地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
僕達はまだその星の校則を知らない
2025/9/5公開
学校で起こる問題を法律で解決
『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系、以下『ぼくほし』)は、高校で起こる問題に対して法律に基づいた助言や指導を行うスクールロイヤーが主人公の学園ドラマだ。
舞台となる濱ソラリス高校は、男子校と女子校が併合されて共学となった私立高校だが、男子生徒と女子生徒の間でトラブルが次々と起こっていた。
スクールロイヤーとして派遣される事となった弁護士の白鳥健治(磯村勇斗)は高校に赴任して早々、様々な問題と向き合うことになる。
第1話では、ジェンダーレス制服の導入がきっかけとなり、制服の撤廃を求める生徒が現れる。白鳥は生徒と教師の間で制服の在り方をめぐり模擬裁判をおこなうことを提案する。
第2話では、恋人の女子生徒が別の男子生徒と付き合ったことで失恋した男子生徒が、女子生徒にいじめに遭ったと言って不登校になる。白鳥はいじめ防止対策推進法に基づき、男子生徒を被害者、女子生徒を加害者と呼び、いじめ対策委員会を設置して調査することを訴える。
そして第3話では、女子生徒を背後から盗撮した生物部の男子生徒を性犯罪にあたるとして調査を開始。彼のスマホを没収して盗撮した写真を確認する。
制服のあるべき姿、いじめ、生徒の盗撮といった現代の高校で起こる問題を法律の力で解決していく学園ドラマと言える『ぼくほし』だが、物語は毎回意外な展開を見せる。
例えば第3話では、男子生徒が盗撮していたのは女子生徒ではなく彼女の肩に止まった珍しい種類のテントウムシだったことが判明する。
もちろん、無断で撮影したことは事実なので男子生徒は謝罪するのだが、女子生徒は納得し、二人の関係は良好なものとなる。
どのエピソードも「普通の学園ドラマならこういう展開になるだろう」という視聴者の先入観をうまく逆手にとっており、生徒と教師の物語は予想外の着地をするため、展開が全く読めない。
根幹にあるのは、性善説に根ざした優しさだ。生徒も教師も繊細で優しいからこそ、とても傷つきやすく、だからこそ些細なことですれ違い、様々なトラブルが発生する。
中でも、もっとも繊細で傷つきやすいのが主人公の健治だ。
彼は学生時代にいじめに遭って不登校となったため学校が嫌いで、スクールロイヤーとして高校に通う際にも校門の前で立ち止まってしまう姿が何度も描かれる。鋭い感性を持つが故に周囲に馴染めず弁護士業もうまくこなせずにいた健治だが、そんな彼だからこそ傷つきやすい令和の高校生たちから慕われるようになる。
やがて健治は廃部から復活した天文部の顧問となり、天体観測を通して生徒たちと交流を深めていく。第5話では天文部の生徒たちが健治の家に合宿して夜中の星を観測するシーンが描かれ、生徒たちの静かで叙情的なやりとりが描かれた。その姿は劇中で象徴的に扱われる宮沢賢治の童話的世界そのものでとても感動的だったが、同時に第5話では、学生時代にいじめに遭った健治が同級生、教師、学校を訴えるために証拠を揃えて弁護士事務所を訪ねた過去が語られた。美しく静かな映像で繊細で優しい人々の姿を丁寧に描く本作だが、だからこそ現実世界の残酷さが際立っている。
脚本を担当する大森美香は『ぼくほし』と同クールに孤独死の背景について学んでいく連続ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK)の脚本も担当していた。
リーガルドラマ『カバチタレ!』(フジテレビ系)では法律、恋愛ドラマ『不機嫌なジーン』(同)では動物生物学といった学術的な知識を物語のバックボーンに配置し、専門的な知識を学ぶことによって成長していく人々のドラマを、大森は繰り返し描いてきた。
今回の『ぼくほし』では、法律と天文が大きくフィーチャーされているが、星の世界と法律の世界を通して人間を描く本作は、果たしてどこに着地するのか?
誰もが繊細で優しく振る舞おうとするが故にどこかで生きづらさを感じている令和ならではの学園ドラマである。
今回ご紹介した作品
僕達はまだその星の校則を知らない
- 放送
- カンテレ・フジテレビ系にて毎週月曜22時~放送中
- 配信
- FOD、Netflixにて配信中
情報は2025年9月時点のものです。














