辛酸なめ子さんのドラマ批評 - ショードラpresents セイカイガワカラナイ

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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ショードラpresents セイカイガワカラナイ

2026/10/13公開

TikTokで人気の縦型ショートドラマを地上波放送

画像:ショードラpresents セイカイガワカラナイ

©ABCテレビ

 このところAIが出てくるドラマが増えてきていて時代を感じます。AIと人間の関係性ががテーマの「AIに話しすぎた男」(日本テレビ系)や、超高性能の「AIハヤト」が活躍する「VIVANT」(TBS系)など。AIで生成した映像も出てきていて、これからドラマ業界では人間とAIが切磋琢磨していくのでしょうか。

 今回取り上げさせていただくドラマ「ショードラpresents セイカイガワカラナイ」も、AIが重要な存在感を放っていました。そしてこの「セイカイガワカラナイ」というドラマも、新しいジャンルである縦型ショートドラマシリーズから出てきたそうです。「正解がわからない人間同士の対立」をテーマにした、TikTokで人気の縦型ショートドラマで、いきなり核心的なセリフから始まるスピーディな展開が特徴。約1分でかなりの情報量のコンテンツです。SFや近未来的な要素の作品もあって、今回の地上波ドラマの伏線のよう。縦ドラの構成に慣れた製作陣が、通常の時間感覚の地上波ドラマを作って、不自然にならないかと思ったのですが杞憂でした。地上波に合わせた、どの年代の人にも見やすい構成になっていました。起承転結がはっきりしているのは、縦ドラの法則を受け継いでいるのでしょうか。

 主役の未咲を演じるのは元日向坂46の河田陽菜、姉の七海は中井友望、母親のみちこは櫻井淳子が演じています(敬称略)。主人公の同級生役や、AIサービスの営業スタッフなどは縦型ドラマ出身の役者さんが演じているようです。縦ドラは地上波出演へのルートにもなっています。

 ドラマは未咲が通う学校のシーンから始まります。友人とAIについて話していて、注目度が高まっている「死人を生き返らせる」サービスの話題になりました。「気持ちわるっ」と拒絶反応を示す友人。未咲はノーリアクションでした。実際のこのようなサービスは海外などでも始まっていて現実的にありそうな設定です。

 自宅に帰ると、母親が出迎えてくれました。エプロン姿の優しそうなお母さん。しかし実際はお母さんこそ「死者蘇生AI」サービスを利用して作られたロボットだったのです。見た目は全く人間と変わらないフィジカルAI。未咲の父親はすでに亡くなっており、3年前に母親も倒れて帰らぬ人になってしまいました。姉はすでに家を出ており、AIお母さんがいないと未咲は自宅で一人ぼっちになってしまうので、このサービスを受けたい気持ちも理解できます。しかしここまで完成度の高いAIなので、利用料はかなり高額で、月額50万円の請求書が届いてため息をつく未咲。料理を作ってくれたり簡単な家事もこなしてくれるので、これだけ高いのも仕方ないかもしれません。ただロボットなので充電が足りていなかったのか、急にバタッと倒れることも……。

 久しぶりに実家を訪ねた姉の七海は、AIお母さんに依存気味の未咲を見て「だめだよ未咲」「お母さんは望んでない」と反対。ロボットだと思うと、お母さんの抑揚のない喋り方や笑顔が不気味に思えてきます。

「それにしても少し痩せたんじゃない。ちゃんとご飯食べてる?」と。いかにも世の母親が言いそうなことを七海に問いかけるAIお母さん。七海は「お母さんはもういないんだよ!  向き合わないと」と、未咲に訴えます。感情表現が強めなのも縦ドラの余韻を感じます。

 翌朝、姉妹の前に現れた母親はなんとセーラー服を着用。若い彼氏のケンちゃんとデートに出かけるというのです。そういえばこのサービスに登録するとき、本人のスマホやチャット履歴を元に、亡くなった母親のキャラクターを作る、と言われていたことを思い出した未咲。営業スタッフが「ご家族に言えないことも正確に再現されます」とあらかじめ通告していました。母親は若い彼氏がいたことを娘たちには隠していたのでしょう。今後、現実でも亡くなった人を再現するAIで、どこまでのデータを取り込むか問題になってきそうです。

「あんなお母さんの姿見たくなかった」とショックを受ける未咲と、「これ以上はやめよう」と「死者蘇生AI」サービスを中断することをすすめる七海。しかし未咲は、反抗期で生前の母親に冷たく当たってしまったことを後悔していたのです。夜遅くにフラフラと出歩き、母親に注意されると口答え。その直後に母は倒れてしまいました。

 しかし家から母親の手書きの日記が出てきて、そこには「最近娘が反抗期。腹も立つけれど結局嬉しさが勝つ」などと娘への愛情が綴られていたのです。

 デジタルデータが主流になっている今、あえて手書きの日記を残していた母みちこ。世代的に、まだ手書きの風習があったのでしょう。エンディングノートも含めて、本当に大切なことは手書きで残すほうがいい、というメッセージ性を感じます。

 シュールな設定で、途中理不尽なできごとがありながら、終盤で感動に持っていく、縦ドラの演出の手腕が表れているドラマでした。

今回ご紹介した作品

ショードラpresents セイカイガワカラナイ

配信
ABEMAにて配信中

情報は2026年10月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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