村上淳子さんのドラマ批評 - 私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版)

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版)

2025/9/22公開

「タイムスリップ×復讐劇」韓国版、日本オリジナル版を比較!

画像:私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版) 1

© Studio Dragon by CJ ENM

 デジタル先進国の韓国では、ここ数年『梨泰院クラス』などウェブ漫画や『社内お見合い』などウェブ小説を原作にしたドラマが数々制作され人気を集めています。

 なかでもウェブ小説が原作のドラマ『私の夫と結婚して』は「2024 Prime Video非英語圏のインターナショナル・オリジナル作品ランキング」においてアジア作品で最高位となる7位を記録の快挙!

 日韓共同プロジェクトとしてドラマ化された日本オリジナル版(以下、日本版)も配信開始後30日間の国内視聴者数で歴代1位を記録しました。

 日本版は日本のクリエイターが日本の感性に合わせて再構成しているのですが、日韓の違いが見事に出ているところがなかなか興味深いのです。

 今回はネタバレを含むので観てからご覧ください。

画像:私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版) 2

© 2025. CJ ENM Japan/ STUDIO DRAGON all rights

 ガンで余命宣告された入院中のヒロインが、外出許可もらって家に帰ると親友と夫の不倫現場を目撃。2人に殺されてしまい、気づいたら10年前に戻っていた…という基本設定はどちらも同じ。

 ヒロインは韓国版では2023年34歳で他界し2013年31歳に戻る。日本版ははっきり年齢を明らかにしていませんが2025年30代後半で他界し2015年20代後半に戻ります。

 韓国版は全16話でスピーディーな展開で復讐劇を軸に描きますが、日本版は全10話と短いなかで復讐プラス日本的な情緒を加えヒロインの幸せの見つけかたを描写します。

 韓国版はヒロインのジウォンをパク・ミニョン、彼女を守る御曹司をナ・イヌ、夫をイ・イギョン、親友をソン・ハユンが演じ、日本版はヒロイン・美紗を小柴風花、御曹司を佐藤健、夫を横山裕、親友を白石聖が演じます。

 ラブコメの女王と称されるパク・ミニョンが復讐劇に打って出て、減量でげっそりした闘病姿から一転、過去に戻り地味な眼鏡女子から華麗な変身で様々なファッションを見せてくれたのは眼福でした。その別人級の変貌はさすが!

 ジウォンは「自分から勝ちに行く戦う女」、美紗は「やむを得ず戦う女」です。

 親友との最後の対決、韓国版では御曹司の反対を押し切ってバトル決戦に挑み胸のすくような勝利。日本版では親友の策略によって対決するハメになるのですが、エモーショナルで衝撃的なラストになっています。

 親友役の描かれ方も、韓国版は圧倒的な性悪で虚言症。日本版は彼女の毒母との過去を詳しく描くことで、憐憫する余地を残しています。セクシーな韓国悪女より、ゆるふわな日本の悪女のほうが憎らしさも怖さも倍増を痛感!

 観る前はミスキャストでは!?と思っていた夫役の横山裕の凄まじいキレ具合とオタオタぶりの落差もよかった。スーパーエイトの明るいキャラを封印し、突き抜けた演技を見せてくれました。

画像:私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版) 3

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 御曹司役ナ・イヌは韓流王道王子で佐藤健はピュアでちょっとこじられせた理系男子というのも日韓の差が出ていて興味深い。これまで『恋は続くよどこまでも』の俺さまツンデレ医師のイメージが強かったのですが、秘めた想いから出てくる繊細に表現したセリフや表情で日本版の王子を作り出していました。

 日韓ともに制作は韓国のCJエンタテインメント、スタジオドラゴンで、日本版の監督は「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」のアン・ギルホです。日本版はストーリーにコロナ禍を組み込み、美紗と亡き父親、御曹司や親友の背景を掘り下げるなど、日本テイストを色濃く出したところに脚本家・大島里美の力量が発揮されました。

 日本と韓国、とりわけその違いを感じたのは、ヒロインが最後に就く仕事。ジウォンは人生をやり直すための財団を作り理事長に就任。美紗は大企業を辞めて父親や御曹司と通ったお気に入りの和菓子屋を再建。自分らしい幸せの形、やりがいをとったのです。

 この違いは小学生に人気の職業体験型テーマパーク「キッザニア」での日韓の違いにも通じるものがあります。日本にはない国家代表選手、難民支援機関スタッフ、国税庁公務員、考古学者の仕事体験が韓国にはあり、日本のようには大工、地下鉄運転士、車両整備員、バスガイドなどは韓国にはない。

 地位と名誉がある職業に就くことが成功で、それを体験をさせるべきという考えが徹底しているそうなのです。

 日本では美紗のような生き方を選び幸せを感じる人も少なくないはず。

 同じアジアのお隣の国ですが、この価値観の違いはなかなか埋められないものかもしれません。

画像:私の夫と結婚して(韓国版・日本オリジナル版) 4

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今回ご紹介した作品

『私の夫と結婚して』(韓国版)
Amazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』(日本版)

配信
Prime Videoにて独占配信中

情報は2025年9月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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