地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
しあわせな結婚
2025/8/8公開
阿部サダヲ&松たか子劇場を堪能 今期のドラマをけん引!
「しあわせな結婚」(テレビ朝日系)は、放送前から楽しみにしていたドラマでした。ここだけの話ですが(笑)、『ボク担当の連載コラム、次回は「しあわせな結婚」で書きたいです!』と、編集部の方に早くから「予約」させて貰っていました。『今期はこれが一番面白くなるはずです!』と、風呂敷も拡げました。
結果。現在多くの読者のみなさんが頷いてくださるかと思いますが、今期のドラマをけん引する作品になっているかと思います。正直ホッと胸をなでおろしています。このコラムが掲載される頃は物語も中盤でしょうが、おさらいも含めてドラマのイントロをご紹介いたしましょう。
主人公の人気弁護士・原田幸太郎を演じているのが、阿部サダヲさんです。煩わしい人間関係に距離を置き50年間独身を貫いてきましたが、コメンテーターを務めるテレビ番組の収録中に体の異変を感じ、救急搬送されるのです。命の危険を乗り越えた幸太郎は、自らが「孤独」であることを思い知らされます。そんな時、偶然? 病院内で出会った女性が、松たか子さん演じるミステリアスな美術教師・鈴木ネルラです。そこから一気に初回の序盤で結婚まで物語は進んでいきます。普通ならそんなことある? という展開ですが、そこは名手・大石静さんの脚本であり、阿部さんと松さんです。ぐいっと引きこまれていきました。「松&阿部劇場」が見事です。冒頭、「一番面白くなる!」と予想した理由は、何よりも二人の共演によるところが大でした。ちなみに初めて共演されたのは、西川美和監督の映画「夢売るふたり」(2012年公開)。テレビ朝日系では、2020年放送のスペシャルドラマ「スイッチ」が印象深いところ。こちらの脚本は坂元裕二さんでした。
結婚した二人は、ネルラの実家である豪華マンションで新生活を送ることになります。甘い部分もありますが、それに水を差す? ひと癖もふた癖もあるフロア違いの同居人たちがいます。ネルラの父・寛(段田安則さん)、叔父の考(岡部たかしさん)、そして、彼女の弟レオ(板垣李光人さん)です。この3人の個性がそれぞれ強烈で、前述のとおり煩わしい人間関係が嫌いな幸太郎は、彼らとのコミュニケーションに苦労するのですが、阿部さんが絡んだやり取りが醸し出す空気感が最高です。
松さんのチャーミングな演技は本作でも健在で、エキセントリックな寝相を見せたり、クロワッサンを豪快に食べるシーンがあったりと、視聴者をしっかり楽しませてくれます。ですが、そこで笑ってばかりはいられません。彼女には幸太郎の知らない秘密が色々と隠されていたのです。微細なことは控えておきますが、ドラマのキャッチコピーが「マリッジ・サスペンス」となっている通り、ホームドラマにサスペンス要素が加わっているところが、本作の大きなポイントです。その最たるものが、ネルラが15年前に昔の恋人・布勢夕人(玉置玲央さん)を殺しているのではないかという疑惑です。事件の再捜査に乗り出す刑事・黒川竜司(杉野遥亮さん)の登場で、一気に緊迫度が増しました。杉野さん、いい味を出しています。
サスペンスものは、あまりに事前情報が多いと興味が薄れるもの。私の拙い解説はこれくらいにしておきますが、インタビューで「最終的に結婚っていいな、みたいな展開になっていくのですか?」と質問された大石さんは、「そんなに人生は簡単なものではないです」と答えて記者たちを笑わせたとか。私自身、「しあわせな結婚」というタイトルだし、ホームドラマ的要素がしっかりあるし、最後はハッピーエンドなんだろうなと思いかけていたのですが、どうもそんな安直な結末ではなさそうです。監督は元NHKの黒崎博さんはじめ3人の方が務めておられます。黒崎さんは、朝ドラ「ひよっこ」や大河ドラマ「青天を衝け」などのチーフ演出でも知られる実力派。心から楽しめる名作が誕生したと改めて思っています。
今回ご紹介した作品
しあわせな結婚
- 放送
- テレビ朝日系にて毎週木曜21時~放送中
- 配信
- TELASA、Netflixにて配信中
情報は2025年8月時点のものです。