地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
瓔珞~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~
2023/01/27公開
知略と信念で皇后に上り詰めた元侍女の一代記
中国ドラマといえば主流は時代劇。量産される背景にはほとんどの作品のロケが行われる映画スタジオの存在があります。浙江省の金華市に想像を絶する巨大な映画村「横店(ハンディエン)」があり、撮影しやすい環境が整っているのです。
また、中国ドラマの関係者に聞いたところ、「ひと昔前は都会の暮らしをドラマにすると農村部の人たちが共感できない」という事情があったとか。ようは都会と農村の格差を見せないようにしていたわけですが、インターネットで情報が拡散する今は現代劇も数多く作られるようになりました。
このところ現代劇から時代劇まで怒涛のように新作が押し寄せていますが、これから時代劇を観始めるならお薦めは?と聞かれたとき、私が太鼓判を押すのが本作です。
せっかく見始めたものの中断してしまったという声を聞く理由は、時代劇ならではの法則をある程度知らないとなかなか入り込めないからだと思われます。
例えば「武侠」ものだと武術に精通するヒーローたちに欠かせない特技があり、ファンタジー色の強い「仙侠」ものだと道教の世界観を背景に、妖、魔、鬼などが登場し神通力を持った宝探しが定番というルールがある。また本作と同じ後宮ものでも、登場人物が多く背景がやたら複雑な作品も少し難易度が高いと感じられるのではないでしょうか。
それに比べ本作は、1話観ただけで主人公・瓔珞の性格がわかり、3話までで彼女を取り巻く人物相関図と物語の背景や伏線が見えてくる展開でスルッと入り込める。そのあとはもうどっぷりの面白さで2018年Google全世界検索ワードTV Show部門で1位、中国版エミー賞で4冠を獲得も納得!
舞台は最盛期の清朝、紫禁城。乾隆帝(けんりゅうてい)の時代。後宮で亡くなった姉の死の真相を突き止めるために女官として後宮入りした瓔珞。聡明で機転が効くところを認められて皇后・富察(ふちゃ)氏の侍女として仕えることに。姉の死と皇后の弟・傅恒(ふこう)に何か関係があるのではと推察した瓔珞は傅恒に接近しますが、彼の清廉さに気付きしだいに惹かれ合います。一方、予期せず瓔珞は乾隆帝からも寵愛を受けるのですが…!?
この瓔珞は実在の人物・孝儀純(こうぎじゅん)をモデルにしているのですが、愛憎渦巻く宮廷で乾隆帝に愛され最下層の身分から皇后にまで成り上がった女性がいたことが驚きです。
とにかくウー・ジンイェン演じる瓔珞が持ち前の負けん気の強さと知略で難局を切り抜けていく姿にスカッとします。“やられたらやり返す”女性版『半沢直樹』と“私、絶対、失敗しないので”の『ドクターX』の外科医・大門未知子を併せたようなキャラクターで女性が憧れる共感度の高いヒロインが誕生しました。
私利私欲やジェラシーという動機ではなく、やられたら報復する。損得勘定なく虐げられた人を見ると助けずにはいられない。逆に恩を受けた相手には必ず恩返しをする潔さと情の深さが瓔珞の魅力です。
ここからネタバレありです。
しかし、恋愛に関しては紆余曲折で思い通りにいかない。初めは姉の死に関わったと誤解していた傅恒と想い合う仲になります。(演じるシュー・カイは、弁髪でも際立つ国宝級美男で眼福至極!)彼は瓔珞を助けるために乾隆帝が決めた婚姻を受け入れ、結ばれない運命だと覚悟したふたりは心の深い部分で繋がっていきます。
のちに乾隆帝の寵愛を受け令貴妃となった瓔珞。
ふたりの男性から愛された彼女ですが、傅恒の最後の「問いかけ」への答えが切なすぎて…。
最後の最後まで大掛かりな陰謀が張り巡らされ、最終話、因縁関係のキャラたちの“激情”本音吐露合戦が凄まじい。
瓔珞の姉の死の真相を巡る復讐劇としても秀逸の面白さですが、ヒューマンドラマとしても見応えがある味わい深い作品なのです。
今回ご紹介した作品
瓔珞~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~
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情報は2023年1月時点のものです。