辛酸なめ子さんのドラマ批評 - フェイクファクトリップス

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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フェイクファクトリップス

2026/6/12公開

因縁のライバル男子同士のラブストーリー

画像:フェイクファクトリップス

©末広マチ・竹書房/「フェイクファクトリップス」製作委員会

 日本のBLドラマもかなり攻めています。BSフジで始まったドラマ「フェイクファクトリップス」は、人気の漫画が原作の、因縁のライバル男子同士の物語。高校時代から何かにつけて競い合ってきた四ツ谷良(堀海登)と志藤全(佐藤友祐)の2人が同じ会社で再会し、営業部のライバルとして新たな境地へ……。というストーリーで、どうやってボーイズラブに発展するのか気になりつつ第1話を観始めました。2人ともビジュアルのレベルが高く、黒髪でアイドル系の甘いルックスの堀海登と、茶髪で童顔で猫みたいな佐藤友祐の組み合わせもバランスがいいです。

 お互い営業部のエースとして成績を競うだけでなく、突然腕相撲を始めたり、2人のバトルは社内の名物となっていました。負けた方が言うことを聞く、というルールもあり、常に本気の2人。ある日、四ツ谷良の営業成績1位を祝い、どちらが早くお酒を飲めるか勝負することに。酔いも入ってきてお互いのモテ自慢になり、全は「大学時代に彼女持ちの男に告白されたことがある」と言い出し、それに食いつく良。

「俺はお前のこと抱くくらいだったら好みじゃない女抱いたほうがマシだな」と、なぜか相手を抱く前提です。良は女性にもモテていましたが、実は男性とも経験がありました。

「お前みたいな下手くそに抱かれるなんて俺が女でも嫌だね」と応酬し合う2人。ついには「全こそベッドの上ではマグロだろ」「そっちこそ自分本位の早漏だろ」「お前の方が早い」「いやお前の方が」と、あられもない下ネタ全開に。くたびれてヨレヨレのサラリーマンがこんな会話していたら萎えるだけですが、若くてシュッとして仕事もできる有能な2人が言い合っていると不思議と受け入れられます。

 お酒の力でおかしくなったのか、仕事のしすぎで解放されたのか、2人はBL史上前代未聞の勝負を始めます。それは、自分で自分を慰めて先に到達した方が負け、できるだけ長く持たせられれば勝ち、という……。大胆すぎる展開に意表を突かれ、これは今までのドラマとは違うかも、と期待が高まります。その勝負は薄暗い部屋で行われ、手をゴソゴソ動かす2人。「何この状況」と、全は我に返りかけますが「さっきから手止めてるのバレてんだよ」と良が指摘。それどころか全を刺激して到達させてしまいます。「はい、俺の勝ち」「最悪だ……」と頭を抱える全。良が勝ったので全は勝者の言うことは聞かなければならず「男の経験あんなら抱かせろよ」という要求に、「男に二言はねえよ」と答える全。第1話で行為にまで至ってしまうとは。いい感じになるのに5.6話はかかるかと思っていたので驚きました。

 一夜を共にして体を重ねた2人。それだけでは終わりません。体の関係にとどまらず「先に落としたほうが勝ちな」と新たな勝負がスタート。ちなみにこの「先に落としたほうが勝ちな」というセリフ、大ヒットしたタイBL「2gether the series」の「そんなに見つめられたら、落ちるまでキスするぞ」という名台詞に次ぐBLの名言かもしれません。

 2話では、なにごともなかったように出勤しながらも、つい昨夜のめくるめく情事を思い出す全。ベッドシーンと、スーツでの出勤姿のギャップがいいです。そこに入ってくる良。昨夜の話になり、全が男性経験があると言ったのは実はハッタリで、昨夜が初体験だったことを知り、良は驚きます。責任感が芽生えるのかと思ったら「あれがはじめてって、あのときのお前の体エロすぎるだろ!」と、予想外の感想でしたが、感慨深けな表情。それでもまだ「先に落としたほうが勝ち」という勝負は続いています。2話は攻めと受けが逆転し、また刺激的な展開に。良の家で食事したあと、キスにもリラックス効果があるとか言って全の方から積極的にキス。挑発されて覆い被さる良。しかし仕事に疲れた全はキスされながらも寝落ちしていました。高校時代、切磋琢磨していた2人の夢を見ながら……。そのあともエモいシーンは続き、ソファーで抱き合いながら「これからは俺だけにしろよ」と、良を上目遣いで見つめる全。でもすかさず「って言うとでも思ったか、バーカ!」とまた喧嘩腰になっていて、じゃれ合いがかわいくて癒されます。

 3話では、仕事関係のクライアントのパーティーに出席した2人。お互い取引先の女性社員と楽しそうに談笑している姿をチラ見して、ジェラシーがかき立てられたようです。そのあと、女性たちに飲み会に誘われて行くのを迷っているという良に「行くなよ」と、全。「何? 妬いてんの?」という良にキスし、その流れで2人は手を取り合って個室へ……。いつの間にか場所を移動し、全の家でまたキス。全がシャワーを浴びにいくと、思わず彼のジャケットの匂いを嗅ぐ良。自分が全を落とすゲームだと余裕を見せていたはずが、実は良は以前から全のことが大好きだったようです。「はじめから俺の負けなのに……」とつぶやく良。シャワーから出た全に、自分の思いや、高校時代一緒にがんばれたことへの感謝を語ります。「先に落とした方が負け」という勝負はどこに行ってしまったのか、最初から落ちてい た、という告白のようですが、まだ勝負は続行します。「実は昔から好きだった」というのも恋愛ドラマで最もエモいシチュエーションです。すでに落ちているのにこのあとどうやって勝負の判定をするのか、さらに深みに落ちることで勝敗が決まるのでしょうか。2人で性に溺れて退廃的になって堕ちていく、という展開でないと良いのですが……。

 4話は、秘書課の美女、桐谷さんが登場。良への思いが強くなっていく自分に戸惑っていた全は、魅力的な異性と会うことで冷静さを取り戻そうとします。秘書課との飲み会で、桐谷さんとも距離が縮まりましたが、帰りになぜか良に電話をかけてしまい、呼び出して夜の街をただ散歩する2人。まだドラマはあと5、6話続くので今後も波乱が起きそうな予感です。2人の間に誰か割って入ってきて、いったん疎遠になるとかでしょうか。でも、これまでにない導入のドラマだったので、予想を超えるような、エロさとエモさが高まる展開を期待します。

今回ご紹介した作品

フェイクファクトリップス

放送
BSフジテレビ系にて毎週木曜24時~放送中
配信
FODにて配信中

情報は2026年6月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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