村上淳子さんのドラマ批評

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS

2022/07/04公開

日本漫画が原作!海外ドラマの新潮流「泰流」入門編におすすめ

©神尾葉子/集英社 ©GMMTV

 ポスト韓流として、いまいちばん熱いのがタイのドラマです。8月には人気俳優が勢揃いして、なんと初のファンフェスが埼玉アリーナで開催される勢いで、韓流の次は海外ドラマ業界がまったく想定外の「泰(たい)流」になりました。

 ブームのきっかけとなったのはYouTubeで公開されていた大学を舞台にしたBLラブコメ『2gether』(2020)。偽装恋愛から始まる可笑しくも切ないストーリーと主役のイケメンふたりが爆発的人気に。そのふたり、彫りの深い美男のブライト(ワチラウィット・チワアリー)と爽やかキュートなウィン(メータウィン・オーパッイアムカジョーン)が主演で、放送前から話題沸騰だったのがタイ版『花より男子』の本作。言わずと知れた神尾葉子原作、日本の超ヒット漫画のドラマ化です。2001年台湾で初めてドラマ化されたあと、日本、韓国、中国でもリメイクされ主役メンバーはそれぞれスター街道を歩いてきました。

「F4」とは花の4人組=Flower fourを略した眉目秀麗なおぼっちゃま集団で、名門高校のスクールカーストの頂点に君臨。

©神尾葉子/集英社 ©GMMTV

 貧しい家庭に育った女子高生ゴーヤーは超お金持ちの子息ばかりが通うこの学校にスポーツ奨学生として転校。目立たないように学校生活を送るはずが「F4」とトラブルを起こしてしまい、イジメのターゲットにされるのですが…。そののち「F4」リーダーのタームとゴーヤーの恋が展開していきます。

 ストーリーのベースは原作と同じですが、タームに盲目的に恋するストーカー女子の存在や、F4の反対勢力のハッカー、イジメがスマホからSNSで拡散されるなど現代に合わせてアップデート。原作は約30年前に連載開始ですが、今回改めてタイ版を観て、格差社会の権力者による事件の隠蔽やイジメの連鎖は現代にも通じる普遍的なテーマだと痛感しました。本作はタイのドラマ賞5冠に輝く学園ミステリー『The Gifted』(2018)を手掛けたオー・パッターが監督を務めており、イジメの背景や御曹司の葛藤、毒親との関係まで浮き彫りにして問題提起した社会派の要素を加えたところも見どころです。

 財閥不動産会社の御曹司、オレ様キャラのターム(日本版では道明寺司)役に扮するブライトは、ヒョウ柄の派手な衣装にも負けないワイルド感が役柄にぴったり。これまで同役を演じた松本潤やイ・ミンホより威圧的な態度が様になり、ゴーヤーと恋に落ちた後の戸惑いと不器用さの落差が際立ちます。

©神尾葉子/集英社 ©GMMTV

 ウィンは個人的にはナイーブで芸術家肌のレン(花沢類)役だと予想していたのでガウィン(西門総二郎)役は意外でしたが、名家育ちのプレイボーイ役を好演。普段はムードメーカーなのに、いざとなると眼鏡を外して大立ち回りをするシーンでは新たに精悍な魅力が全開に。また真っ直ぐな頑張り屋のヒロイン、ゴーヤー(牧野つくし)役に抜擢されたトゥ(トンタワン・タンティウェーチャクン)が、素朴で愛嬌があって好感が持てます。これがドラマデビュー作とは思えないほど雑草のような強さを体当たりで演じました。

 伝統的な花飾りを作るシーンがあったり、トランスジェンダーの脇役を配置したりとタイらしさも加えて新たに進化した『花より男子』。懐かしさに浸りつつタイの文化と格差社会に触れられる作品なので、「泰流」に興味はあるけど主流のBLに抵抗がある人は、まずはこちらから観るのがお薦めです。

予告編

今回ご紹介した作品

F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS

U-NEXT独占配信中

情報は2022年7月時点のものです。

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