地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
じゃあ、あんたが作ってみろよ
2026/1/9公開
多くの視聴者に愛された2025年秋ドラマで最大の話題作
豊作だった2025年秋クールドラマだが、中でも最大の話題作となったのが『じゃあ、あんたが作ってみろよ』である。
火曜ドラマ(TBS系火曜夜10時枠)で放送された本作は、亭主関白的な価値観を内面化した化石男・海老原勝男(竹内涼真)が、恋人の山岸鮎美(夏帆)にフラれる場面から始まる。
失恋の痛みを抱えた勝男は、鮎美の得意料理だった筑前煮を自分で作ってみようと試みる。だが、なかなか上手く作れず、鮎美が自分のためにどれだけ手間暇をかけて料理を作ってくれていたのかを実感する。
その後、勝男は様々な料理を自分で作るようになる。そして、会社の同僚の白崎ルイ(前原瑞樹)や南川あみな(杏花)、マッチングアプリで知り合った女社長の柏倉椿(中条あやみ)といった人々と料理を通して交流を重ねる中で、古臭い昭和の考えから脱却していく。
本作が大きな注目を集めたのは、勝男が鮎美の作った料理を「全体的におかずが茶色すぎるかな」「もうちょっと彩りを入れた方がいい」とダメ出しする姿があまりに酷かったからだ。だが、勝男が本当の意味で酷かったのは第1話の前半まで。後半ではすでに自分の振る舞いに反省している。
そして、第2話以降も、人がやっていることをバカにするようなことを言っても、その後すぐに反省し、逆にバカにした行為を自分でやってみることで相手の気持ちを理解しようと試みる姿が繰り返し描かれる。
タイトルを見た時は、古い価値観に縛られた勝男の姿を笑う露悪的なドラマかと思われたが、手料理はもちろんのこと、料理をスマホで撮影してSNSに上げることも次第に楽しむようになる。
序盤の化石男っぷりが嘘のように、勝男はみるみる成長していった。その反省して変わっていく姿に多くの視聴者が人間的な魅力を感じたからこそ、本作は多くの視聴者に愛され、秋クールドラマ最大の話題作となったのだろう。
一方、勝男と別れた鮎美は、仲良くなった美容師の吉井渚(サーヤ)のアパートに転がり込み、髪を染めて新しい人生を歩もうとする。そして酒屋の店員・ミナトくん(青木柚)と恋に落ち、同棲するようになる。しかしミナトくんは、女性とすぐに付き合っては別れることを繰り返す大量消費型恋愛体質で、鮎美も結婚を意識した発言をしたことで、別れを切り出されてしまう。
本作は谷口菜津子の同名漫画(ぶんか社)が原作で、メイン脚本家は劇団アンパサンド主宰の安藤奎が担当しているのだが、細部にドラマならではのアレンジがたくさん施されている。
その結果、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を筆頭とする社会性のあるラブコメを輩出してきた火曜ドラマらしいドラマに仕上がった。
そして、原作漫画がまだ連載中のため最終回はオリジナルの展開となった。
紆余曲折の末に再会した勝男と鮎美は、再び恋人としてやり直そうとする。だが自分のお店を出すという夢に邁進する鮎美に自分が関わることは彼女の自立の妨げになると気づいた勝男は、自ら別れを切り出し、最終的に二人は別の道を歩む。
これまでの展開を観ていた視聴者としては納得の結末だったが、それでも二人の別れがショックだったのは、この3か月で勝男と鮎美のことを身近な存在として親しみを感じていたからだろう。
序盤の勝男の描き方こそ不快感を全面に打ち出すトリッキーな観せ方だったが、本作は恋愛ドラマの魅力が詰め込まれた最先端のラブコメだった。だからこそ多くの視聴者に愛される作品となった。
勝男がトレンディドラマ『フォーエバ―ラブは東京で』をバイブルにして繰り返し観ていたように、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』も、恋人との関係に悩む人々に何度も観返されるドラマとなっていくのではないかと思う。
今回ご紹介した作品
じゃあ、あんたが作ってみろよ
- 配信
- U-NEXTにて配信中
情報は2026年1月時点のものです。














