地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
ガス人間
2026/8/14公開
1960年に劇場公開された特撮映画をリブート

Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中
7月2日、Netflixで『ガス人間』の配信がスタートした。
本作は1960年に劇場公開された特撮映画『ガス人間第一号』を、現代の物語としてリブートした全8話の連続ドラマだ。
ある日、テレビの生放送中に出演する大学教授の体内に謎のガスが侵入して決裂死するという怪事件が発生する。その後、ネット動画で犯行声明をおこなった犯人(UTA)はテレビ記者の独占インタビューで、自分は「ガス人間」だと名乗り、ホワイトセンターの関係者たちを一人一人殺していくと宣言する。身体がガス状に変化して飛び回るガス人間には物理的な攻撃は通用せず、その奇妙な力で次々と殺害を重ねていく。日本中がパニックに陥る中、刑事の岡本賢治(小栗旬)、テレビ局の報道記者・甲野京子(蒼井優)、そして動画配信者の藤川不二太(林遣都)と華歩(広瀬すず)の兄妹は、それぞれの立場からガス人間の行方を追跡する。

Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中
樋口真嗣監督の映画『新幹線大爆破』や是枝裕和監督による連続ドラマ『阿修羅のごとく』など、Netflixは過去に制作された映画やドラマのリブート企画に力を入れている。
これらのリブート企画が面白いのは、作品自体の面白さだけでなく、どの部分を残して、どの部分を変えたのか? という元になった作品に対するアプローチに作品の個性が現れることだろう。
『新幹線大爆破』は時代を現代にして、映画で描かれた事件は過去に起きた出来事として描く続編として作られた。一方『阿修羅のごとく』は、時代はテレビドラマ放送当時のまま、向田邦子の脚本に忠実に作られているが、テレビドラマのトリッキーな演出は採用せず、映画的な端正な映像にすることで、昭和の空気を再現するドラマとなっていた。
対して『ガス人間』は、『ガス人間第一号』の持っていた特撮映画的な想像力を現代に蘇らせた映像となっている。

Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中
何より圧倒されるのが怪獣映画『ゴジラ-1.0』などで知られる白組が担当したVFXで、人体がガス化するガス人間のビジュアルは不気味でありながら、とてもスタイリッシュだ。
そして物語も「現代の東京にガス人間が現れたら?」という観点で、警察、マスコミ、ヤクザ、政治家の動きが描かれており、複雑に入り組んだ物語となっている。
脚本を手掛けたのは、ゾンビ映画『新感染ファイナル・エクスプレス』やNetflixドラマ『地獄が呼んでいる』、『寄生獣-ザ・グレイ-』の監督・脚本を担当したヨン・サンホ。
今回は脚本と製作総指揮だが、異形の怪物が登場して大暴れする荒唐無稽な設定と現実の社会問題を結びつけたストーリーは本作でも健在で、物語の背景には近年の日本が直面している様々な社会問題を想起させる出来事が散りばめられている。
一方、監督の片山慎三は映画『岬の兄妹』やDisney+で配信された連続ドラマ『ガンニバル』の監督として知られている。泥臭い人間描写を片山は得意としているのだが、それは動画配信者の兄妹やヤクザの描写に強く表れている。そして、片山がポン・ジュノの助監督を経験していることもあってか、物語全体に漂う乾いたトーンはノワール系の韓国映画の雰囲気と近く、これは和のテイストが全面に打ち出されていた『ガス人間第一号』との大きな違いだろう。
『ガス人間第一号』には、没落した日本舞踏の春日流家元・藤千代(八千草薫)と、彼女を支援するために銀行強盗で奪った大金を藤千代に渡そうとするガス人間・水野(土屋嘉男)の関係が物語の中心に存在したが、現代の視点で見ると二人の関係はアイドルの「推し活」に近いように感じる。この「推し活」的な人間関係を、どのようにリブートしたのかに注目して観ると『ガス人間』はより一層楽しめるのではないかと思う。

Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中
今回ご紹介した作品
Netflixシリーズ「ガス人間」
- 配信
- Netflixにて世界独占配信中
情報は2026年8月時点のものです。














