地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ラムネモンキー
2026/4/24公開
中学教師の行方は? 80年代ノスタルジーを刺激するミステリー

©フジテレビ
『ラムネモンキー』(フジテレビ系)は51歳の中年男性3人が、過去と向き合うことで成長していく大人のドラマだ。
大手商社の営業部部長だったが、収賄容疑で逮捕されてグループ会社の倉庫の商品管理部に追いやられたユンこと吉井雄太(反町隆史)。
落ち目の映画監督で最近はヒット作に恵まれず、生活のためにフードデリバリーサービスの配達員として糊口を凌いでいるチェンこと藤巻肇(大森南朋)。
理髪店を営みながら認知症になった母親の介護に追われる日々を送っているキンポ―こと菊原紀介(津田健次郎)。
3人は中学の時に映画研究部で映画を撮っていた親友だったが、51歳になり、それぞれ人生に行き詰っていた。だが、3人が少年時代を過ごした丹辺市の工事現場で白骨遺体が発見されたことを知ったキンポ―が二人に連絡したことで、37年ぶりに再会する。昔話に華を咲かせる3人は映画研究部の顧問だった中学教師のマチルダこと宮下未散(木竜麻生)が行方不明になったことを思い出す。やがて3人は、白骨遺体はマチルダのもので、彼女は何者かに殺されたのではないかと考えるようになる。
本作はユン、チェン、キンポ―の3人が、カフェでアルバイトをしている大学生の西野白馬(福本莉子)と共に、昔の知り合いを訪ね歩き、マチルダを殺した犯人を探す中で、現在の自分の人生を見つめ直していくミステリードラマとなっている。
現在と過去(1988年)を往復しながら物語は進んでいき、劇中では3人が当時好きだった映画、アニメ、漫画のあるあるネタが多数登場する。
現在よりも野蛮だが大らかだった昭和末の日本を彼らが懐かしみ、令和の大学生である西野白馬がジェネレーションギャップを感じる様子は、『不適切にもほどがある!』(TBS系)を筆頭とする近年流行している80年代ノスタルジーを刺激するドラマの一つだと言える。
同時に本作は、時代に対する懐かしさだけでなく、大人が子どもの頃を振り返った時に感じる記憶の不確かさや、無意識の改変も描いていた。
たとえば物語冒頭では、中学時代のユンたちがマチルダと別れる場面が描かれる。3人の記憶を消したマチルダがUFOに乗って去っていくため、マチルダは宇宙人だったというSFドラマになのか? と最初は思ったが、実はこの映像は、大人になった3人が自分たちの都合が良いように無意識に改変した記憶だったことが、次第にわかってくる。
劇中では3人が撮影していたカンフー映画『ラムネモンキー炭酸拳』のイメージショットが繰り返し登場するのだが、話が進むと、それが彼らの中で美化された映画の映像(中学生が撮ったものなので、本物の映像はもっと拙い)とマチルダにまつわる過去の記憶が混濁したものだとわかってくる。そして、都合よく改変した記憶ではない本当の出来事を思い出そうとする中で、3人は残酷な真実を知ることになる。
こういった現実と虚構が入れ子構造になっていく展開を用いた価値観の反転劇は、脚本を担当する古沢良太がもっとも得意とする手法だ。
『リーガルハイ』(フジテレビ系)や『コンフィデンスマンJP』(同)といった連続ドラマでは、虚実の混濁をコメディとして描いていた古沢だが、『ラムネモンキー』では記憶の混濁した過去を描く手法として用いられており、今回はとてもシリアスなドラマとなっている。
80年代の日本や中学時代を懐かしむドラマとして観ても楽しい本作だが、古沢の懐かしさに対する踏み込みは深く、過去を都合よく改変する人間の弱さを炙り出すと同時に、そこから踏み出そうとする人間の強さも同時に描いている。
甘美な思い出の奥にある残酷な真実と向き合うおじさん達の姿が愛おしくなる大人の青春ドラマである。
今回ご紹介した作品
ラムネモンキー
- 配信
- FOD、Netflixなどで配信中
情報は2026年4月時点のものです。














