地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
時すでにおスシ!?
2026/5/15公開
「ドラマのTBS」を支える火曜ドラマ

©TBS
「ドラマのTBS」復権と言っていいでしょう。ここ数年、民放各局のドラマの中でTBSに秀作が目立ちます。教鞭を執っている大学の教え子たちに聞いても、「TBSのドラマが今一番面白い」という声が多いです。少し前まではフジテレビの作品が一番お気に入りという大学生が多数派を占めていたのものですが、今は比較的そういう声は少なめです。
もちろんNHKは別だと思いますし、このコラムをお読みくださっている読者の皆さんの中にも「なんだかんだ言っても、NHKのドラマが一番見応えがある!」と仰る方が多いはずです。私も正直なところ異論はありません。ただ一般的に大学生たちは、実感としてNHKをあまり見ていません。少し前にNHKの局長クラスの方と、ある受賞パーティの席でお話した際、「朝ドラ、あい変わらず好調ですね!」と水を向けると、「若い人に見てもらえないのが、正直悩みのタネです」と、素直すぎる言葉が返ってきました。
今のTBSドラマの好調を支えているのが、「日曜劇場」と「火曜ドラマ」でしょう。「日曜劇場」の方は、「民放の大河ドラマ」と呼んでもいいほど豪華でダイナミックな作品が目立ちます。7月から放送予定の堺雅人さん主演「VIVANT」の続編は2クール、すなわち半年間放送されることが、過日発表されました。テレビ離れが叫ばれる現在、かなり大胆な編成方針です。言い換えれば同局の自信の表れと言えるかもしれません。
一方「火曜ドラマ」ですが、こちらは「女性の生き方」をテーマに据えた作品が多くを占めています。「日曜劇場」と趣の異なる繊細で柔らかな物語は、女性視聴者を中心に大きな支持を集めています。かつてのTBSでは「金曜ドラマ」がドラマの看板枠とされてきましたが、今はむしろ「火曜ドラマ」の方が元気ですね。
そろそろ本題に入りましょうか。4月7日から放送されている「火曜ドラマ」が、永作博美さん主演の「時すでにおスシ!?」です。私自身、今期のドラマの中で1、2を争うほど気に入っています。ここ十年くらいの「火曜ドラマ」の傾向と比較して、大きく異なる点があるのですが、みなさんお分かりでしょうか? それは主人公の年齢です。永作さんの実年齢は55歳。ドラマでの設定は50歳です。これまでのヒロインの多くは、20代から30代でした。唯一?の例外は、宮藤官九郎さんが脚本を担当した2017年放送の「監獄のお姫さま」で、小泉今日子さんが主演でした。小泉さんが演じた役柄、馬場カヨの設定年齢は51歳、小泉さんの当時の実年齢と同じです。これまでのテレビ業界は、F1層と呼ばれる20歳から34歳の女性をターゲットにした番組を多く作ってきました。「火曜ドラマ」もまさにそうだったのですが、テレビを支える年齢層がこれまでの若年層から中高年層へと移行していることと、今回のことは無縁ではないでしょう。
「時すでにおスシ!?」で永作さんが演じている待山みなとは、14年前に不慮の事故で夫を亡くして以来、女手ひとつでひとり息子を必死に育ててきました。そんな息子は就職が決まって、新幹線の運転士になるため三島に巣立ちます。急に時間の余裕が生まれ、心にぽっかり穴が開いた、みなと。なりゆきから、3か月で鮨職人になれるという「鮨アカデミー」に入学するのです。そこで出会う堅物の講師が、松山ケンイチさん演じる、大江戸海弥です。ドラマの一番の見どころは、永作さんと松山さんのやり取りでしょう。「横綱相撲」と呼ぶにふさわしい演技が必見です。18年ぶりの共演となるおふたりの息はぴったり。硬軟織り交ぜた感情の表出が絶妙です。脇を固める俳優陣も、いい意味でクセのある名優たちが揃っています。生き方に迷っているのは、決して若者だけではありません。おじさんだっておばさんだって、いえ、おじいさん、おばあさんだって、迷いながら毎日を過ごしているのです。
悩みながら、立ち止まりながら少しづつ前に進んでいきませんか? と、私たち見る者の背中を優しく押してくれるいいドラマだと思います。
今回ご紹介した作品
時すでにおスシ!?
- 放送
- TBS系にて毎週火曜22時~放送中
- 配信
- U-NEXTにて配信中
情報は2026年5月時点のものです。














