地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ESCAPE それは誘拐のはずだった
2025/12/8公開
人質と誘拐犯の奇妙な逃亡劇を描いたクライム・サスペンス
ベテラン脚本家の話題作から新人脚本家の意欲作まで、傑作ぞろいだった2025年秋クールドラマだが、筆者がもっとも熱中して楽しんだのは『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(以下、『エスケイプ』)だ。
水曜ドラマ(日本テレビ系水曜夜10時枠)で放送された本作は、人質と誘拐犯の奇妙な逃亡劇を描いたクライム・サスペンス。
日本有数の大企業・八神製薬の社長令嬢・八神結以(桜田ひより)は、20歳の誕生パーティーが終わり、ホテルの控室に戻ったところ、何者かに誘拐されてしまう。
誘拐犯は「今日の18時までに3億円用意しろ」と八神製薬を脅迫。だが、結以の足首にはGPSがつけられており、潜伏先の空き家にはセキュリティーガードたちが押し寄せる。
誘拐犯一味の林田大介(佐野勇斗)は、仲間と離れて結以を連れて車で逃亡することになるのだが、実は結似は触った人間の心を読むことができる「さとり」の力の持ち主で、それが原因で父親の慶志(北村一輝)から厳しい監視下に置かれていたことが、やがて明らかとなる。
結以は父から逃げるため、林田は身代金を受け取るため、二人は協力関係を結ぶことになる。
正体を隠すために結以はハチ、林田はリンダとお互いを呼ぶようになり、八神家の元家政婦でハチと仲が良かった城之内晶(原沙知絵)に助けてもらうため、彼女の暮らす宇都宮へと向かう。
逃亡生活の中で、二人は様々な追手に追われることになる。
リンダと過去に因縁があった刑事の小宮山拓(松尾諭)、八神製薬の社長秘書でハチのボディーガード兼お目付け役だった万代詩乃(ファーストサマーウイカ)。二人の情報を動画サイトで配信する従姉妹インフルエンサー。
彼らの追撃をかわしながらハチとリンダは、身を隠すために知人の元に逃げるのだが、潜伏先でもまた、トラブルに巻き込まれてしまう。
ハチとリンダの逃避行は目まぐるしく状況が変わり、危機的状況の連続だ。そのため緊張感のある展開が続き、気が付くとあっという間に一話が終わってしまう。
先が読めないスピード感のある物語はとても現代的で目が離せない。
何より、ハチを演じる桜田ひよりと、リンダを演じる佐野勇斗がとても魅力的で、次々と衣装が変わっていく二人の芝居を見ているだけでも楽しい。
ハチの「さとり」の力の秘密と「27年前に起きた八神製薬の闇」の謎で引っ張る考察系ミステリードラマとして『エスケイプ』は進んでいく。
逃走劇を通して展開されるリアルタイムでのゲーム的な駆け引きが本作の面白さだが、同時に各登場人物の心情描写がとても丁寧で、脚本を担当するひかわかよを筆頭とするドラマの作り手たちが、人間の優しさを信じていることが伝わってくる。
まず、ハチとリンダは、城之内晶に会いに行くのだが、彼女は現在シングルマザーで、生活の苦しさから息子の星(阿部来叶)に対してネグレクト(育児放棄)をおこなっていたことが判明する。二人は星を助けるため誘拐するのだが、最終的に刑事の小宮山に引き渡すことで、星を救おうとする。
また、二人がリンダの元恋人である香坂莉里(影山優佳)の元を訪れ、彼女のマンションに潜伏していた際には、莉里を不倫の恋から解放する。
他にも、逃亡中のリンダが妊婦を助ける場面や、逆に二人の正体を知りながらもハチを治療する医者に二人が助けられる場面も描かれた。
逃亡生活という極限状況だからこそ、ハチとリンダは人としての優しさを忘れないように心がけている。そして、そんな二人を人々は助けようとする。
誘拐を扱ったクライム・サスペンスでありながら、人の優しさが染みるヒューマンドラマに仕上がっているのが『エスケイプ』の魅力である。
今回ご紹介した作品
ESCAPE それは誘拐のはずだった
- 放送
- 日本テレビ系にて毎週水曜22時~放送中
- 配信
- huluにて配信中
情報は2025年12月時点のものです。














