現地からリポート!「ウクライナの市民はいま……」写真・文 Kaoru Ng(フォトジャーナリスト)

連日、ロシア軍の攻撃を受けるウクライナの首都キーウで取材を続けるフォトジャーナリストのKaoru Ng(クレ・カオル)さんが、日本のメディアが伝えない現地市民の暮しを伝えます。

2022年3月30日更新


 写真の女性、リュドミラさんは、英国オックスフォード大などでも教授としての経歴を持つ有名なロシア語学者で、日本人の生徒もいたという。精神的にストレスを負っている子どもたちに勉強を教えるために現在もキーウに残っている。チェルノブイリで技術者をしていた夫、そして息子とも数年前に死別し、わずかに残る親戚がポーランドにいるが、ウクライナを離れたくないという。
 手に持っている本は、ウクライナの国民的詩人シェフチェンコの詩集で、なかでも「カタリーナ」がお気に入りの詩だという。
 出身はロシア極東だが、彼女のおばあちゃんの出身地であるウクライナも故郷だと思っている。第二次世界大戦を子どもの頃に経験していて、「まさか自分の人生の中で、もう一度戦争を経験するとは思っていなかった」と語る。
 ロシアのプロパガンダでよく、ロシア語系住民がウクライナで弾圧されていると伝えられるが、彼女は教育者として「それは嘘だ」と断言する。彼女の生徒たちの中には、ウクライナ人もロシア人もどっちもいて、お互い仲良くやっているという。

kaoru ng(クレ・カオル)

1986年、香港生まれ。2019年-2020年の香港民主化デモをきっかけにフォトジャーナリストに。昨年秋にイギリスへ移住し、今年2月18日以降キーウに滞在。現在、身の安全確保のためキーウ市内の宿泊施設や友人宅など5~6ヵ所を転々と滞在しながら取材を続ける。