地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
レイラ
2024/11/25公開
2047年のインドを舞台に描くディストピア
Netflixシリーズ「レイラ」独占配信中
アカデミー賞でも話題を集めた大ヒット映画『RRR』をきっかけに、日本でもインドの映画やドラマに興味を持つ人が増えたのはアジア系エンタメ好きとしては嬉しいかぎり。
インドの作品といえば壮大な歴史ものやど迫力のアクションが人気のなか、新たな世界観を作りだし「凄いものを見せられた」感がたまらないのが『レイラ』です。
本作は、2017年刊行の同名小説をベースに、近未来のインドを描いた初のディストピアドラマ。
舞台は2047年、アリヤヴァルタ国(架空の国)。深刻な環境汚染により、空はどんよりと曇り雨は真っ黒で、国全体が水不足に陥っています。この国では、血統と階級が厳しく分離され、言論の自由はなく、特定の音楽や文学は禁止。罪を犯した人間は、強制収容所に連れて行かれ、奴隷として与えられた仕事をしなければいけません。かたや、特権階級の人間は優雅な生活を送る差別と分断が当たり前の世界です。
Netflixシリーズ「レイラ」独占配信中
架空の国といいながら、階級の分断はインドの多数の国民が信仰するヒンドゥー教のカースト制を、強制収容所は北朝鮮を連想せずにはいられません。
ヒロインのシャリニは、富裕層のコミュニティで夫と娘レイラの3人家族でプールのある豪邸に住み、メイドを雇う生活を送っていました。しかし、ある日突然、夫が異教徒(イスラム教を信仰するムスリム)であるという理由で殺され、娘は連れ去られ、シャリニは「女性福祉センター」(純潔を取り戻すための訓練施設)に入れられます。
そこでは男性指導者グル・マに命じられるまま、「わが血筋はわが運命、この国に生まれ私は幸運です」と唱えさせられ、毎日、薬を飲むことを強制され、‟純度”を高めることに努めます。やがて‟純度”を測るため、ある残酷なテストを受けるのです。しかしシャリニはテストに合格せず、今度は労働収容所に送られることに。その途中、貧民街で暴徒に出くわしたのをきっかけにシャリニは逃げ出し、のちに娘を探すために抵抗勢力に協力することになるのですが……。
はっきり言って『RRR』のような心が躍動するシーンは一切なく、暗く不気味な空気感の連続です。でも、心をとらえて離さない。とりわけ女性に刺さるストーリーなのです。
『レイラ』が描く国では、現在、認められている女性の人権はなく、家父長制が徹底され、異なる宗教間で結婚して生まれた‟混血児”は排除される。時代設定が2047年なので、今から23年後です。
Netflixシリーズ「レイラ」独占配信中
時代に逆行した設定となっていますが、まさかのコロナのパンデミックやロシアとウクライナの戦争などが現実となり、世界が変わっていく状況を見ると、23年後に日本の女性を取り巻く状況が激変しないとは限らないのではないか。そう思えて、ホラーやオカルトドラマよりゾクゾクしながら観てしまいました。
折しも世界経済フォーラム(WEF)が発表した2024年版「ジェンダーギャップ・レポート」の男女平等度ランキングで、日本は156カ国中118位でした。G7のなかでは最下位。韓国(94位)、中国(106位)を下回る状況で129位のインドに近いのが恐ろしい。
本作の最終話はシャリニとグル・マの緊張感が高まる対決という展開で、早く続きを観たい気持を掻き立てますが、インドでは本作をヒンドゥー教批判と感じた視聴者も多く物議を醸し出しました。そのためかシーズン2の進行が遅れているようですが、個人的にはいちばん続編を待ち望む作品です。
Netflixシリーズ「レイラ」独占配信中
今回ご紹介した作品
Netflixシリーズ「レイラ」
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- Netflixにて独占配信中
情報は2024年11月時点のものです。