地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
対岸の家事~これが、私の生きる道!~
2025/5/2公開
多部未華子、本作も絶好調!
多部未華子さん。デビュー以来ずっと気になっている女優です。彼女が出演された中で一番好きな作品をテレビドラマ・映画で1本ずつ挙げるとすれば、ドラマは、「これは経費で落ちません!」(2019年)、映画は「あやしい彼女」(2016年)になるでしょうか。
「これは経費で落ちません!」では、石鹸メーカーの経理部に勤務するアラサー独身女子・森若沙名子役を多部さんが演じていました。「何事にもイーブンに生きる」をモットーにしているヒロインは、いささかズルい伝票を出してくる社員たちをしっかり指摘しますが、あくまでも対等な関係に持ち込むのです。その匙加減が絶妙でした。続編を望む声がとても多いドラマです。
「あやしい彼女」は、女手ひとつで娘を育てた73歳の瀬山カツ(倍賞美津子さん)が、写真館で写真を撮ったところ、なぜか20歳の若々しい姿になってしまいます。その20歳のカツ役を演じていたのが多部さんでした。青春を取り戻したカツは名前も節子とし、人生をやり直そうとするのですが、、、というお話です。こちらは韓国映画「怪しい彼女」のリメイク版として公開され、ヒットしました。多部さんは、清潔感にあふれ意思の強い役柄が良く似合います。そして、ここがポイントですが、彼女は「コメディエンヌ」としての資質が抜群だと思うのです。
そんな多部さんが現在出演中のドラマが、「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(TBS系)です。TBSの火曜22時台のドラマはここのところ話題作続きです。女性の生き方をしっかりと描いた名作が目立ちますが、「対岸~」もその例外ではありません。今期のドラマの中でも大いに楽しみに観ている1本です。
原作は朱野帰子さんの小説。朱野さんの作品とこの枠の相性がバッチリです。同じ枠の作品でいえば、吉高由里子さん主演で大いに人気を博した「わたし、定時で帰ります。」(2019年)も朱野さんの原作でした。多部さん自身は、「私の家政夫ナギサさん」(2020年)以来の、TBS火曜22時の登板ということになります。今回も凛々しい多部さんを毎週堪能していますが、さきほども触れた通り、ひとさじのユーモアも冴えまくっています。
村上詩穂(多部さん)は、2歳の娘を育てる専業主婦。彼女が家事と育児に専念しているのには、ちょっとした理由があるのです。居酒屋で働く夫(一ノ瀬ワタルさん)が帰ってくるまでの間、娘と2人きりで過ごす毎日を送っています。ドラマが展開していくのは、そこから。詩穂は、仕事と家事を必死で両立させようと必死で頑張る長野礼子(江口のりこさん)と出会うのです。虚勢を張り、専業主婦の詩穂と自分は違うと、壁を作る礼子でしたが、やがて互いに理解し助け合うママ友になるのです。実は多部さんと江口さんは、「これは経費で落ちません!」で共演しています。それもあってか2人の息はピッタリで、掛け合いの迫力に初回から引き込まれたのでした。
そしてもう一人のキーマンが、厚生労働省に勤務しているエリート官僚・中谷達也(ディーン・フジオカさん)です。妻(島袋寛子さん)が海外で働いていることもあり、達也は2年の育児休暇を取り子育てに奮闘する毎日です。この達也もかなりのくせ者なのですが、徐々に詩穂との絆を深めていくのです。
友達とは言い切れないかもしれませんが、日々の暮らしの中で「ママ友」の関係はとても大切であることが、ドラマを通して見えてきます。そして、「家事はとても重要な仕事」なのだということが、ドラマを通してしっかりメッセージされていくのです。詩穂が周りに手を差し伸べながら時には助けられることで、人間として成長していく姿が温かい視点で描かれている秀作だと思います。物語がどのような着地をするのか、今から楽しみです。
今回ご紹介した作品
対岸の家事~これが、私の生きる道!~
- 放送
- TBS系にて毎週火曜22時~放送中
- 配信
- U-NEXTにて配信中
情報は2025年5月時点のものです。