地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
探偵さん、リュック開いてますよ
2026/2/9公開
松田龍平が、父・松田優作をオマージュしたドラマか?
今期大いに気に入っているドラマが、「探偵さん、リュック開いてますよ」(テレビ朝日系)です。タイトルにまず惹かれました。私自身、しばしばリュックのチャックが開いている人間なものですから、自分のことを言われているのかと思ってしまいました(笑)。どこか緊張感なく抜けている様子を「リュック開いてますよ」という表現にしたのでしょうか。まさに私に当てはまります。これが「ズボンのチャック開いてますよ」だと、ニュアンスが異なってきますよね。「リュック開いている」という絶妙表現で、前のめりになったのです。
主演は松田龍平さん。一定以上の世代の読者であればすぐピンとくるかと思いますが、「探偵モノ」と言えば龍平さんの父・松田優作さんでしょう。日本テレビ系で放送されたドラマ「探偵物語」(1979年9月~1979年4月)は当時の若者たちを中心とした視聴者を虜にしました。私立探偵の工藤俊作(松田優作さん)が数々の難事件をユーモアたっぷりに解決に導く姿が最高にカッコよかったですよね。長身の優作さんがイタリア製のスクーター・ベスパに乗って、颯爽と登場する姿や、火力を最大にしてタバコに火をつける姿に惚れ惚れしたのものですが、どこか抜けている様子もとても魅力的でした。
「探偵さん、リュック開いてますよ」の企画段階から参加した松田龍平さんが、「探偵モノ」をやってみたいと仰ったのだと耳にしました。企画・監督・脚本を担当するのは沖田修一さん。こちらも私が大好きなクリエーターで、龍平さんとは何度目かのタッグになります。沖田監督作品で私が一番好きなのが、南極基地で活躍する料理人の姿をユーモラスに描いた、堺雅人さん主演の「南極料理人」です。
今回、龍平さんが演じている役柄は、西ケ谷温泉という小さな温泉街の探偵兼発明家の一ノ瀬洋輔です。洋輔のお父さんは失踪しており、お母さん(原田美枝子さん)は夫を探して?世界中を旅しています。時折、彼女からノー天気なエアメールが自宅に届きます。そんなわけで、洋輔は実家である廃業した温泉宿に一人暮らしをしているのです。彼はかつてアメリカで、「負の感情をエネルギーに変える」という不思議な研究をしており成功を収めたのですが、色々あって日本に帰ってきたのでした。
負の感情をエネルギーに変えて発明したのが、「ドンソク」なる、環境にやさしいサステナブルな乗り物です。悪口をいうことでそれが燃料となり、一定距離走ることができるのです。初回から「ドンソク」を颯爽と乗りこなす龍平さんの姿が長尺で描かれました。これって、「探偵物語」でのベスパの令和版!? と思ったのは私だけでしょうか(笑)。
ドラマは「探偵物語」のような遊び心に満ちていて、「探偵物語」以上の脱力感があります。でありながら、時にほのぼのと感動もさせてくれます。「考察の時代」というワードが流行していますが、エンターテインメントに対しても、視聴者は「正解」を求めたがる時代とも言えるでしょう。そんな中、「謎解き」を超越したようなナンセンスな内容を見せてくれる「探偵さん、リュック開いてますよ」を私は実にカッコいいと思うのです。息苦しい現代社会に風穴を開けてくれているのではないでしょうか。
洋輔を取り巻く人々も、かなりのユニークさです。温泉街の入り口にある商店「フレッシュマート酒井」の看板娘・あおい(高橋かおりさん)は、不器用で口が悪いのですが、実は世話好きでチャーミングな女性ですし、田舎暮らし系動画配信者の南香澄(片山友希さん)は、たどりついた西ケ谷温泉に興味を抱き、洋輔の日常を撮影した「探偵をつけてみた」を配信し、結構人気を博しています。そんな温泉街の人々や洋輔に仕事の依頼をしにやってくる、少しクセある人たちとの交流が温かく描かれた本作は、龍平さんの父・優作さんに対するオマージュではないかと思っています。
今回ご紹介した作品
探偵さん、リュック開いてますよ
- 放送
- テレビ朝日系にて毎週金曜23時15分~放送中
- 配信
- TELASAにて配信中
情報は2026年2月時点のものです。














