2024/3/7配信

インフルエンサーの闇に切り込むサスペンス

Netflixシリーズ「セレブリティ」独占配信中

　いつのまにかユーチューバーが子供たちの憧れの職業になり、ユーチューブの登録者数やインスタグラムのフォロワー数が芸能人の人気のバロメーターとしても報道されるようになりました。

　かつては有名になって大金を稼ぐ人のほとんどは芸能やスポーツの世界で実績を積み重ね頂点を極めた人でしたが、いまやネットの世界ではまったくの無名から一攫千金を狙える時代。

　本作、『セレブリティ』のヒロインであるソ・アリもその成功者。多数のフォロワーを獲得し、世間に大きな影響力を持つ「インフルエンサー」と呼ばれる存在に。

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　しかし、『セレブリティ』というタイトルから華やかな世界が描かれるのかと思いきや、のっけから3ヵ月前に死んだはずのアリがセレブの秘密を暴露配信するという意外すぎる導入で予想を大きく裏切られました。

　本作は現代を象徴するSNS（ソーシャルネットワークサービス）がテーマゆえ、コミック原作で若手の制作者が手掛けたに違いないと思いきや、これも想定外で脚本は『イ・サン』（07）や『トンイ』（10）など時代劇のヒットメーカーである女性脚本家キム・イヨン。監督・演出は坂元裕二脚本作『Mother』（18）の韓国リメイク版や『悪の花』（20）を手がけたキム・チョルギュ。

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　キャリアと実績があるふたりがタッグを組んだ作品だけに、冒頭の死者からの暴露という仕掛けで意表をつき、ハラハラ要素も加えたオリジナルストーリーはインフルエンサーの光と影を描くだけでなく、匿名で発信できるSNSの恐ろしさを見応えたっぷりに描くサスペンスになっているのです。

　ヒロインであるアリは裕福な家庭に育ちながらも、18歳の頃に父親の会社が倒産し人生が激変。アメリカの有名大学への進学も断念。現在は無名化粧品メーカーの訪問販売員の仕事をしていました。

　しかし、高校の同級生がインフルエンサーとして大人気なのを知り、SNSへの投稿を開始。すると持ち前のセンスと発信力で注目を集め、あっという間にフォロワーが増加しトップインフルエンサーとなり、自分のブランドも立ち上げ「セレブリティ」の仲間入りを果たすのです。

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　しかし、いきなり注目を浴びたアリへの風当たりは強く、人気インフルエンサーたちから総スカン。嫉妬の権化と化した彼女たちから攻撃を受け罠にハメられ、味方だったはずのフォロワーからも非難されることに──。

　有力なインフルエンサーは芸能人のように事務所に所属し、報酬額はフォロワー数が基準となり換算される。高いギャラを取れる広告案件にも関わる。それだけに競争も嫉妬も騙し合いも足の引っ張りあいも激しい。華やかな業界の光が強ければ強いほど、反面、闇は深い。プロフィールは嘘まみれ、フォロワーをお金で買う、なかには一流ブランドで身を固めるため身体を売ることも厭わない者もいるダークサイドが描かれているのですが、これは現実でもなきにしもあらずかもしれません。

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　韓国にはスプーン階級制度という表現があり、「金のスプーン」が日本で言う実家が太い富裕層。中間層は「銀のスプーン」、貧困層は「泥のスプーン」に例えられます。

　本作に登場するインフルエンサーのひとりは超富裕層でやりたい放題、それに対して中間層は成り上がるために策を弄し、熾烈な競争を繰り広げる。彼女たちを憎むのは貧困層という階級闘争の面もあるストーリーです。

　美人で意思の強い主役のアリを演じるパク・ギュヨンがハマり役。あのJ.Y. Park（パク・ジニョン） のJYPエンターテインメントにスカウトされ、演技練習生になったのが女優になるきっかけだった（現在は別事務所）だけに素材の良さは文句なしで、本作ではキリリとした個性を光らせました。

　アリをサポートするコスメ会社のオーナーにロックバンド「CNBLUE」でドラムを担 当しているカン・ミンヒョク。俳優としてもソフトな印象を魅力に活躍中で、本作では メイドが靴を脱がせるのが当たり前の富豪御曹司をカッコよく演じています。

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　かつては恋愛ドラマに主演していたイ・ドンゴンはお金と権力を持つ法律事務所のオーナー兼弁護士役。穏やかな笑顔の裏に特権意識と差別意識を強く持ち、ある事件をきっかけにアリの口を封じるために全力を尽くす役どころでワルなイケオジぶりを発揮です。
インフルエンサーとは何ぞやを学べ、その闇に切り込み、サスペンスとしても面白く観られる作品なのです。