワケありおじさんの依頼で周辺地域を探し回り、木の上の財布を取ろうとして肩車するシーンもありました。2人のバディ感がどのように変化していくのか見るのが楽しみです。

 2人の関係性以外の癒しポイントといえば、やはりレトロな街や店、家などの舞台でしょうか。月白理容室も、月白司の自宅も、昭和のエモさが渦巻いています。古い食器棚やチープなテーブルクロスなど、おしゃれ感はないのですが懐かしいテイストです。亡くなった両親が住んでいたままなのかもしれないと思うと胸が熱くなりますが……。そして外の商店街や公園なども昭和の風景が色濃く残り、ロケ地はどこか調べたら茂原市周辺のようでした。生活感が薄いおしゃれなセットや背景のドラマが多い中、エモくてレトロな空気感は貴重で、昭和世代にも人気が出そうです。

今回ご紹介した作品

俺たちバッドバーバーズ

放送
テレビ東京系にて毎週金曜日深夜24時42分~放送中
配信
U-NEXTにて配信中

情報は2026年2月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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